110 / 115
女神の提案
しおりを挟む「かぁ……さみい……」
<情けないぞシュウ、我は元々雪山に住んでいたから屁でもない>
「でかい爬虫類のくせに……!」
「はいはい、喧嘩しないのお兄ちゃん」
ゲベレスト山まであと一息というところまで来たが、母ちゃんの言う通り防寒を施してきたけどやはり寒いものは寒いのだ。
しかし女神は一体何を考えているのやら……聞くしかないと分かっているけど真理愛と八塚を人質に取られたら分が悪い点がネックだな。
「そろそろ到着するわよ、パーティはまだ終わっていないみたい」
「……! おいおい……」
「うわあ……」
俺達一家がため息を吐くのも無理はない、あちこちで爆発が起こっているからだ。
雪が解けて湯気となり、辺り一帯を別の意味で白く染めていた。
「スメラギ、神殿だ!」
<よし! カアアアァァ!>
「あ、馬鹿!?」
<へぶ!?>
スメラギはいきなり神殿に口から火球を吐き出し、俺は慌ててスメラギの頭を剣で小突くが残念ながらすでに発射された後だった。飛んで行った火球は神殿の屋根にぶち当たり、大きな穴を開ける。
<なにをする……!?>
「お前、真理愛がこれで死んでたりしたら許さないからな……?」
<あ……!?>
<ま、まあまあ、天井に穴が開かないとあたし達も入れないから……>
結愛が乗っているフレーメンが焦りながらそう言う。確かに一緒に居た方が心強いかと怒りを納めることにし、ゆっくりと降下していく。
見ればあちこちで魔族が倒れていて本気で根絶やしにでもするつもりなのかと眉を顰める。
神殿内はそこそこ広いがスメラギ達が奥へ行くのは難しそうだ。
とりあえず武器を構えて行くかと思ったところで、目の前に見える階段から慌てた人影が上がって来た。
【くっ、強すぎる……! 私が手も足も出ないとは……】
「あ、魔王さんだ!」
【ん? なんだ? おお……! 勇者一家ではないか!】
あの倉庫での威厳はどこへ行ったのか、文字通り尻に火が付いた魔王が階段から姿を現し、その後ろからゆっくりとした歩調で八塚と真理愛も現れた。
『あら、シュウじゃない。もう追いついたの? 早かったわね』
「そんなことはどうでもいい。ハーテュリア、一体なにが目的だ? それと真理愛を返してもらおう」
『それは出来ない相談ね。少なくとも、そこの魔王と魔族は絶やしておかないと』
口元に手を当てて目を細めながら笑うハーテュリアに、俺達の後ろに隠れた魔王が口を開く。というかこいつも相当強いはずだが俺達を盾にするくらい女神ってのは強いのか?
【何故、我々だけなのだ? 前の戦いも勇者に聖剣で封印され苦汁を飲まされたが、魔族を目の敵にする理由はなんだ? 流石に何十回も封印されていたら私もキレるぞ】
「いや、その恰好でキレるっつっても……とはいえ、確かに魔王はダメで、帝国みたいな非道をする人間はセーフってのがよくわからんな」
親父も魔王と同じ考えを示し、俺もそこは気になるところだった。
すると魔王はさらに続けて話し出す。
【なんか私が別の人間界に侵攻しようとしたのが気に入らないようだが、そもそもこちらの人間どもが敵視して襲ってくるから対抗しているだけだぞ! だから移住先を調査していたのだ!】
「そういうことか。それで、あの親子が死んだんだから、お前はお前で討伐対象だからな?」
【くっ……】
こいつが実は悪い奴ではないとしても、こいつの部下が向こうの人間を襲ったのは事実。そういう意味ではここで魔王が倒されても問題はない。
だが、こいつはそれをした後、どう考えているのかが分からない。
『……魔族はイレギュラーだからよ。本来、この世界に生まれる想定はしていなかった種族。だから消し去る必要があるのよ』
「いやいや、それは酷いんじゃない? この世界はあなたが作ったものかもしれないけど人間も魔族も天然の自然から生まれたいわば世界の一部よ? それを抹殺するなんておかしいわ。自分の思い通りの世界にしたいとはいえ、横暴すぎる」
「そうね。そりゃ嫌な奴を消したいって思ったことは何回かあるけど、それをしたら殺人犯と一緒だもの」
あるのか、結愛よ。
それはともかく母ちゃんの言う通りもう出来てしまった世界に創造主が手を入れるのは正直な話ルール違反もいいところだ。
『だけど、魔族は寿命が長い上に能力も高いわ。最終的に残るのは魔族になると思うの。私は人間の為にこの世界を作ったんだから、そんなイレギュラーは必要ないわ』
【ぐぬう……女神め……いつか殺してやろうと思っていたが、その考えは正しかったようだな……】
「ならハーテュリアは魔族を倒したら真理愛を返してくれるのか?」
『……』
「おい、答えろよ!? 真理愛をどうするつもりだ!」
こいつのことだから『オッケー!』というかと思ったのだが、即答無し。マジでどうするつもなのかと剣を構えると、少し考えた後にハーテュリアが口を開く。
『……そうね、ここで問答をしていても仕方がないか。今、ここで私を無視してくれるなら真理愛は返しあげてもいいわ。ちょっと時間がかかるけど、私一人でも魔王は倒せるし。あ、聖剣は返してもらうけどね? ただ、時間がかかるから向こうの世界へ送り届けるのは無理かな』
「マジでか……? いや、別に魔王に肩入れする必要もないからいいけど……」
【味方が居ない……!? ま、まあ、そんなものかもしれないが……おい女神、私から質問がある。貴様の提案であるケリをつけるというのは吝かではないが、私とて争いをしたいわけではない。魔族を亡ぼす前にできることはないのか?】
『……あんたとゴーデンはやりすぎたからね……人間を殺して別世界への侵攻の償いはすべきだと思わない?』
ガチで人間大好きっぽいなこいつ。
なんとかならないか……? 俺がそう思っていると、結愛が顎に手を当てて口を開く。
「うーん、こういう時ってゲームだと死んだ人を生き返らせたり、時間を戻してなかったことにする、みたいなことができるけど、女神様と魔王さんはそういうのできないの?」
『それが出来たら苦労は――』
【いや、できる……できるぞ勇者の妹!】
「……マジで?」
俺達は物凄く胡散臭い者を見る目で魔王を見る。
だが、自信があるようで……?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる