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第308話 双子、誕生日を迎える⑨
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「いいものが見れたなあ……誕生日おめでとうだ!」
「リヒト君、ディランさん達と常に一緒に居るから見る機会が多いもんね」
「もー、リヒト君が可愛いですわ♪」
「また喋るじゃろうか」
「すぐ話すようになるな」
「やっぱ父ちゃん呼びなんだ」
『……♪』
リヒトが喋ったことでガルフやレイカ、ユリが満面の笑みでテーブルに来ていた。
特に付き合いの長いメンツであるモルゲンロートも、少し浮かれているディランを見て言う。
「あーい?」
「あうー♪」
「あい♪」
「はいはい、あーん♪」
「あー♪」
「あー! あたしがやるー!」
囲まれたリヒトはよく分からない様子でみんなを見上げていた。しかしすぐにライルがすりおろしネクターリンと桃を食べようと示唆して来た。
トワイトがスプーンで口に運ぶと、トーニャは自分がやると拳を振っていた。
「じゃあライルは私があげるわね」
「あーう♪」
「お二人とも本当にいい子で……うう……」
『……♪』
ならばとトワイトはライルの口にすりおろしを運ぶ。その様子を見ていたロザがハンカチを手に嬉し涙を流していた。
彼女を労うかのようにエレノアが肩に乗って頬を軽く叩く。
「お義母さん、リヒト君とライル君のお誕生日おめでとうございます」
「きゃーい!」
「やっと言えますね。おめでとうございます!」
「だうー♪」
そこへリコットと手を繋いだソレイユとユリウスを抱っこしたシエラもやってきた。誕生日を祝う言葉を言うと、赤ちゃん達が声をあげる。
「あい♪」
「ありがとう皆さん♪ それじゃコック長さん、次の料理を!」
「かしこまりました!」
「その間にお着替えをしましょうね♪」
「あーい♪」
「お着替え、ですか?」
そろそろすき焼きが減って来たところを確認したので次の料理を出すようにオーダーを出す。
その間にお手製のパジャマに着替えさせるとトワイトが笑う。シエラが首を傾げていると、そういえばとトワイトが顎に手を当てる。
「リコットちゃんの分は作っているけど、ユリウス君のは忘れていたわ。素材はあるし、さっと作ろうかしら。ソレイユさん、シエラさんこっちへ!」
「え、ええ?」
「ふふ、行きましょう」
「リヒト、ライル、行ってくるのじゃ」
「あーう!」
「あーい!」
「うぉふ!」
「こけー!」
事情をしるソレイユは笑顔でついていき、挨拶だけしにきたシエラはよくわからないまま連れられていった。
ペット達は食事をしながらそれを見送っていた。
「お前達も大きくならないとな」
「そういえばヤクトはあまり大きくなってないね」
「確かに。こやつらはワシらの魔力にあてられて成長が遅くなっておるかもしれんのう」
「わほぉん……♪」
「ダルは桃が好きだねえ……」
ひとまず主役が居なくなったのでディランが相手をする。とはいえペット達も愛想がいいので挨拶に来た者達も退屈はしない。
ユリが困った顔で笑いながら桃を大事に食べるダルを撫でていた。
「プレゼントもかなりもらえたのう」
「ロクローか。うむ、ありがたいことじゃ」
「ギルファの誕生会もしようかしら? やっぱりお祝いはたくさんの人とした方がいいわ。そういえばケーキはないんですか?」
「カーラも来てくれて感謝するぞい。ケーキは最後じゃ。二人は食べられないから皆だけに食べてもらおうと大きなのを作ったらしい」
そこへロクローとカーラがやってきた。ロクローはテーブルの後ろに置いているプレゼントの山を見て頷く。
カーラはケーキが無いようだと首を傾げていた。
「ではワシらロイヤード国からのプレゼントじゃ」
「お、持ってきておったか。ありがとうな」
「お父さんが張り切っていたんですよ」
「後で開けさせてもらうわい」
そんな話をして時間を過ごす。
周囲をディランが見ると、モルゲンロートやローザがフラウやコウと話していたり、オルドライデとアトレオン、そしてヴァールの王子達が歓談していたりなど面白い状況があった。
「結局、お前は家に戻らないのか?」
「この国で商人として腰を落ち着けたからねえ。ディランさんとは贔屓にしてもらっているし、この剣もブレイズドラゴンさんの牙から作ったのさ」
「いいな……それ」
そんな中、孤立していたダニーとキーラへザミールが話しかけていた。
キーラはすき焼きをガツガツと食べながらザミールにサリエルド帝国へ戻らないのかといった話をしていた。
商人だとあちこちに行けるし、クリニヒト王国の商人としてやっていくつもりだと口にする。
良かったことの一例としてブレイズドラゴンの剣を見せていた。キーラも男なのでいい剣を見ると素直に褒める。
「う、ううむ……ライバルの息子しか知り合いが居ないのもどうなのだ……」
「そんなことを気にしていていたのですか?」
「なんせ王族があれだけ居るのだぞ!? アトレオン様もいるし……プレゼントだけ渡して帰るつもりだったからな……」
「そんなことだから器が小さいと言われるんですよ。ドルコント国のお話は聞きましたか?」
そこでダニーが居心地悪そうにお酒を飲んでいた。位は高い上にドラゴンといった強者も居るので小さくなっていた。
そこで悪いとは思いつつもザミールはユリウス君関連の話をした。
「ええー……極悪人じゃないか……」
「いや、でも一歩間違えたら私達も同じ、か……」
「ソルとエレノアさんが許してくれたこと、もっと感謝すべきだと思いますよ」
「あ、ああ……」
一連の事件は似ているなと思いつつ、その所業に恐怖していた。エレノアが亡くなったことに直接手を下していないが、有り得た未来だとも。
「きゃー! 可愛い! みなさん来て来て!」
「おや、お着替えが終わったのかな?」
そこでトーニャが大きな声を上げたのが聞こえて来た。ザミールが顔を上げると、テーブルの上に四人の赤ちゃんが乗っていた。
「あーい?」
「あうー!」
「きゃい♪」
「だー♪」
リヒトはディランを模した金色……ではなく、黄色の素材を使い、変身したディランのようなドラゴンの着ぐるみだった。
被り物をするとミニドラゴンのようになり、それを首の後ろに回すと枕になる。
「お父さんの髭と薄くなめした鱗と布で作っているから防御力も高いのよ♪」
「それはパジャマ……? ライル君は緑色なんだ」
「私の素材を使っているのよギルファ君」
ギルファがリヒトのパジャマに触ってみると、ふかふかしているものの表面の布は適当なナイフなんかは通さないだろうというのが子供でもわかるレベルだった。
そしてリコットもハバラと自身の髪の色を模した青い三つ首ドラゴンのパジャマを着てご満悦だった。
リヒトにべったりとくっついてもこもこしていた。ライルも真似をしてリコットとは逆サイドでくっつく。
「うう……可愛い……」
「ロザさん、飲みすぎでは? でも本当に可愛い」
「で、即興で作ったから申し訳ないんですけど、ユリウス君も用意しました!」
「だーう♪」
「ドラゴンじゃないけど羊さんのパジャマを作ってもらいました♪」
ロザがさらに涙を流して、レイカが心配していた。
そしてトワイトとシエラが羊ユリウスを紹介すると、ローザが唸る。
「うーん、優しい雰囲気が可愛いですわ。もこもこしていますわね……!」
「いやあ、むさくるしい男達より赤ちゃんよね」
「なんだとシス!」
【ええい、酒が飛び散る、落ち着け】
「このギュウスジ煮込みとやら、美味すぎる……」
「あ、こら俺の分まで食うじゃねえよバルド!?」
「あーい♪」
「あーう♪」
シスもこちらに駆け付けて目を細めていた。
何故みなに囲まれているのかよく分かっていないが、双子は同じ赤ちゃんと一緒に居れて可愛がってくれることをとても喜ぶのであった。
そして誕生会は時間が過ぎていく――
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「あーい?」
「あうー♪」
「あい♪」
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「あーう♪」
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『……♪』
ならばとトワイトはライルの口にすりおろしを運ぶ。その様子を見ていたロザがハンカチを手に嬉し涙を流していた。
彼女を労うかのようにエレノアが肩に乗って頬を軽く叩く。
「お義母さん、リヒト君とライル君のお誕生日おめでとうございます」
「きゃーい!」
「やっと言えますね。おめでとうございます!」
「だうー♪」
そこへリコットと手を繋いだソレイユとユリウスを抱っこしたシエラもやってきた。誕生日を祝う言葉を言うと、赤ちゃん達が声をあげる。
「あい♪」
「ありがとう皆さん♪ それじゃコック長さん、次の料理を!」
「かしこまりました!」
「その間にお着替えをしましょうね♪」
「あーい♪」
「お着替え、ですか?」
そろそろすき焼きが減って来たところを確認したので次の料理を出すようにオーダーを出す。
その間にお手製のパジャマに着替えさせるとトワイトが笑う。シエラが首を傾げていると、そういえばとトワイトが顎に手を当てる。
「リコットちゃんの分は作っているけど、ユリウス君のは忘れていたわ。素材はあるし、さっと作ろうかしら。ソレイユさん、シエラさんこっちへ!」
「え、ええ?」
「ふふ、行きましょう」
「リヒト、ライル、行ってくるのじゃ」
「あーう!」
「あーい!」
「うぉふ!」
「こけー!」
事情をしるソレイユは笑顔でついていき、挨拶だけしにきたシエラはよくわからないまま連れられていった。
ペット達は食事をしながらそれを見送っていた。
「お前達も大きくならないとな」
「そういえばヤクトはあまり大きくなってないね」
「確かに。こやつらはワシらの魔力にあてられて成長が遅くなっておるかもしれんのう」
「わほぉん……♪」
「ダルは桃が好きだねえ……」
ひとまず主役が居なくなったのでディランが相手をする。とはいえペット達も愛想がいいので挨拶に来た者達も退屈はしない。
ユリが困った顔で笑いながら桃を大事に食べるダルを撫でていた。
「プレゼントもかなりもらえたのう」
「ロクローか。うむ、ありがたいことじゃ」
「ギルファの誕生会もしようかしら? やっぱりお祝いはたくさんの人とした方がいいわ。そういえばケーキはないんですか?」
「カーラも来てくれて感謝するぞい。ケーキは最後じゃ。二人は食べられないから皆だけに食べてもらおうと大きなのを作ったらしい」
そこへロクローとカーラがやってきた。ロクローはテーブルの後ろに置いているプレゼントの山を見て頷く。
カーラはケーキが無いようだと首を傾げていた。
「ではワシらロイヤード国からのプレゼントじゃ」
「お、持ってきておったか。ありがとうな」
「お父さんが張り切っていたんですよ」
「後で開けさせてもらうわい」
そんな話をして時間を過ごす。
周囲をディランが見ると、モルゲンロートやローザがフラウやコウと話していたり、オルドライデとアトレオン、そしてヴァールの王子達が歓談していたりなど面白い状況があった。
「結局、お前は家に戻らないのか?」
「この国で商人として腰を落ち着けたからねえ。ディランさんとは贔屓にしてもらっているし、この剣もブレイズドラゴンさんの牙から作ったのさ」
「いいな……それ」
そんな中、孤立していたダニーとキーラへザミールが話しかけていた。
キーラはすき焼きをガツガツと食べながらザミールにサリエルド帝国へ戻らないのかといった話をしていた。
商人だとあちこちに行けるし、クリニヒト王国の商人としてやっていくつもりだと口にする。
良かったことの一例としてブレイズドラゴンの剣を見せていた。キーラも男なのでいい剣を見ると素直に褒める。
「う、ううむ……ライバルの息子しか知り合いが居ないのもどうなのだ……」
「そんなことを気にしていていたのですか?」
「なんせ王族があれだけ居るのだぞ!? アトレオン様もいるし……プレゼントだけ渡して帰るつもりだったからな……」
「そんなことだから器が小さいと言われるんですよ。ドルコント国のお話は聞きましたか?」
そこでダニーが居心地悪そうにお酒を飲んでいた。位は高い上にドラゴンといった強者も居るので小さくなっていた。
そこで悪いとは思いつつもザミールはユリウス君関連の話をした。
「ええー……極悪人じゃないか……」
「いや、でも一歩間違えたら私達も同じ、か……」
「ソルとエレノアさんが許してくれたこと、もっと感謝すべきだと思いますよ」
「あ、ああ……」
一連の事件は似ているなと思いつつ、その所業に恐怖していた。エレノアが亡くなったことに直接手を下していないが、有り得た未来だとも。
「きゃー! 可愛い! みなさん来て来て!」
「おや、お着替えが終わったのかな?」
そこでトーニャが大きな声を上げたのが聞こえて来た。ザミールが顔を上げると、テーブルの上に四人の赤ちゃんが乗っていた。
「あーい?」
「あうー!」
「きゃい♪」
「だー♪」
リヒトはディランを模した金色……ではなく、黄色の素材を使い、変身したディランのようなドラゴンの着ぐるみだった。
被り物をするとミニドラゴンのようになり、それを首の後ろに回すと枕になる。
「お父さんの髭と薄くなめした鱗と布で作っているから防御力も高いのよ♪」
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そしてリコットもハバラと自身の髪の色を模した青い三つ首ドラゴンのパジャマを着てご満悦だった。
リヒトにべったりとくっついてもこもこしていた。ライルも真似をしてリコットとは逆サイドでくっつく。
「うう……可愛い……」
「ロザさん、飲みすぎでは? でも本当に可愛い」
「で、即興で作ったから申し訳ないんですけど、ユリウス君も用意しました!」
「だーう♪」
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そしてトワイトとシエラが羊ユリウスを紹介すると、ローザが唸る。
「うーん、優しい雰囲気が可愛いですわ。もこもこしていますわね……!」
「いやあ、むさくるしい男達より赤ちゃんよね」
「なんだとシス!」
【ええい、酒が飛び散る、落ち着け】
「このギュウスジ煮込みとやら、美味すぎる……」
「あ、こら俺の分まで食うじゃねえよバルド!?」
「あーい♪」
「あーう♪」
シスもこちらに駆け付けて目を細めていた。
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そして誕生会は時間が過ぎていく――
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