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第364話 双子、楽しむ
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「坊やたちが欲しいものがあるといいんだけどね」
「ハニワとドグウも気に入ったし、何かあると思いますよ」
『……♪』
「あ、置物が中心なのね? この赤い……牛、かしら?」
「あー♪」
おばあさんと一緒に店へ入り、双子とシスが棚へ向かう。
赤ん坊が好むものがあるかわからないと言うが、トワイトとエレノアが大丈夫だと笑う。
異国からの旅行者であるシスは双子と一緒に興味深げに棚へ目を向ける。
「それは赤べこっていう置物だよ。べこは牛って意味だからお嬢ちゃんが合っているね。こうやって遊ぶのさ」
「あーい……!」
おばあさんが赤べこの頭を押すと、カタカタと揺れて音を出す。ライルが目を丸くして凝視していた。
「あい! あー♪」
「楽しそうね」
「あーい♪」
「わほぉん? わほぉん」
そこでリヒトが隣にお座りしているダルの頭をポンポンと軽く叩く。するとダルが真似をして頭をぶるんぶるんと振り出した。
「あははは! ダル君、赤べこみたいだ!」
「あーう♪」
「うぉふ」
「ふふ、や、やめて二人とも……笑い死んじゃう……!」
それを見たライルもヤクトの頭をポンポンと叩くと、やはり真似をした。
ケイレブとシスがツボに入ったらしく、ものすごく笑っていた。
「賢いわんちゃんだねえ。竹とんぼとかは赤ちゃんには難しいからねえ。ほら」
「あーう♪」
「ぴよー♪」
「アー!」
おばあさんは棚から竹とんぼを取り出すと回して飛ばす。するとレイタやグラソンが後を追った。
「そのうち遊べるようになるから一つもらっておこうかのう。む、銭を変えておらんな」
「ああ、銅貨とか銀貨でいいよ。最近、旅行者も増えて両替も簡単になったんだよ」
「そうか。ならまだいくつか買っていくぞい」
お金は東の国独自のものがあり、両替をするのが基本だ。しかし空から来たディランはそれをしていなかったことに気づく。
だが、そういう旅行者も多いのでここで銭と同等の銅貨などを払えば問題ないとおばあさんが言う。
「これは遊べるんじゃないかい? だるま落とし」
「あーい?」
「これはこうやって……」
「おー!」
「あー!」
次におばあさんがだるま落としを持ってきてちょっと座れる畳のスペースに乗せた。実演して見せた。スコンと心地いい音が聞こえて一段、落ちた。
リヒトとライルが拍手をする。
『……!』
「おや、埴輪がやるのかい?」
『……!!』
「あーい♪」
そこへソルが畳に飛び乗ると、おばあさんからハンマーを借り受けて腕を回す。
そしてよいしょとハンマーを振るい、またスコンと一段下がる。
「上手いじゃないか。こうやって、この一番上が落ちないように下までもっていくんだよ」
「あーい!」
おばあさんが微笑みながらソルの頭を撫でた後、ハンマーをリヒトへ渡す。
同じように振るうともちろん加減ができないのでだるまの頭は勢いよく吹っ飛んだ。
「わん!」
「ナイスキャッチ……!」
「あーい? おかーさ!」
飛んで行っただるまの頭はルミナスが空中でキャッチし、ギーラが拳を握っていた。反応できなかったので素直に偉いと思っているようだ。
リヒトはよくわからないとトワイトにハンマーを渡す。
「うふふ、強かったかしら? 面白いからこれももらっていきましょう」
「もう少し大きくなるまで理解が難しいかねえ? 毎度あり」
「おばあさん、これはなに?」
「ん? ああ、お手玉だね。これはこうやって遊ぶのさ」
今度はシスがじゃりじゃりする布の玉を手にしておばあさんに質問を投げかけた。
すると三つのお手玉を器用にサッサッと放り投げて回す。
「あー♪」
「あーう♪」
「あ、楽しそう。やってみてもいい?」
「難しいぞ」
「っと……本当に難しいわね……!?」
双子が喜んでいるのを見て、シスもチャレンジしてみたが上手くいかなかった。
そこで落ちたお手玉をトワイトが拾い、代わりにやってみた。
「コツがいるのよ。ほら」
「あ、すごい」
「さすが奥さんじゃ」
「こけー……」
「お、ジェニファーが目を回したわい」
「わほぉん」
お手玉をじっと見ていたジェニファーがこてんと倒れ、ダルが回収していた。
「で、これはお金ってやつで交換できるのか?」
「うむ。物を買うというプロセスじゃ」
「どうやって手に入れるんだ?」
「この国で働いたらもらえるが……なんじゃ、知らんのか」
「こやつらは黒竜族でな。自分たちの中だけで生活しておるから人間の生活は知らんのじゃ。折角だから見せてやりたいと思ってな」
「なるほどねえ」
「そういう意図もあったんですね……」
楽しそうにしている双子やトワイトをよそにギーラがおもちゃを手に入れるならどうするかを聞いていた。
ディランは回答をし、おばあさんとケイレブが理解を示していた。
「例えば今、島で家を作っているけど建てたら金をもらえる、みたいなもんか?」
「そうじゃな」
「若いのはこれを作れると思うか?」
「いや、無理だろうな」
「しかしお主は家を作れるな」
「ああ、力仕事ならできるぜ」
「人間はできることとできないことが必ずある。だからお互い、できることをやってお金で対価を払うのさ。畑を耕して野菜を作ったらそれを買う。野菜を作った人はそのお金で肉を買う……といった具合じゃな」
「わかるようなわからねえような……」
「僕は……わかりました。協力をして生きていく、そういうことなんですね。だから人間の姿を推している」
「うむ」
「商売はとりあえず置いといても、こうやってやり取りしているというのがわかったらいいと思うの」
自由に生きるギーラには難しかったが、ケイレブはわずかながら理解を示していた。人の姿をして生きるのはいろいろなメリットがあるからだという。
「そう、ですね……興味が湧いてきました……!」
「いいじゃない! 私も協力するわよ!」
「それじゃそろそろ次へ行くかのう」
「またおいで。あんたたち、可愛いからね。大きくなる前に連れてくるんだよ」
「そうじゃのう」
「また二十年後とかな。いてっ!?」
「約束したらちゃんとくるわい」
ディランはギーラの軽口を聞いて小突きながらそう言う。
そしてだるま落としや赤べこ、竹とんぼなどを買っておばあさんの店を後にするのだった。
「ハニワとドグウも気に入ったし、何かあると思いますよ」
『……♪』
「あ、置物が中心なのね? この赤い……牛、かしら?」
「あー♪」
おばあさんと一緒に店へ入り、双子とシスが棚へ向かう。
赤ん坊が好むものがあるかわからないと言うが、トワイトとエレノアが大丈夫だと笑う。
異国からの旅行者であるシスは双子と一緒に興味深げに棚へ目を向ける。
「それは赤べこっていう置物だよ。べこは牛って意味だからお嬢ちゃんが合っているね。こうやって遊ぶのさ」
「あーい……!」
おばあさんが赤べこの頭を押すと、カタカタと揺れて音を出す。ライルが目を丸くして凝視していた。
「あい! あー♪」
「楽しそうね」
「あーい♪」
「わほぉん? わほぉん」
そこでリヒトが隣にお座りしているダルの頭をポンポンと軽く叩く。するとダルが真似をして頭をぶるんぶるんと振り出した。
「あははは! ダル君、赤べこみたいだ!」
「あーう♪」
「うぉふ」
「ふふ、や、やめて二人とも……笑い死んじゃう……!」
それを見たライルもヤクトの頭をポンポンと叩くと、やはり真似をした。
ケイレブとシスがツボに入ったらしく、ものすごく笑っていた。
「賢いわんちゃんだねえ。竹とんぼとかは赤ちゃんには難しいからねえ。ほら」
「あーう♪」
「ぴよー♪」
「アー!」
おばあさんは棚から竹とんぼを取り出すと回して飛ばす。するとレイタやグラソンが後を追った。
「そのうち遊べるようになるから一つもらっておこうかのう。む、銭を変えておらんな」
「ああ、銅貨とか銀貨でいいよ。最近、旅行者も増えて両替も簡単になったんだよ」
「そうか。ならまだいくつか買っていくぞい」
お金は東の国独自のものがあり、両替をするのが基本だ。しかし空から来たディランはそれをしていなかったことに気づく。
だが、そういう旅行者も多いのでここで銭と同等の銅貨などを払えば問題ないとおばあさんが言う。
「これは遊べるんじゃないかい? だるま落とし」
「あーい?」
「これはこうやって……」
「おー!」
「あー!」
次におばあさんがだるま落としを持ってきてちょっと座れる畳のスペースに乗せた。実演して見せた。スコンと心地いい音が聞こえて一段、落ちた。
リヒトとライルが拍手をする。
『……!』
「おや、埴輪がやるのかい?」
『……!!』
「あーい♪」
そこへソルが畳に飛び乗ると、おばあさんからハンマーを借り受けて腕を回す。
そしてよいしょとハンマーを振るい、またスコンと一段下がる。
「上手いじゃないか。こうやって、この一番上が落ちないように下までもっていくんだよ」
「あーい!」
おばあさんが微笑みながらソルの頭を撫でた後、ハンマーをリヒトへ渡す。
同じように振るうともちろん加減ができないのでだるまの頭は勢いよく吹っ飛んだ。
「わん!」
「ナイスキャッチ……!」
「あーい? おかーさ!」
飛んで行っただるまの頭はルミナスが空中でキャッチし、ギーラが拳を握っていた。反応できなかったので素直に偉いと思っているようだ。
リヒトはよくわからないとトワイトにハンマーを渡す。
「うふふ、強かったかしら? 面白いからこれももらっていきましょう」
「もう少し大きくなるまで理解が難しいかねえ? 毎度あり」
「おばあさん、これはなに?」
「ん? ああ、お手玉だね。これはこうやって遊ぶのさ」
今度はシスがじゃりじゃりする布の玉を手にしておばあさんに質問を投げかけた。
すると三つのお手玉を器用にサッサッと放り投げて回す。
「あー♪」
「あーう♪」
「あ、楽しそう。やってみてもいい?」
「難しいぞ」
「っと……本当に難しいわね……!?」
双子が喜んでいるのを見て、シスもチャレンジしてみたが上手くいかなかった。
そこで落ちたお手玉をトワイトが拾い、代わりにやってみた。
「コツがいるのよ。ほら」
「あ、すごい」
「さすが奥さんじゃ」
「こけー……」
「お、ジェニファーが目を回したわい」
「わほぉん」
お手玉をじっと見ていたジェニファーがこてんと倒れ、ダルが回収していた。
「で、これはお金ってやつで交換できるのか?」
「うむ。物を買うというプロセスじゃ」
「どうやって手に入れるんだ?」
「この国で働いたらもらえるが……なんじゃ、知らんのか」
「こやつらは黒竜族でな。自分たちの中だけで生活しておるから人間の生活は知らんのじゃ。折角だから見せてやりたいと思ってな」
「なるほどねえ」
「そういう意図もあったんですね……」
楽しそうにしている双子やトワイトをよそにギーラがおもちゃを手に入れるならどうするかを聞いていた。
ディランは回答をし、おばあさんとケイレブが理解を示していた。
「例えば今、島で家を作っているけど建てたら金をもらえる、みたいなもんか?」
「そうじゃな」
「若いのはこれを作れると思うか?」
「いや、無理だろうな」
「しかしお主は家を作れるな」
「ああ、力仕事ならできるぜ」
「人間はできることとできないことが必ずある。だからお互い、できることをやってお金で対価を払うのさ。畑を耕して野菜を作ったらそれを買う。野菜を作った人はそのお金で肉を買う……といった具合じゃな」
「わかるようなわからねえような……」
「僕は……わかりました。協力をして生きていく、そういうことなんですね。だから人間の姿を推している」
「うむ」
「商売はとりあえず置いといても、こうやってやり取りしているというのがわかったらいいと思うの」
自由に生きるギーラには難しかったが、ケイレブはわずかながら理解を示していた。人の姿をして生きるのはいろいろなメリットがあるからだという。
「そう、ですね……興味が湧いてきました……!」
「いいじゃない! 私も協力するわよ!」
「それじゃそろそろ次へ行くかのう」
「またおいで。あんたたち、可愛いからね。大きくなる前に連れてくるんだよ」
「そうじゃのう」
「また二十年後とかな。いてっ!?」
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