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第186話 竜、お節介を焼く
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「……あの日、オルドライデ様が帰った後でお城から派遣された騎士様がやってきたのです」
「あの日……失踪する前に会った最後の日のことか?」
オルドライデが記憶を呼び起こして、その日のことを尋ねる。すると、シエラは肯定するように頷いた。
「そして私はお城へ連れていかれ、陛下と王妃様の前へ行きました」
「そこで追放……」
「いえ、そこで私は覚悟を決めて進言したのです。私のせいでオルドライデ様を縛ってしまうことになるため、どこか遠いところへ行くことを」
「なんだって……!?」
「なるほど、自分で決めて姿を消したのじゃな」
シエラの話によると、間違いなくオルドライデを愛している。だから関係を持った。
しかし平民である自分が一緒に居ていいのか? という思いが徐々に膨らんでいっていたのだ。
その時、二人に呼ばれてそう告げて立ち去ったのだと語った。
「結果的に父上の貴族主義のせい、ということにもなるんだが……」
「オルドライデ様、そうではありません。やはり私は平民ということで重責に耐えられなくなっていたんです……」
「産後で冷静さを欠いていた、というのもありますけれど」
「母上!」
「オルドライデ様、聞いてください」
シエラの告白にオルドライデがよろめく。
原因は父にある、という思いは変わらないもののシエラは王族との結婚に気後れしていたということがショックだった。
王妃が困った顔で冷静さを欠いていたと口にするとオルドライデがまた声を荒げる。
シエラが止めてから話を続けた。
「陛下と王妃様が私を呼んだ理由はオルドライデ様と離れることでした」
「やはり……!」
「……だけど、その条件は破格で辺境の土地で暮らせというものでした」
「え……?」
「……」
「ということは……国外追放はしていない……?」
ウォルモーダと王妃は彼女を呼び出した後、離れるように告げた。
シエラは元々、離れようとしていたため利害は一致していたのである。
そこで夫妻はそれなりに暮らしていけるお金と家を与えていた。
「馬鹿な……私一人が何も知らず……」
「申し訳ありません……何も言わずに去ることが一番だと、あの時は思っていて……」
「少なくともそれで終わり、たまに様子を誰かに見てもらい報告を貰えばいいと思っていた」
「父上……?」
「だけど、彼女はわたくし達が与えた場所からも居なくなってしまったの」
オルドライデは嫌な汗をかきながら話を聞く。
父であるウォルモーダが彼女と赤ん坊を考慮して普通の暮らしをさせていた、ということがまだ、信じられない。
さらに王妃はその後ため息を吐きながら驚愕の事実を口にした。
「まさか、王様たちもシエラさんの行方が分からなくなったのですか?」
「そうだ、商人の男。定期的に物資を届けて様子を確認していたのだが、数か月前に行方がわからなくなっていた」
「じゃあ、シエラの居場所を父上と母上は知っていたのか……!」
「あ!」
「ぐっ……」
止めていたシエラを振り切りオルドライデはウォルモーダに一撃を繰り出した。
特にガードすることもなく、甘んじて受けたような感じもする。
「ふん、力が入っていないようだな。寝れていないとそうなる」
「はあ……はあ……誰のせいで……!」
「どうしてシエラさんは失踪したのかしら? 生活には苦労をしていなかったのでしょう?」
「それなんですが……」
親子の言い争いの中、誰もが気になっているであろう失踪の原因を話しだしたので一同、静かに耳を傾ける。
するとシエラは少し間を置いてから続けた。
「……あの家を出た理由は二つありまして、一つはこれ以上陛下たちにお世話していただくのが申し訳ないということと、誰かに見られていると感じたからです」
「見られている?」
「ええ。辺境の方で暮らしていたのですが近くに村と領主様のお屋敷がありました」
「そうだな。ただ、誰にもオルドライデとのことは伝えていなかったが……」
手配したウォルモーダは領主にも告げず、ただ引っ越させただけだと言う。
もし、王子の妻と子供であると知られれば面倒になるからだ。
「黙って出ていかなくてもいいでしょうに」
「申し訳ありません王妃様」
「母上、今はもう一つの理由が気になる」
「監視でもされていたというのか?」
王妃の言いたいことは理解できるが、オルドライデはそれよりも気になることがあると口にし、一時休戦となった親子が訝しむ。
「ふむ、先ほど誘拐されそうになっておったのをリヒトが見つけてワシらが駆けつけたのじゃが関係がありそうかのう」
「え!? そ、そんなことがあったのですか!?」
「そういえばギルドから出てすぐにここへ来たから説明していませんでしたっけ」
「聞いていませんよ!?」
「誘拐……むう」
「でも捕らえたのでしょう? 安心では?」
ディランが語るとオルドライデがぶっと噴いてから目を丸くしていた。恐らくそれが犯人で捕まえたのならもう大丈夫だろうと王妃が言う。
しかしウォルモーダの表情は渋い。
「父上、なにか心当たりが?」
「いや……この件は私が片づける。お前はなにもしなくていい」
「またそうやって……! 私の妻のことだ、調査は私がする! シエラと息子は城で匿う」
「しかし平み――」
「なにがそんなに気に入らないのだ、父上? 少なくともこの件以外についてはそれほどおかしいと思ったことは無い。シエラに関してのみ、頑なに拒み続ける理由はなんだ」
ウォルモーダは誘拐犯の件は自分がやると言い放った。しかしオルドライデはそれが癇に障ると怒り、どうしてそこまでと聞き返す。
「確かにねえ。別にちゃんとした暮らしを与えているから、嫌いってわけじゃなさそうですし」
「た、確かに……父上、母上、どういうことなのですか?」
「お孫さんのこともありますし、言ってもいいのかと」
「あら、可愛いわね……」
「「すぴー」」
「ぴよー」
トワイトはウォルモーダ達へ意図を話した方がいいのではと口にした。
それが、いつの間にかダルを枕にして眠ってしまった孫のためでもあるのではないかと尋ねるように。
「あの日……失踪する前に会った最後の日のことか?」
オルドライデが記憶を呼び起こして、その日のことを尋ねる。すると、シエラは肯定するように頷いた。
「そして私はお城へ連れていかれ、陛下と王妃様の前へ行きました」
「そこで追放……」
「いえ、そこで私は覚悟を決めて進言したのです。私のせいでオルドライデ様を縛ってしまうことになるため、どこか遠いところへ行くことを」
「なんだって……!?」
「なるほど、自分で決めて姿を消したのじゃな」
シエラの話によると、間違いなくオルドライデを愛している。だから関係を持った。
しかし平民である自分が一緒に居ていいのか? という思いが徐々に膨らんでいっていたのだ。
その時、二人に呼ばれてそう告げて立ち去ったのだと語った。
「結果的に父上の貴族主義のせい、ということにもなるんだが……」
「オルドライデ様、そうではありません。やはり私は平民ということで重責に耐えられなくなっていたんです……」
「産後で冷静さを欠いていた、というのもありますけれど」
「母上!」
「オルドライデ様、聞いてください」
シエラの告白にオルドライデがよろめく。
原因は父にある、という思いは変わらないもののシエラは王族との結婚に気後れしていたということがショックだった。
王妃が困った顔で冷静さを欠いていたと口にするとオルドライデがまた声を荒げる。
シエラが止めてから話を続けた。
「陛下と王妃様が私を呼んだ理由はオルドライデ様と離れることでした」
「やはり……!」
「……だけど、その条件は破格で辺境の土地で暮らせというものでした」
「え……?」
「……」
「ということは……国外追放はしていない……?」
ウォルモーダと王妃は彼女を呼び出した後、離れるように告げた。
シエラは元々、離れようとしていたため利害は一致していたのである。
そこで夫妻はそれなりに暮らしていけるお金と家を与えていた。
「馬鹿な……私一人が何も知らず……」
「申し訳ありません……何も言わずに去ることが一番だと、あの時は思っていて……」
「少なくともそれで終わり、たまに様子を誰かに見てもらい報告を貰えばいいと思っていた」
「父上……?」
「だけど、彼女はわたくし達が与えた場所からも居なくなってしまったの」
オルドライデは嫌な汗をかきながら話を聞く。
父であるウォルモーダが彼女と赤ん坊を考慮して普通の暮らしをさせていた、ということがまだ、信じられない。
さらに王妃はその後ため息を吐きながら驚愕の事実を口にした。
「まさか、王様たちもシエラさんの行方が分からなくなったのですか?」
「そうだ、商人の男。定期的に物資を届けて様子を確認していたのだが、数か月前に行方がわからなくなっていた」
「じゃあ、シエラの居場所を父上と母上は知っていたのか……!」
「あ!」
「ぐっ……」
止めていたシエラを振り切りオルドライデはウォルモーダに一撃を繰り出した。
特にガードすることもなく、甘んじて受けたような感じもする。
「ふん、力が入っていないようだな。寝れていないとそうなる」
「はあ……はあ……誰のせいで……!」
「どうしてシエラさんは失踪したのかしら? 生活には苦労をしていなかったのでしょう?」
「それなんですが……」
親子の言い争いの中、誰もが気になっているであろう失踪の原因を話しだしたので一同、静かに耳を傾ける。
するとシエラは少し間を置いてから続けた。
「……あの家を出た理由は二つありまして、一つはこれ以上陛下たちにお世話していただくのが申し訳ないということと、誰かに見られていると感じたからです」
「見られている?」
「ええ。辺境の方で暮らしていたのですが近くに村と領主様のお屋敷がありました」
「そうだな。ただ、誰にもオルドライデとのことは伝えていなかったが……」
手配したウォルモーダは領主にも告げず、ただ引っ越させただけだと言う。
もし、王子の妻と子供であると知られれば面倒になるからだ。
「黙って出ていかなくてもいいでしょうに」
「申し訳ありません王妃様」
「母上、今はもう一つの理由が気になる」
「監視でもされていたというのか?」
王妃の言いたいことは理解できるが、オルドライデはそれよりも気になることがあると口にし、一時休戦となった親子が訝しむ。
「ふむ、先ほど誘拐されそうになっておったのをリヒトが見つけてワシらが駆けつけたのじゃが関係がありそうかのう」
「え!? そ、そんなことがあったのですか!?」
「そういえばギルドから出てすぐにここへ来たから説明していませんでしたっけ」
「聞いていませんよ!?」
「誘拐……むう」
「でも捕らえたのでしょう? 安心では?」
ディランが語るとオルドライデがぶっと噴いてから目を丸くしていた。恐らくそれが犯人で捕まえたのならもう大丈夫だろうと王妃が言う。
しかしウォルモーダの表情は渋い。
「父上、なにか心当たりが?」
「いや……この件は私が片づける。お前はなにもしなくていい」
「またそうやって……! 私の妻のことだ、調査は私がする! シエラと息子は城で匿う」
「しかし平み――」
「なにがそんなに気に入らないのだ、父上? 少なくともこの件以外についてはそれほどおかしいと思ったことは無い。シエラに関してのみ、頑なに拒み続ける理由はなんだ」
ウォルモーダは誘拐犯の件は自分がやると言い放った。しかしオルドライデはそれが癇に障ると怒り、どうしてそこまでと聞き返す。
「確かにねえ。別にちゃんとした暮らしを与えているから、嫌いってわけじゃなさそうですし」
「た、確かに……父上、母上、どういうことなのですか?」
「お孫さんのこともありますし、言ってもいいのかと」
「あら、可愛いわね……」
「「すぴー」」
「ぴよー」
トワイトはウォルモーダ達へ意図を話した方がいいのではと口にした。
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