『リスタート1980 ― 四十歳OL、昭和で未来を書き換える ―』

momo

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第10話 選択の重み

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 1983年、冬。

 昭和58年。

 街は華やかさを増し、ボーナス商戦の広告が踊っている。

 証券会社のフロアでは、電話が鳴りやまない。

「今のうちに買っとけ! まだ上がる!」

 ベテラン営業の声が響く。

 私は受話器を握りながら、冷静に数字を追う。

 株価指数は確実に上昇基調。

 だが企業の実体成長を超え始めている。

 

 ――泡が厚くなっている。

 

 

 昼休み、私は屋上に出た。

 冷たい風が頬を打つ。

「ここから先は、本当に難しい……」

 

 バブルを完全に抑えれば、日本経済の勢いは弱まる。

 抑えなければ、崩壊が深くなる。

 

 未来は一本道ではない。

 分岐している。

 

 

 その夜、倉庫。

 備蓄契約は二十七社。

 町内会は五地区。

 数字だけ見れば順調。

 

 だが鑑定スキルが淡く光る。

【歴史干渉レベル:高】

 

 私は目を閉じる。

 干渉が強くなるほど、未来の揺らぎも大きくなる。

 

 

 机に広げた資料。

 建設、通信、半導体。

 そして自動車。

 

 私は長期保有銘柄を見直す。

 トヨタ自動車。

 安定的に世界へ広がる。

 

 さらに、エレクトロニクス。

 ソニー。

 革新を続ける企業。

 

 そしてゲーム。

 任天堂。

 いずれ世界を席巻する。

 

 私は深く息を吸う。

「未来の柱は、守る」

 

 

 数日後。

 田辺から連絡。

「地価が想定以上に上がってる」

「売りますか?」

「いや、まだだ。ただ借入は抑えた」

 

 未来では多くが借金を膨らませた。

 それを抑えただけでも、大きな違い。

 

 

 その晩、夢を見る。

 1991年。

 株価暴落。

 だがパニックは、少しだけ小さい。

 街の表情が、わずかに違う。

 

「……効いてる」

 

 

 だが次の瞬間、別の光景。

 失業者の列。

 長引く不況。

 

「緩やかな崩壊は、長い苦しみを生む?」

 

 私は汗をかいて目を覚ます。

 

 

 翌朝、私は新しい計画を立てる。

 “人材育成基金”

 景気後退期に、再教育の場を提供する。

 IT、電子技術、語学。

 

 1983年ではまだ早い。

 だが数年後、必ず必要になる。

 

 

 倉庫の奥。

 アイテムボックスから小さな回復薬を取り出す。

 透明な液体。

 

 鑑定。

【軽度治癒薬:自然治癒促進】

 

「これも使えない……」

 

 医療に革命を起こすには早すぎる。

 私は再び収納する。

 

 

 夕暮れ。

 街のネオンが灯る。

 若者たちはブランドの話をしている。

 

 私は静かに歩く。

 

 四十歳で終わったはずの人生。

 だが今、私は二十三歳。

 

 選択一つで、未来が揺れる。

 

 

 鑑定スキルを発動。

【未来改変進行度:41%】

 

「半分が見えてきた……」

 

 だが、油断はできない。

 

 バブル本番は、まだ先。

 震災も、まだ遠い。

 

 

 私は夜空を見上げる。

 

「私は神じゃない」

 

 でも。

 知っているというだけで、責任はある。

 

 救える未来を、選ぶ責任。

 

 

 昭和58年の冬。

 日本は熱を帯び続ける。

 

 その中心に近づきながら、私は静かに舵を切る。
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