89 / 115
異世界の村
しおりを挟む「うわあ、おっきいね修ちゃん!」
「それだと俺が大きいみたいに聞こえるからな? ……とはいえ、確かにこれはでかい」
「お母さんみゃ」
「ですにゃ」
「え!?」
抱っこしているコテツがそんなことを言い出したので俺が驚愕の声を上げると、近づいてきた人が声を出す。
「あら、お客さん? 珍しいわね」
<この匂いは……?>
「おお、この大きい猫、喋ったぞ。もしかして? それと、お嬢さんはエルフってやつか……?」
「ええ、そうだけど?」
親父がでかい猫が喋ったのを見て顔を綻ばせるが、間違いなく違う気がする。それよりも金髪美人の方が返事をした方が重要だ。
「その耳は確かにエルフだ……。俺達の世界にも居るけど、エルフって人間を嫌っているはずじゃなかったっけ?」
「ああ、その認識は共通なんだ? 一応こっちの世界もそうだったよ。俺なんて一度磔にされたからなあ」
「磔!?」
「懐かしいわね、もう五年も前の話だし。あ、シュンスケは今大人しく寝ているわよ」
「オッケー、それじゃ住孝さん、ボクは息子のところへ行くからお任せしていい?」
どうやらシュンスケというのは住孝さんの子供みたいだな。真弓さんが俺達から離れてそういうと、旦那の住孝さんは笑顔で答える。
「おう。ネーラに引き継いでもらおう」
「なんかよく分からないけどいいわよ? イブも寝てるし」
「イブも真弓に任せておこうか。で、この人達だけど、元ドラゴンだった猫を探しているらしい。ここ数週間であちこちから猫を引き取っているからもしかしたらいるんじゃないかと思ってな」
「んー、ドラゴンの転生した猫ってこと?」
「あ、そうです! こいつみたいに喋るんですけど、いませんか?」
<ちっす、アイスドラゴン猫のスリートっす>
コテツを降ろしてスリートを抱えて差し出すと、前足を上げて挨拶をし、ネーラさんと呼ばれた金髪美人エルフが柔らかに微笑んでスリートの鼻に指をちょんと触れながら言う。
「こんにちは。ふふ、コテツ達みたいね♪ とりあえずお猫様がなにか知ってるか聞いてみようかしらね……って、あら」
ネーラさんが大きな猫に目をやり、俺もその視線を追うとすでに真理愛が突撃していた。あいつは怖いもの知らずか!?
<あら、そうなの? 大変ねえ>
「そうなの。ちゃんと見つけてあげないと可哀想だから、修ちゃん達みんなで探しているの!」
<喋る猫は私とコテツ、キサラギしか今のところ居ないけど……最近増えたから混ざっているかも?>
……大猫をフカフカしながら真理愛が幸せそうな顔で会話を試みているが、恐らくあの猫は――
「真理愛、急に傍から離れるのは怖いから止めてくれ……というか、大きな猫さん、あんた精霊だな?」
<あら、分かるの? 確かにそうよ、エルフ達の守護精霊が私、シュネルよ。みんなはシュネって呼ぶからあなた達もそれでいいわ>
「ありがとうシュネちゃん♪ 凄くふかふかー」
<あらあら、マユミやネーラ達とはまた違った性格の子ねえ。それじゃ、猫達を呼びましょうか。まだ別の村に行ってなくて良かったわ>
なんでも猫を崇めているエルフ達らしく、今は和解しているけど人間達と確執があってこっちの世界じゃ猫や犬といった動物が絶滅寸前にまでなっていたらしい。
それで住孝さんは俺達の世界で殺処分になる猫や犬を連れてこの島に放つことにした、と。魔物もいる世界だから村でしっかり管理するため、少しずつ引き取っているそうだ。
「猫ボランティアも信用されるまでなかなか時間がかかるからねえ。ちょうど今日が二回目だったんだ」
「お金とか大丈夫なんですか?」
「ああ、ウチはそれなりに遺産とかあるからね。それよりシュネ、頼むよ」
<ええ。マリア、ちょっと離れていてね>
「? はーい」
真理愛が不思議そうな顔で離れると、シュネが尻尾をピンと立てて遠吠えのような声を出した。
「おお、迫力あるな」
「コテツとキサラギを抱っこしている親父も絵面的には相当だけどな。お、集まって来たぞ!」
「わーい、いっぱい来たよ!」
村の奥から多数のエルフと共に親猫子猫関係なくシュネに向かって突撃してくる。さて、この中に居てくれると話が早いんだけど……
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる