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303.空賊列島潜入作戦 合流後 3
しおりを挟む「今はこんなもんかな」
まだ、赤島にやってきた当日である。
これから内情を知っていく内に、ほかにやるべきことも見えてくるだろう。
「近い内にまた会議をやろう。それまでに各自、島を見たり情報を集めたりしておいてほしい。――じゃあ、お疲れさん」
ガウィンの解散宣言が出て、皆が動き出した。
「リリー、帰りましょう」
「うん」
雪毒鈴蘭の船員には、最高級の宿扱いでこの屋敷に部屋を用意してもらったが。
オリビエに声を掛けられたニア・リストンは、この島に来てからずっと拠点にしていたという娼館へ帰るという。
娼館。
子供がなんて場所に住んでるんだ、という倫理を問う声もあったが、
「みんなまだ空賊が怖いみたいだから。私がいると安心できるんだって」
当の子供に気遣わしげな発言をされると、もう何も言えなかった。
表向き雪毒鈴蘭は空賊なので、奴隷たちの警戒と不安はまだまだ強い。それはガウィンたちも肌で感じていた。
そして、自分たちを解放した「狂乱のリリー」が彼ら側にいることで、彼らは安心すると。まあわかりやすい話である。
こうなると必然的に侍女のリノキスも同行すると言い出し、聖女フィリアリオも一緒に行きたいと言ったが……さすがにこれは却下された。
一夜明けた翌日。
早朝、昨夜の内にしたためた三通の手紙を持って、ガウィンは屋敷を出た。
と――恐らく外だけではなく内へも目を光らせている門番と、すぐに目が合った。粗末な服を着ていて首輪もしているが、大柄で強そうな大男だ。
「やあ、おはよ」
いつも通り軽いノリで挨拶すると、「……お、お、おは、よ」と、どもりながら大男も応えた。警戒……いや、怯えているのがすぐにわかった。
これまで彼がどんな扱いを受けてきたのか偲ばれる。
「手紙を頼んでいいかい? オリビエさんに渡してほしいんだ」
彼女を経由して、島間移動をして食糧などのやりとりをしている配達人に渡してもらうつもりだ。
「わ、わ、わ、わかった」
「頼むね」
と、ガウィンは屋敷に引き返す。
――本当は、このままゆっくり島を見て回って直接オリビエに渡すつもりだったが、門番の態度からして、島の住人の案内なしで動くのはよくなさそうだと判断した。
お互い下手に刺激し合っても、いいことはないだろう。
反感を買うのも面倒臭いし、関係をこじらせると無用な時間を取りそうだ。
一番の難関だった侵入には、これ以上ないという最高の形で成功した。
ならば、ここで焦る必要はない。
ゆっくり構えることを決めたガウィンは、朝食を作りに来る奴隷を待つことにした。
そして昼頃、案内役の奴隷たちを呼んでから、それぞれ活動を開始する。
聖女フィリアリオと侍女二人、そして聖騎士ライジは、昨日やっていたという奴隷の治療へ向かって行った。
ニア・リストンらと合流するつもりらしい。
リントン・オーロンとウェイバァ・シェンは、訳あり奴隷のリストを手に、頼んだ仕事をしに行く。
まず当人たちと顔合わせをするそうだ。
アンゼル、フレッサは商店を見て回り、ヴァンドルージュから連れてきた軍の整備兵は雪毒鈴蘭として活動した中型船の総整備をする予定だ。
そしてガウィンは、護衛を頼んだガンドルフと共に、島を巡りつつ港へ向かう。
捕まえた空賊どもの様子見と、倉庫に詰めたという「狂乱のリリー」への貢ぎ物の概算を立てるつもりだ。
しばらく奴隷たちの食料費などは、ここから支払われることになっている。
この空賊列島、大きな島は五つある。
「玄関の島」が最大級で、あとは四空王の支配地だ。
だが、それだけではない。
小さいものが多いが、五十以上の浮島が集合している場所なのだ。
つまり、作物に向いた島や牧畜に向いた島、ダンジョンのある島などが多く存在し、これだけの数の空賊や奴隷を生かすだけの食料を生産しているのだ。
中には奴隷島という、妊婦を送り子供を産ませるという闇が満ちていそうな島もあるそうだが――
名前の響きに反して、そう悪いものではないらしい。
簡単に言うと、空賊が存在しない、安全に子供を産める、女性だけの島なんだそうだ。いかな残虐非道な空賊でも、赤子や妊婦に害をなす者は滅多におらず、あるいは害をなすためだけにわざわざ島に行く者もいない。
まあ、ある程度育った子は、ここで奴隷として売られるのだが……
――そんなものは近い内に必ず潰すとして。
「五十以上の浮島の集合体か……全部合わせた土地の面積だけ見れば、小国くらいはありそうですな」
ガンドルフの言葉に、ガウィンは頷く。
「そうだな、思ったより土地面積があるみたいで俺も驚いた。それにこれだけあれば、貴重な資源が手に入る島もありそうだ」
鉱山やら、貴重な薬草が育つ地やら。
浮島は、かつては海上に存在した大地が環境の変化に対応することで変容し、また大地の持つ魔力の影響で安定している。その環境の変容や生物の進化は、どれを取っても同じ物がないという。
だからこそ、数があればあるだけ、お宝島があることも期待できるのだ。
現に食料となる穀物や野菜が育ち、家畜に非常に住みよい環境で、資源にもなる魔獣が発生するダンジョンがある島が確認されているのだ。
これらも考え方次第では宝の島と言える。
「気が早いけど考えちまうなぁ」
制圧後は、これらを四国で分配するのだ。
果たしてどれだけの利益が生まれることか――この現実になるかもしれない幸せな皮算用ができるだけ、ここに来てよかったとガウィンは思う。
まあ、ガウィンが考えることは、四国の代表も考えているとは思うが。
そんな思い思いに過ごした一日目の終わりに、青剣王レイソンと白猫王バンディットから、早くも手紙の返信がやってきた。
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