老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪

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第304話 双子、誕生日を迎える⑤

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「ふう……無理をさせたね」
「間にあったか」
「ああ、ディランさん! なんとか帰れました!」

 すっかり見慣れたザミールの連れている馬が珍しく鼻水を流して息を切らせていた。
 そんな馬の首を優しく撫でながら、ザミールはゆっくりと水を飲ませていた。
 ディランも労ってやると、馬は嬉しそうに鼻を鳴らした。

「あーい♪」
「あーう♪」
『……!』
『……!』

 そんな中、ソルとエレノアは息子たちのところへ駆けつけていた。リヒトとライルはひょいと持ち上げて満面の笑みで迎える。

『……!』
『……!』

 そして両親はシエラとユリウスにぺこりと挨拶をする。

「え、動く人形……?」
「だーう……ふあああ……」
「あ、ユリウスにはちょっと怖かったみたいね」
『……!?』

 やはり埴輪も土偶も表情が変わらないのでじっと見ていると怖いようだ。
 両親だからかすぐ慣れたライルと違い、ユリウスはぐずり始めた。
 それを見てソルとエレノアが慌ててリヒトの足をぺちぺちと叩く。

「あい」
「だうー……」
「あうー」

 するとリヒトはユリウスの頭を撫でた後、お気に入りのカバンからでんでん太鼓を取り出した。ライルも伸びる笛を取り出して口に咥えた。
 そしてポコポコと音を鳴らし、ぴゅーっと笛を伸ばすなどして気を引いていた。

「だうー♪」
「あー♪」

 すぐにユリウスは笑顔になりお座りをしたまま手を叩いていた。そこで風車を取り出し、ユリウスに貸した。

「だーうー♪」
「ぴよー♪」
「こけー♪」
「まあ、良かったわねユリウス。ありがとうリヒト君」
『……♪』

 ソルは額を腕でぬぐいながら安堵をしたという動きをする。またユリウスがぐずるといけないと、ソルとエレノアはダル達の下へ行く。

「わほぉん」
「わん」
「うぉふ」
『……!』

 二人はダル達の前足とハイタッチをした後、ダルのお腹を背にしてくつろぐ。
 ディランがひとまず大丈夫かと安堵していると、ザミールが声をかけてきた。

「リヒト君はお兄ちゃんをしていますねえ」
「無意識じゃろうが、なかなかやりおるわい。ライルの面倒もよく見ておってな、おむつの交換の時には呼びにくるのじゃ」
「一歳になったばかりなのによく歩きますもんね。っと、すみません馬と荷台はこのまま置かせてもらっていいですか? 汗臭いので着替えてきます!」
「ああ、見ておくわい。というかどこへ行って来たんじゃ?」

 ひとまず着替えてくるとザミールが口にすると、ディランはその前にどこへ行ってきたのかを尋ねた。

「よくぞ聞いてくれました……! まずテンパール国で東の国のお土産を買いに行きました。まあここは慣れたものです。あと、サリエルド帝国には鉱山がありましてね。私の両親がそこで宝石を手に入れて誕生石を加工してあげればいいと提案をもらいました」
「顔が近いぞい。そうか、色々と手を尽くしてくれたのじゃな」
「ええ。私とソルは鉱山に出た魔物をブレイドドラゴンの爪を加工して作ったサーベルとソードを使って牽制し、エレノアさんの魔法で倒すというようなこともありましたね」

 すると興奮気味にディランへ詰めながら冒険譚を語ってくれた。元々、ザミール自体は剣技を教え込まれている。
 今までも護衛を殆どつけないで行商に出ていた理由に納得をする。
 
「ちなみになにを持ってきたのじゃ?」
「そうですね……ディランさんにならいいかな。これです」
「ふむ、ルビーか」
「ええ。ソル、こっちへ来てくれるかい?」
「あーう?」

 プレゼントの一つならとザミールはソルを呼ぶ。トコトコと器用に飛び跳ねながら移動していく。リヒトは興味深げに追うのだった。

「すまない、取り出させてもらうよ」
『!』

 ザミールが埴輪ソルを手に取り、下から手を入れる。その中から赤く輝く宝石のついたブローチのようなものが二つ出てきた。

「これは見事じゃ」
「知り合いの職人へ急に頼んだんですがいい仕上がりです。二人の誕生石なのですが、不死身の象徴、お守りとしての役割を果たすという、言い伝えがあります」
「不死身はともかく、お守りにはいいのう。後で母さんにつけてもらおう」
「あーい♪」
『……♪』

 ついてきていたリヒトがソルを掴んで掲げていた。赤ん坊には宝石よりも動く人形かと、ディランとザミールが苦笑する。

「お、ザミールじゃねえか! 帰って来たのか」
「おや、ゼクウさん! ただいま戻りました」

 そこへ職人のゼクウが弟子になにかを運んでもらいながらやってきた。軽く挨拶を交わすとゼクウは笑いながら頷く。

「そうか。そりゃあ坊主の誕生日ならそうだろうな。ディランよ、こいつはワシらからじゃ、受け取ってくれい」
「む、ありがたい。席は――」
「ああ、いい、いい。こういうのは苦手だからな。プレゼントだけさせてくれや。坊主、後で見せてもらえよ」
「あい!」
『……』
「あ、なんでいこいつは? 動くのか?」
「リヒトの本当の親父じゃ」
「……? よくわからねえが……まあいい、また店に来てくれ! ザミールも顔をだせよ」
「ええ!」

 ゼクウはそういってディランに大きな荷物を渡すと、弟子たちと一緒に立ち去って行った。

「せっかく来てくれたのにのう」
「あの人はこういう派手なのは苦手ですからね。後でお祝いのケーキでも持って行ってあげたら喜びますよ。おっと、それじゃ私もそろそろ着替えに……」
「うむ」
「あーい」

 ザミールはポンと手を叩いてから着替えを思い出し、移動をする。いつの間にかディランの足の裾を掴んで立っていたリヒトも手を振って見送る。

「あーう……あうー」
「あら、ライル君がぐずっているわ」
「おや、珍しいのう」
「あい……!」

 ユリウスに構っていたライルがぐずりだしたとシエラが頭を撫でながら言う。
 するとリヒトがすぐに戻り、ライルの手を握っていた。

「あい」
「あうー♪」

 するとすぐに笑顔になっていた。

「お兄ちゃんの姿が急に消えたから不安になったのね」
「ライルは甘えん坊かもしれんのう」
「このくらいのころだと甘えてくれる方が嬉しいですけどね」
「だーう♪」

 双子を見てお座りをして風車を振り回しているユリウスも、同意するかのように声を上げていた。

「それにしてもかなり来ていますね」
「ウチの息子夫婦も来るはずじゃが、遅いのう。あとはブルグ達も来るかと思ったが、ロクローと来なかったし、今回はナシか」
「お知り合いが多いですね」
「この国へ来てまだ八か月くらいなんじゃがのう」
「それくらい、色々なことをされているのですね」

 シエラが会場を見てたくさんの人がいることに驚いていた。さらにハバラ達も参加する予定である。
 ブラッドリーベアのブルグとギンタはギルファと一緒に来ると思っていたが、今回は来ないのかと残念がっていた。

「あ、ギンタ達は遅れてくるって言ってたよ! プレゼントをとりに行くって」
「そうなのか」

 そこでデランザのところにいたギルファが走ってきてそんなことを言う。聞こえていたのかと驚いたが思い出したからたまたまかもしれないと肩を竦める。

「そろそろ母さんも戻ってくるはずじゃが」
『……!』
「アー」

 そう呟いていると、少し遠目に青いドラゴンが降りてくるのが見えた。

「お、ハバラじゃ」
「うぉふ!」
「あー♪」
「あーい♪」
「だうー!」

 しばらく待っていると――

「きゃーう♪」
「あーい♪」
「あうー♪」
「だー♪」
「賑やかになったのう」
「赤ちゃんが増えている……!?」

 リコットが来てリヒトに抱き着いていた。ライルやユリウスも歓迎し、ペット達と共に賑やかになっていた。
 ハバラはなんとも多い赤ちゃんたちを見て驚くのだった。

「あら、ハバラも着いたのね?」
「母さん」
「終わったか」
「ええ! 美味しいお鍋とお料理ができましたよ♪」
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