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359.これからの予定をざっくりと
しおりを挟む「――実は、新しい神殿の御意見番としての再就職が決まったの。その下見がてらアルトワールの開局セレモニーに出席するようにと沙汰があって」
ほう、新しい神殿ができるのか。
アルトワールが魔法映像関連を中心に、宛がわれた島を開発し始めたのと同様に、他の国もそれぞれの特色を生かすように開発に着手している。
その中、聖王国アスターニャは、新しい女神教の神殿が建てられるそうだ。
――公の場にはなかなか出てこない聖女の登場に、兄ニールやレリアレッドは驚いていた。そう、聖女は政治的なイベントに出ることは滅多にないのだ。
面通しがてら紹介だけして、聖女フィリアリオを私が借りているホテルの部屋に招いた。
ちなみにここはリノキスと一緒に使うことになっている。貴族向けの高級ホテル扱いなので、侍女や使用人用の部屋がちゃんとあるのだ。
テーブルに着いて紅茶を飲みつつ、近況報告のようなことをする。侍女として控えるリノキスを聖女は「そういう格好の方が私には新鮮だわ、キャプテン」と笑っていた。
「私はもうすぐ、聖女を引退する予定なの」
ああ、空賊として潜入していた時、そんなこと言ってたなぁ。
「引退の時期が決まったの?」
「ええ。今建設中の神殿ができたら、引退と同時にこちらに移り住むの。端の方の小さな浮島を貰ってのんびり畑仕事でもしながら過ごして、呼ばれたら神殿で意見したり聖女の仕事をしたりする、という予定よ」
へえ。
「結婚相手は見つかった?」
なんか探すとか探さないとか言っていたが。
「青剣王レイソン、覚えている?」
「ええ。さすがに面と向かって自己紹介もしたし、会議の席にも着いたしね」
アスターニャの聖騎士で、ここが空賊列島と呼ばれていた頃、空賊として潜り込んで成り上がった四空王の一人だ。
「あの方も長年の潜入作戦に疲れて、聖騎士を引退したいと言っていてね。あの件で縁があり、ゆっくり話す機会があり、その流れから結婚を申し込まれました」
おお。
「受け入れたの?」
「半分ほどは。私も彼ももういい歳ですし、結婚を前提にお付き合いして少し様子を見てから、ということになっているわ」
穏やかに微笑むフィリアリオを見るに、相性は悪くないのだろう。このまま順調に結婚まで行きそうだな。
――なお、新たな神殿は来年完成予定で、彼女の聖女引退と結婚も同時期になりそうだ、とのことだ。
夕食時になり、もう少し話したかったものの、フィリアリオはアスターニャ国のために用意されたホテルに帰る。
私たちリストン家は、久しぶりに一家揃って両親の部屋でディナーを楽しみ、明日のことを話した。
開局セレモニーは明後日の夕方予定で、昼と夜はパーティーである。
昼のパーティーで各国の要人たちと挨拶する時間を取り、夕方の開局式のテープカットでセレモニー自体は一旦終了。
それから二部となる夜のパーティーである。
この区切りは、私やレリアレッドのような子供もいるからである。
要するに大人組と子供組で別れる分岐点なのだ。
「え? お兄様が?」
余裕を持ってやってきた者はもう島に入っているが、明日到着する予定の来賓が多いそうで、レリアレッドの下見は明日のためである。
撮影班は、王都放送局と、リストン領と、シルヴァー領と、私が追放された後に業界に参入したというフログッス領の四つが参加しており、連携を取りつつ撮影するそうだ。
ちなみにヒルデトーラは予定が立て込んでいて、到着は明日の夜になるとのこと。
更にちなみに、第二王子ヒエロはすでに到着しているが、最後の調整や準備に追われていて挨拶どころではないそうだ。さすが魔法映像の総責任者だ。
そして――撮影となれば私の出番かと思えば、そんなことはなく。
「ああ、私がやる。これまでニアがいなくなった穴は、できる限り私が埋めてきた」
なんと兄ニールは、私がいなくなった後、私の代わりにいろんな撮影に参加してきたそうだ。
初耳……というわけでもないが、よくよく聞けば割と初耳のことが多かった。
夏にヒルデトーラやレリアレッドからちょっと聞いてはいたのだ――兄ニールが映像に参加していると。
私としてはゲスト出演が多いくらいだと思っていたが、意外と結構な頻度で番組に出ていたらしい。
それこそ、私の代わりを努めるように。
「リストン家次期当主として痛感したし、思い知ったよ。これまで妹に押し付けてきたことはこれほど大変なことだったのかと。――すまない。本当に配慮が足りなかった。なんだかんだと逃げてきたが、撮影は私も手伝うべきだった」
「いえ、それはいいわ。いつか言ったけど、私も楽しんでいる節もあったから」
何せ中身は大人だからな。
それも老いた大人だからな。
兄のように遊びたい盛りの子供じゃないんだ、できる限りはこっちでやるさ。
――それよりだ。
「だったら、今ならわかるわね?」
「ん?」
「ベンデリオ様は許さないわよね?」
キッと、いつになく兄の目が鋭く尖った。
「――あたりまえだろ?」
同志よ。
私たちは今、家族以上の絆で結ばれた。
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