無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン

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手合わせ

 ザーラが先導する形でレオン達が連れて来られたのは、先日も訪れた見覚えのある訓練場であった。

 あの物言いからするとそうだろうなと予想はしていたので驚きはなかったものの、本当にやる気なのかという思いはある。
 だが、訓練場の中央まで歩いてから振り返った顔を見て、レオンは溜息を吐き出した。
 どう見ても本気の顔だったからだ。

「さて、ここまで来りゃさすがに言わなくても分かると思うが、お前らにはこれからオレと戦ってもらう。ま、やっぱこれが一番互いを知るのに手っ取り早いからな」

「それが最も手っ取り早いのは、主に脳筋の者達だけじゃないかと思うんですが……」

「何言ってやがんだ? 騎士になるようなやつらなんて基本脳筋ばっかだろうが。あいつらの戦い方知らねえのか?」

「……あー」

 その言葉に、真に残念ながら納得出来てしまった。

 家を追い出されて以来、レオンは様々な場所を旅していた。
 辺境の小さな村に滞在していたのは結局半年ほどで、その後は訓練を兼ねて色々なところを歩き回ったのである。

 その中で騎士と出会った数は少なくなく、間近で戦闘を目にする機会もあった。
 で、その結果分かったことなのだが、騎士は基本的に戦略も戦術も戦法も使うことはないのだ。

 というか、意味がない。
 魔獣の中には知恵のあるモノも存在してはいるが、結局は巨体で暴れることが基本となるからだ。

 そもそも強大な力を持つ魔獣相手に小細工などは無意味であり、結果は遠距離から高火力の攻撃をぶっ放すのが騎士の基本的な攻撃方法にして全てとなる。
 あくまでも最適を追求したらそうなったというだけなので、一概に脳筋ばかりだとは言えないとは思うが、否定出来ないのもまた事実ではあった。

「ま、何よりもお前らが何が出来て何が出来ねえのか知っとかねえと、これから先の計画が立たねえからな」

「これから先の計画、ですの? 確かクラスごとにやることというのは決まっていたと思うのですけれど……」

「おう、確かに決まってるぜ? ただ、Fクラスのやることってのは、好きにやれってもんだがな」

「……何よそれ。教育放棄ってこと?」

「いや、文字通りの意味だぞ? つーか既存の枠内で収まらねえからFクラス行きになってるわけだろ、お前らは。そんなお前ら相手に事前に何をやるかなんて決められるわけがねえだろうが」

「んー……まあ、確かに? 言ってることは間違ってない気がするかな。まあでも、既存の枠内に収まっていないって言うんなら、そもそも試験に合格させるべきじゃないような気もするけど……もしかして、彼女達の実家が関係してたりします?」

「いんや? それは無関係……って言っちまうと語弊が生じるが、まあ少なくとも試験を合格させたのはまた別の話だ。既存の枠の外にいようが、試験に合格したことに違いはねえんだ。なら合格させない方が道理に合わねえってもんだろ? ま、Fクラスになったってのには正直関係あるんだが。お前も含めて、な」

 その言葉に肩をすくめたのは、まあ当然調べられているだろうなと思ったからだ。
 公的に存在が抹消されているとはいっても調べる方法がないわけではなく、何よりもこの学院の母体は国そのものである。
 調べられないわけがなかった。

 とはいえ、だからどうだというわけでもないようで、ザーラはそのまま話を続けた。

「ま、つーわけで、これからのことをスムーズにやるためにもまずはやりあうのが一番なんだが……どうすっかな。……いや、どうせならお前らに選ばせてやるか。全員でオレと戦うか、それとも一人ずつか。どっちがいい?」

 そう言って挑発するような笑みを浮かべたザーラに、思わずレオン達は顔を見合わせた。
 ただの挑発というわけではなく、実際ザーラはそこまでの大言を口にするだけの資格を持ち合わせているからである。

 少なくともレオンはそう確信を持っているのだが、この様子ではどうやら二人もそうであるようだ。
 まあ、当然と言えば当然か。

 燃える炎のような髪に瞳、身の丈を超えるほどの大剣、何よりもザーラという名前。
 ここまでくれば連想される人物など一人しかいまい。

 ――ザーラ・オーフェルヴェーク。
 元王立騎士団第一大隊隊長。

 かつて最強の騎士と呼ばれていた女性である。
 王立学院で講師をやることになった、という噂は聞いていたが、どうやら本当だったらしい。

 ともあれ、この女性はそんな相手だということだ。
 ならば、返答など決まっていた。

「そうですね……じゃあ、一人ずつで」

「……へえ? いいのか? まさか、オレが誰なのか分かってねえってわけじゃねえんだろ? あっという間に終わっちまうぜ?」

 そう言いつつも、ザーラはどことなく楽しげであった。

 そしてレオンが勝手に答えてしまった形ではあるも、リーゼロッテ達から批難の言葉はない。
 むしろ、当然だと言わんばかりにザーラへと視線を向けていた。

「いえ、むしろだからこそですよ? だって――三人でやったら、あっという間に僕達が勝っちゃうじゃないですか。それじゃ互いのことがよく分からないままでしょうし、今後に差し障りもあるでしょうからね」

 ゆえにレオンもそう続け――ザーラが歯を剥いた。

「はっ――いい挑発だ。……って言いてえとこだが、お前は本気で読めねえからな……」

 目を細め見つめてくるザーラに、肩をすくめて返す。
 一応本気でもあったからだ。

 まあさすがにあっという間という部分は挑発ではあるが、勝つという部分で本気であり、そのつもりである。
 相手は元最強の騎士であるが、関係はない。
 いや……だからこそ余計にだ。

 レオンは最強を目指しているのである。
 既に最強ではなくなった相手になど、負けてはいられまい。

「ま、いいさ。とりあえずそういうことなら、胸貸してやるよ。そうだな……じゃあまずはお前からいっとくか」

 そう言ってザーラが視線で指名したのは、エミーリアであった。
 最初にエミーリアを選んだことに意味があったのかは分からないが……少なくともエミーリアは意味があると捉えたようだ。

「まずわたくしということは……つまりわたくし相手ならば万が一にも負けることはない、ということですの?」

「さて、どうだろうな? それはお前が一番よく分かってんじゃねえか?」

「……ええ、確かにその通りですわ。お二人のことを確かめることが出来なくなってしまうのではと懸念いたしましたが、どうやら必要なさそうですわね」

「でかい口を利くのは結構だがな。後で頭を抱えることになるのはお前だぜ?」

 そんな言葉と共に、二人の間に火花が散る。
 どうやら二人ともやる気は十分なようだと、レオンはリーゼロッテ共々下がることにした。

 念のため端にまで下がり……それを待っていたわけでもないだろうに、ザーラとエミーリアが中央で向かい合う。

「じゃ、始めっか。ああ、そうそう、武器使うんなら使っても構わねえぞ? つーかオレも使うしな」

 言葉と同時、ザーラの右手が背中に回される。
 頭の位置よりも上にある柄を掴み――と、その直後、金属同士がぶつかったかの如き、甲高い音が響いた。

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