老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪

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第282話 双子、王都で可愛がられる①

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「あーう♪」
「あーい♪」
「わほぉん……」

 羊に乗ったり、毛をふかふかしたりしてのんびり過ごす。ジェニファーやひよこ達も庭より広い場所なので思いっきり走り回っていた。
 そしてダルはあくびをする。

「めぇ~」
「こいつもそろそろ毛刈りの時期かな」
「あーい?」
「また、あっちの子みたいにつるつるになるみたいよ」
「あい……」

 リヒトとライルが乗っている羊を見て、牧場の旦那さんがそう口にする。リヒトが首を傾げていると、トワイトが先日、毛を刈られた羊を指さしていた。
 リヒトは理解したようで寝そべって毛をふかふかしていた。

「あーう」

 ライルも真似をして二人で毛に埋もれていた。するとそのままライルは目を閉じて寝息を立てる。

「あーい」
「すぴー……」
「あら、寝ちゃったわね」
「まあ寝かしておいてやろう。せっかくじゃしこのまま王都へ行ってモルゲンロート殿に紹介するか」
「陛下に……すげえなあ……っと、こいつはミルクだ。毎度あり」
「いつも助かります♪」
「では行くかのう」
「あーい♪」
「こけー!」
「ぴよー」

 リヒトは羊を堪能し、ライルにも紹介できて満足だったようだ。手を叩いてジェニファー達を呼びよせていた。
 ジェニファーは土偶と埴輪が入っているカバンに入り、ひよこ達はリヒトの胸ポケットに収まる。

「あーい」
「ん? ライルにもポケットつけて欲しいの?」
「あい♪」

 ひよこもシェアできるようにして欲しいとトワイトに頼んでいた。
 そんなご機嫌な様子でライルの背中を撫でるリヒトをディランが抱っこし、ライルをトワイトが抱えた。
 そのまま出口へ行き、ディランがリヒトをダルに預けるとドラゴンに変身する。

「おー! すげえ!」
「ドラゴンだ!」

 そこでいつもの村の子供たちが集まって来た。幸いこの周辺に魔物が近づいてこないので、村から出てすぐくらいの場所は安全だったりする。
 そんな子供たちにディランが声をかけた。

「危ないから下がっておるのじゃ。また来るわい」
「はーい! またねー!」
「リヒト君ともうひとりもまた遊ぼうねー!」
「あーい!」

 子供たちはリヒトと眠っているライルに手を振り、リヒトも振り返していた。
 途中、リヒトはライルの手をもって一緒に振る。

「ではサッと行くぞい」
「お願いします」

 音もなく上空へ行き、低空飛行のまま王都へと向かった。言葉通りサッと移動し、あっという間に王都近くのデランザ発着場へとやってきた。

「あー、ディランさん!」
「竜神様!」
「あら、フレイヤちゃんにエメリちゃんだわ」
「すまんが降りるぞい」
「オーライ!!」

 デランザ商隊の二人がそこにおり、声をかけてくれた。案内されながらディランが降り立つと、二人が駆け寄ってきた。

「こんにちは!」
「なにやら大変なことがあったとバーリオさんから聞きましたよ」
「大変だったけど良かったことも多かったわよ」

 挨拶をするフレイヤの横でエメリが話を聞いたと尋ねていた。トワイトがいいこともあったと口にすると、リヒトが二人に声をかけた。

「あーい♪」
「リヒト君こんにちは! ってよく見たらもう一人リヒト君が居る!?」
「あ、本当だ!? ……でも髪の色が違いぞフレイヤ」
「確かに」

 ライルを見て驚くフレイヤにエメリが冷静に指摘していた。トワイトはほほ笑みながら抱っこしているライルを見ながら言う。

「この子はライルというのよ。リヒトの双子の弟なの。バーリオさんが言っていた大変なことはこの子とリヒトについてだったわ。解決したけどね」
「はー……本物の兄弟なのですね」
「あーい」
「すぴー……」
「あはは、良く寝ている。可愛い~」

 エメリがまじまじと見ているとリヒトが手を上げて声を出す。ライルは騒がしい中でも眠ったままである。

『……!』
『……!』
「わ!? これはなんですか竜神様……?」
「ぴよー!」

 そこでカバンから飛び出した土偶と埴輪が頭を下げていた。エメリがびっくりしているところでディランが説明をする。

「この二つに双子の両親の魂が入っておってな。一緒に暮らしておるのじゃ」
「ええー!? そ、そんなことが分かるんですか?」
「そういうドラゴンがおるのじゃ。まあ、一緒に行動するから見かけたらよろしく頼むわい」
「承知しました! ふむ、よく見ると可愛い顔。よろしくお願いします」
「よろしくね!」

 エメリとフレイヤは説明を聞いて特に気にした風もなくしゃがんでソルとエレノアの小さな手を摘まんで握手していた。

「ライル君を抱っこしてもいいですか……?」
「いいわよ♪ 起きないと思うわ」
「では私はリヒト様を……」
「あーい」

 それぞれ抱っこしてもらい、目線が同じになるリヒトとライル。
 フレイヤはリヒトそっくりのライルを見てほほ笑んでいた。

「うわあ、双子って可愛いですねえ。同じ顔って凄い」
「銀髪も映えますね。リヒト様の金髪と対になっているようでかっこいいですよ」
「あい♪」
「すぴー……」
「これから陛下のところへ?」
「うむ。住人が増えたことを伝えようと思ってのう」
「あ、じゃあ一緒に行きます~! そういえばユリちゃんやザミールさんを最近見かけないんですよ」
「ああ、それはライルの件とも関係があるの。歩きながら話しましょうか」

 そうしてフレイヤとエメリと一緒に城へ行くことになった。
 ちなみにデランザは非番らしく、最近作ってもらったお昼寝用の家屋で寝ているとのことである。

「後で会いに行きましょうね」
「あい!」
「うぉふ!」

 また髭で遊びたいとリヒトは拳を握るのだった。
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