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第95話 竜、召喚される
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「へえ、醤油と味噌をねえ。そりゃママは喜んだでしょ」
「ええ。お土産として置いて行った代わりに、料理をご馳走になりましたよ!」
『いいですねえ』
山から戻ったザミールは早々にガルフ達の下へ訪れていた。このひと月あまり、王都に居なかった彼は色々な変化を知ることになっていた。
「いやあ、まさかディランさんの娘さんがガルフ君のパーティに居るとは。ヒューシ君もヴァール王子のお付き人になるんだって?」
「まだその時ではありませんけど、その内お願いするとは言っています。僕なんかがまた後でというのは気が引けるのですが、承知していただけました」
「その間にパーティメンバー強化するつもりよ!」
ヒューシはヴァールの誘いを先送りにし、しばらくパーティで依頼をこなすことにした。
トーニャが居ればだいたいの依頼はできるが、居なくなった時のために全員底上げしておく方がいいだろうという提案だ。
「で、この子はこの屋敷のゴーストで今は精霊と同等の存在、と」
『はいです! リーナです、よろしくお願いします』
「実体があるなあ……」
経緯は全て聞き、不思議だと感じていたがディラン達ならそれもあるかとすんなり受け入れていた。
「それで私達になにか話が合って来たの?」
「なんか探しているって店で聞いたからだよ。そういえばこの屋敷もびっくりしたね……とりあえずお土産だ」
「あ、わざわざ買って来てくれたんだ」
ユリが首を傾げて尋ねると、ザミールは足元に置いているリュックの口を開ける。
そこから出したのはテンパール国で買ってきたお土産だった。
「あ、これ可愛い」
「なんかの動物かな?」
「それはクジラという魚の人形らしい。海沿いの町らしいよね。ちなみに実物は相当大きいそうだ」
ユリが手に取ったのはクジラの置物で、陶器で出来たものだった。コミカルに作られていてシンプルに可愛い形をしてた。
その他にもテンパール国で獲れる鉱石を使ったアクセサリーや保存食などを出していた。
「こんなにもらっていいのか?」
「ああ。私達はディランさんのことを知る友人同士だし、護衛とかで世話にもなっているしね」
「ありがとうございます」
ガルフが東の国のダガー、クナイをつまんでザミールへ問うと笑顔で問題ないと答えていた。色々と仕入れており、すでに店で売れているらしい。
ヒューシが礼を言うと、ザミールは椅子から腰を上げた。
「もう行くの?」
「ああ。この後、陛下のところへ行くんだ。土産も土産話もあるんだ」
「そっか。私達は今日、屋敷で休んでいるから、暇だったら晩御飯でも食べようよ」
レイカがお土産のお礼を兼ねてみんなで食事でもと提案するとザミールは小さく頷いてから返答をした。
「折角だし、そうさせてもらおうかな? ヒューシ君とユリちゃんのロイヤード国での話も聞きたいし」
「うんうん。外食でもいいし、トーニャは料理上手いよ。そこはトワイトさんの娘って感じ」
「それはいいね。それじゃ。少し行ってくる」
「あいよー」
ガルフは笑顔で手を振り、ザミールを玄関まで見送った。
「それじゃ昼寝でもするかねえ」
「私達は買い物に出てくるわ。晩御飯なにが食べたい?」
「任せる」
その後、パーティメンバーはそれぞれの休日を過ごすことになった。
たまの休日は必要不可欠である。
◆ ◇ ◆
「久しいなザミールよ。お主にも色々と話を持って行ったのだが居なかったので、どうしたのかと思っていた」
「私のような商人にお気遣い、光栄の至り。実はテンパール国へ行っておりました」
「おお、ヨシュリ国王のところか」
隣国ではないが知人のいる国ということでモルゲンロートの顔がほころぶ。そこで東の国へ行こうとしていたことを告げた。
「わざわざ東へか?」
「ええ、ディランさんのところで聞いたショウユとミソなる調味料が気になって仕方がなかったのです。それを探しに船着き場まで行きました」
「それはさぞ長旅だったでしょう」
そこで同席していたローザが労う。
商人の謁見は色々と商品が見れるため、彼女はよく一緒に居ることが多い。
ザミールは膝をついた状態で頭を下げてから続ける。
「はい。しかし、船の予定が合わず向こうには行けませんでした。しかし、その甲斐あって調味料を手に入れることが出来たのです」
「……! なんと、それは本当か!」
「異国の調味料にトワイトさん……あなた、これは胸が躍るお話が聞けるのでは?」
「そのようだ。して、その調味料は?」
瞬時にドラゴン夫婦が頭に浮かび、食事について頬が緩む。
最近はようやくきちんと炊けたお米を食することが出来ていた。それでもトワイトが炊いたものの方が美味しいかったりするので、また食べられるだろうと期待が膨らんだ。
「今はディランさんの家へ置いています。早速、肉じゃがという料理をいただいたのですがこれがまた絶品でして」
「なに? ザミール、お前、もう食べたのか?」
「え? ええ。お土産として置いて行ったのですが、翌日は三食、調味料を使った料理をいただきました!」
「なんですって……!」
すでに食したというザミールの言葉にモルゲンロートとローザが驚愕の表情に変わる。
「そしてオミソシルというスープがまたお米と合うんですよ! 漬物とそれだけでもいいくらいですが朝食はジェニファーの卵を使った目玉焼きも――」
「ザミール!」
「は、はい!?」
突然モルゲンロートに声を上げられて言葉を遮られ、ザミールは飛び上がらん勢いでびっくりして返事をした。
「何故、私を呼ばずに食べた……」
「あなた、わたくしもですわ……」
「あ、ああ……確かに! 申し訳ありません……!」
「まあ、済んでしまったことは仕方ない……ディラン殿のところに調味料はあるのだな?」
「あ、はい。まだあると思います。すぐに使い切れるほどではないでしょう」
しかしそこはモルゲンロート。派手に怒ったりはせず、冷静に次の手を考えていた。
「……よし。ザミール、彼等を招待……いや、仕事の依頼をしたいと思う。トワイトさんに料理を作ってもらえるよう頼もう」
「さすがですわ!」
「しょ、承知しました!」
「テンパール国にその調味料があるのだな? 土産を使ってしまうのも申し訳ない。調達を頼む」
「は、はいっ!」
そして話はトントン拍子に進み、ディラン達をいつ呼ぶかの算段に入っていた。
「……お前……いや、ヴァール様の両親は本当に王なのか……? 商人だろう相手は」
「ははは、そうだよ。普段から穏やかだし、威厳は少ないかもしれないけど、この国は国民の為に働いている自慢の父さ」
その光景を見ていたコレルが呆れた様子でヴァールに尋ねていた。もちろん尊敬しているよと返し、コレルはため息を吐く。
「なんかあの夫婦を呼ぶとか言っているが……親しいのか?」
「そうだね。私は事情をよく知らないんだけど、山へ狩りに行って知り合ってから仲がいいよ。平民っぽいけど、ディランさんはなんだか風格があるよね」
「あのジジイか……」
コレルはディランのことを思い返し、少し身震いする。
あの威圧感でコレルは言うことを聞かないとまずいと判断したくらいである。
「まあ、こっちはこっちでご相伴に預かれるよ。トワイトさんの食事は本当に美味しいんだ」
「どうだかな」
そして――
◆ ◇ ◆
「こけー……!」
「あら、またその人形とにらめっこしているの? この動物、なんでしたかしら、あなた?」
「あうー」
「ぴよっ!」
「なんじゃったかのう……見たことはあるな。氷竜のエゾルダスがペン……ぺンなんとかと言っておったような気がするわい。飛べない鳥じゃなかったかのう」
ザミールの置いて行ったお土産の中に、直立している置物があった。特におうとつの無い身体に鳥のようなくちばしがある飛べない鳥とディランが言う。
ジェニファーとひよこ達は興味を持ち、特にジェニファーはライバル意識を持っているのかよく構っていた。
「まあ、壊さなければええじゃろ。ワシは釣りでもしてこようかのう」
「いいですね。お弁当を作ってみんなで……あら、お客さん?」
釣りに行くかと提案した矢先、玄関の来客告げる鐘が鳴った。
「ええ。お土産として置いて行った代わりに、料理をご馳走になりましたよ!」
『いいですねえ』
山から戻ったザミールは早々にガルフ達の下へ訪れていた。このひと月あまり、王都に居なかった彼は色々な変化を知ることになっていた。
「いやあ、まさかディランさんの娘さんがガルフ君のパーティに居るとは。ヒューシ君もヴァール王子のお付き人になるんだって?」
「まだその時ではありませんけど、その内お願いするとは言っています。僕なんかがまた後でというのは気が引けるのですが、承知していただけました」
「その間にパーティメンバー強化するつもりよ!」
ヒューシはヴァールの誘いを先送りにし、しばらくパーティで依頼をこなすことにした。
トーニャが居ればだいたいの依頼はできるが、居なくなった時のために全員底上げしておく方がいいだろうという提案だ。
「で、この子はこの屋敷のゴーストで今は精霊と同等の存在、と」
『はいです! リーナです、よろしくお願いします』
「実体があるなあ……」
経緯は全て聞き、不思議だと感じていたがディラン達ならそれもあるかとすんなり受け入れていた。
「それで私達になにか話が合って来たの?」
「なんか探しているって店で聞いたからだよ。そういえばこの屋敷もびっくりしたね……とりあえずお土産だ」
「あ、わざわざ買って来てくれたんだ」
ユリが首を傾げて尋ねると、ザミールは足元に置いているリュックの口を開ける。
そこから出したのはテンパール国で買ってきたお土産だった。
「あ、これ可愛い」
「なんかの動物かな?」
「それはクジラという魚の人形らしい。海沿いの町らしいよね。ちなみに実物は相当大きいそうだ」
ユリが手に取ったのはクジラの置物で、陶器で出来たものだった。コミカルに作られていてシンプルに可愛い形をしてた。
その他にもテンパール国で獲れる鉱石を使ったアクセサリーや保存食などを出していた。
「こんなにもらっていいのか?」
「ああ。私達はディランさんのことを知る友人同士だし、護衛とかで世話にもなっているしね」
「ありがとうございます」
ガルフが東の国のダガー、クナイをつまんでザミールへ問うと笑顔で問題ないと答えていた。色々と仕入れており、すでに店で売れているらしい。
ヒューシが礼を言うと、ザミールは椅子から腰を上げた。
「もう行くの?」
「ああ。この後、陛下のところへ行くんだ。土産も土産話もあるんだ」
「そっか。私達は今日、屋敷で休んでいるから、暇だったら晩御飯でも食べようよ」
レイカがお土産のお礼を兼ねてみんなで食事でもと提案するとザミールは小さく頷いてから返答をした。
「折角だし、そうさせてもらおうかな? ヒューシ君とユリちゃんのロイヤード国での話も聞きたいし」
「うんうん。外食でもいいし、トーニャは料理上手いよ。そこはトワイトさんの娘って感じ」
「それはいいね。それじゃ。少し行ってくる」
「あいよー」
ガルフは笑顔で手を振り、ザミールを玄関まで見送った。
「それじゃ昼寝でもするかねえ」
「私達は買い物に出てくるわ。晩御飯なにが食べたい?」
「任せる」
その後、パーティメンバーはそれぞれの休日を過ごすことになった。
たまの休日は必要不可欠である。
◆ ◇ ◆
「久しいなザミールよ。お主にも色々と話を持って行ったのだが居なかったので、どうしたのかと思っていた」
「私のような商人にお気遣い、光栄の至り。実はテンパール国へ行っておりました」
「おお、ヨシュリ国王のところか」
隣国ではないが知人のいる国ということでモルゲンロートの顔がほころぶ。そこで東の国へ行こうとしていたことを告げた。
「わざわざ東へか?」
「ええ、ディランさんのところで聞いたショウユとミソなる調味料が気になって仕方がなかったのです。それを探しに船着き場まで行きました」
「それはさぞ長旅だったでしょう」
そこで同席していたローザが労う。
商人の謁見は色々と商品が見れるため、彼女はよく一緒に居ることが多い。
ザミールは膝をついた状態で頭を下げてから続ける。
「はい。しかし、船の予定が合わず向こうには行けませんでした。しかし、その甲斐あって調味料を手に入れることが出来たのです」
「……! なんと、それは本当か!」
「異国の調味料にトワイトさん……あなた、これは胸が躍るお話が聞けるのでは?」
「そのようだ。して、その調味料は?」
瞬時にドラゴン夫婦が頭に浮かび、食事について頬が緩む。
最近はようやくきちんと炊けたお米を食することが出来ていた。それでもトワイトが炊いたものの方が美味しいかったりするので、また食べられるだろうと期待が膨らんだ。
「今はディランさんの家へ置いています。早速、肉じゃがという料理をいただいたのですがこれがまた絶品でして」
「なに? ザミール、お前、もう食べたのか?」
「え? ええ。お土産として置いて行ったのですが、翌日は三食、調味料を使った料理をいただきました!」
「なんですって……!」
すでに食したというザミールの言葉にモルゲンロートとローザが驚愕の表情に変わる。
「そしてオミソシルというスープがまたお米と合うんですよ! 漬物とそれだけでもいいくらいですが朝食はジェニファーの卵を使った目玉焼きも――」
「ザミール!」
「は、はい!?」
突然モルゲンロートに声を上げられて言葉を遮られ、ザミールは飛び上がらん勢いでびっくりして返事をした。
「何故、私を呼ばずに食べた……」
「あなた、わたくしもですわ……」
「あ、ああ……確かに! 申し訳ありません……!」
「まあ、済んでしまったことは仕方ない……ディラン殿のところに調味料はあるのだな?」
「あ、はい。まだあると思います。すぐに使い切れるほどではないでしょう」
しかしそこはモルゲンロート。派手に怒ったりはせず、冷静に次の手を考えていた。
「……よし。ザミール、彼等を招待……いや、仕事の依頼をしたいと思う。トワイトさんに料理を作ってもらえるよう頼もう」
「さすがですわ!」
「しょ、承知しました!」
「テンパール国にその調味料があるのだな? 土産を使ってしまうのも申し訳ない。調達を頼む」
「は、はいっ!」
そして話はトントン拍子に進み、ディラン達をいつ呼ぶかの算段に入っていた。
「……お前……いや、ヴァール様の両親は本当に王なのか……? 商人だろう相手は」
「ははは、そうだよ。普段から穏やかだし、威厳は少ないかもしれないけど、この国は国民の為に働いている自慢の父さ」
その光景を見ていたコレルが呆れた様子でヴァールに尋ねていた。もちろん尊敬しているよと返し、コレルはため息を吐く。
「なんかあの夫婦を呼ぶとか言っているが……親しいのか?」
「そうだね。私は事情をよく知らないんだけど、山へ狩りに行って知り合ってから仲がいいよ。平民っぽいけど、ディランさんはなんだか風格があるよね」
「あのジジイか……」
コレルはディランのことを思い返し、少し身震いする。
あの威圧感でコレルは言うことを聞かないとまずいと判断したくらいである。
「まあ、こっちはこっちでご相伴に預かれるよ。トワイトさんの食事は本当に美味しいんだ」
「どうだかな」
そして――
◆ ◇ ◆
「こけー……!」
「あら、またその人形とにらめっこしているの? この動物、なんでしたかしら、あなた?」
「あうー」
「ぴよっ!」
「なんじゃったかのう……見たことはあるな。氷竜のエゾルダスがペン……ぺンなんとかと言っておったような気がするわい。飛べない鳥じゃなかったかのう」
ザミールの置いて行ったお土産の中に、直立している置物があった。特におうとつの無い身体に鳥のようなくちばしがある飛べない鳥とディランが言う。
ジェニファーとひよこ達は興味を持ち、特にジェニファーはライバル意識を持っているのかよく構っていた。
「まあ、壊さなければええじゃろ。ワシは釣りでもしてこようかのう」
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