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4.覚醒
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「こんなところに村があるとはな! 食料を奪え!」
「女も攫っとけよ!」
「「「ヒャッハー!」」」
ロイとディアクが村の異変を感じ取ったころ、村には盗賊達が入り込んでいた。
リーダーらしき男と腹心のような男が指示を出すと、三十人ほどのならず者が門を強行突破して村を襲いだす。
「きゃあああ!」
「うわあああああ!?」
逃げ惑う人々を追い、剣で傷つけ、女性の首に縄をつけて回るといった凶行を行っていくならず者達。もちろん村だと言って戦えない者が居ないわけではない。
「こいつら最近あちこちで出没している噂の盗賊団か?! 食らえ!」
「ぐあ!? 自警団か!」
「皆、散開するのだ!」
「うおおお!」
もちろん、村も備えをしていないわけもなく戦士たちが応戦に入る。すると盗賊の一人が女性の首にダガーを当てて笑みを浮かべる。
「あ、ああ……」
「へっ、人質をとられてもやれるかな……うお!?」
「足踏みをしていては全滅だ……! 先にお前達を駆逐してから考えるさ!」
だが、思いのほか自警団の覚悟も決まっており冷や汗を流しつつも盗賊と斬り結んでいた。
それでも村人の方が多いため、強気に出て盗賊に分が悪いと思わせ、撤退してくれるのを期待する形だ。
しかし、数が多いためその毒牙は少なからず村人を襲う。
「お、お母さん……」
「な、なんですかあなた達は……!」
「こけー!!」
そしてリアムとフレスコの前にも盗賊は現れた。二人の男はニワトリ小屋に押し入り、ダガーを向けていた。
「へへ……ガキはともかく母親は楽しめそうだな……」
「ガキも使えるから連れて行くぞ」
「馬鹿、内鍵をかけて今やっちまえばいいだろ」
「い、いや……! あなた!」
「フレスコ!! どこだ!」
「おっと、旦那か?」
そこで夫であるカルドの声が響き渡る。盗賊の一人が小屋の外に出てカルドの前に立つ。
「旦那かい? 大人しくしていれば妻がやられる声が聴けるぜ?」
網で覆われている小屋に視線を送りながら盗賊がニヤニヤと笑う。
「……そこをどくんだ」
「やる気か? 農夫が生意気だな」
だが、怒りの表情を見せて怯むことなく声を出すカルドだった。そのことに、やや苛立ちを覚えて盗賊がダガーをチラつかせた。
「リアム! リアム!」
「お兄ちゃん!」
「くそ、お前達なんでこんなことを!」
「俺達は食うものにも困る可哀想な奴等なんだ、ちょっと分けてもらいたいと思ってきたんだよ!」
フレスコに覆いかぶさろうとしていた男が下卑た笑みを浮かべながらリカルドを挑発する。
「なんて奴等だ……! お前達はクズだ! 僕がもっと大きかったら倒してやる……のに……」
「……! お、兄ちゃん……」
「う……」
瞬間、盗賊がリカルドに接近してお腹にダガーを刺していた。
「ガタガタうるせえガキだな……冷めちまった。女は連れて行って後で楽しむか。親父も後を追わせてやれ」
「おう」
「あ……ああ……」
「こけー!!」
リアムが這いずるようにリカルドのところへ行くと、地面からすっと血だまりが出来ていた。
このままでは死んでしまうだろう。子供でも生死の意味は知っている。
「う、うう……」
「お嬢ちゃんは大きくなるまで飼ってやるからな? さて、旦那を殺して――」
「……さない」
「お? なんだ?」
リアムが立ち上がって男達を睨みつける。そのまま涙を流して激昂する。
「許さない……!! お兄ちゃんをよくも!」
(力と……記憶を……取り戻せ……私……)
「……! 今の……なに? う、魔王……記憶が……」
「リアム!? う、は、離して! あなた!」
「くっ……うう……」
娘の異常に気付いたフレスコが手を伸ばす。だが、引っ張られてそれができなかった。一方、カルドも盗賊に切り刻まれて膝をついていた。
「さて、とどめを刺しておこうか。後で恨まれても困るからな」
「う、うう……す、すまない……リカルド……フレスコ……」
農夫のカルドではやはり歯が立たずその場に崩れ落ちる。このまま妻と娘を連れされてしまうと悔し涙を流していた。
「おら、ガキ行くぞ」
「う、うう……」
「手こずらせるな! ぶたれたいか!」
盗賊はリアムに怒声を浴びせる。脅かして従わせようとしているのだ。
「おら、行くぞ」
「……!」
そしてリアムの手を盗賊が取った瞬間――
「……私に触るな、盗賊風情が!」
「な!? このガキ! ……うぐあ……」
「少しそこで待っているのね。すぐ片付けてあげる。……お兄ちゃん! <ハイキュア>!」
「う……リアム……?」
「「え……?」」
手を掴んだ盗賊がリアムに弾き飛ばされ、さらに回復魔法を使い兄の傷をあっという間に治した。
「な……!?」
「邪魔」
「がっ!?」
「お父さん、しっかり!」
「う、うう……リアム? いったいなにが……」
「ふふ、大丈夫だよお父さん! すぐに終わらせるね♪ ロイも危ないかもしれないいし」
父を助けたリアムは笑顔でそう言うと、ウインクしてから盗賊へ振り返る。
「それじゃ、お掃除の時間だね――」
「「……!?」」
リアムが真面目な顔になったかと思った瞬間――
◆ ◇ ◆
「父さん!」
「火の手が……! 母さんのところへ行くぞ!」
「うん! ……ああ、みんな!?」
盗賊が入り込んでからすぐにロイ達も戻って来た。そこは家屋に火矢が放たれ、いつもの景観がとんでもない地獄になっていた。
数人、知り合いが倒れているのが見えてロイは顔を覆う。ディアクも焦りを抑えつつ妻の下へと向かう。
「へっへ……こっちに来いよ!」
「いやあああ!」
「下衆が!」
「うぐあ……!?」
途中、連れ去られそうになっていた女性を助け、さらに家へ向かう。
こんなに遠かったかと錯覚していると、ちょうど自宅の前にロイの母、イオが居ることに気づく。
「イオ!」
「……! あなた、ロイ!」
「お母さん無事!」
「ああ、良かった……家の中に居ないと危ないじゃないか」
「え、ええ、そうなんだけどお隣が襲われて……」
イオが困惑しながらそう口にし、手にはフライパンがあった。お隣、と聞いてロイは視線を移す。
するとちょうどリカルドが刺され、リアムが泣き叫んでいるところだった。
「……! あ、あいつら……!! リアムとリカルド兄ちゃんを……!」
「おい、ロイよせ!」
ロイはリアムの泣き顔を見て完全にキレていた。
すると――
(奴等を……倒せる力……ある……)
「う、な、なんだ……!? ゆ、うしゃ……記憶が――」
「待つんだ! ……う!?」
「ひゃっはー! 獲物を見つけたぜ!」
不意に頭痛を起こすロイ。
そこへリアム達のところに居る盗賊とは別の者がロイに立ちふさがるように姿を現した。
(倒せ……俺の力は
「邪魔……するんじゃねえ! <フレイムボルト>!!」
「「え!? ロイ!?」」
いきなり息子が魔法を放つのを見て驚く両親。
あっという間に盗賊が炎に包まれる中、リアムを助けに走って行く。
「リアムぅぅぅ!!」
「ロイ……! ちょっと待ってねこいつを片付けるから!」
「なんだって!? へへ、なら俺も手伝う……ぜ!!」
「ガキ共が――」
そして、リアムの魔法とロイのダガーがヒットして盗賊はその場に崩れ落ちた。
「よし……これならいける。父さん、俺このまま行ってくるよ」
「行ってくるって……盗賊退治か!?」
「うん。今の俺ならできる」
「しかし……」
「おじさま、私も行くから大丈夫だよ! 魔法、使えるし! いこ、ロイ!」
「ああ!」
困惑する両親をよそに、ロイとリアムは手を繋いで駆け出していく。慌ててディアクが追いかけていくと、恐るべし光景を目にすることになった。
「女も攫っとけよ!」
「「「ヒャッハー!」」」
ロイとディアクが村の異変を感じ取ったころ、村には盗賊達が入り込んでいた。
リーダーらしき男と腹心のような男が指示を出すと、三十人ほどのならず者が門を強行突破して村を襲いだす。
「きゃあああ!」
「うわあああああ!?」
逃げ惑う人々を追い、剣で傷つけ、女性の首に縄をつけて回るといった凶行を行っていくならず者達。もちろん村だと言って戦えない者が居ないわけではない。
「こいつら最近あちこちで出没している噂の盗賊団か?! 食らえ!」
「ぐあ!? 自警団か!」
「皆、散開するのだ!」
「うおおお!」
もちろん、村も備えをしていないわけもなく戦士たちが応戦に入る。すると盗賊の一人が女性の首にダガーを当てて笑みを浮かべる。
「あ、ああ……」
「へっ、人質をとられてもやれるかな……うお!?」
「足踏みをしていては全滅だ……! 先にお前達を駆逐してから考えるさ!」
だが、思いのほか自警団の覚悟も決まっており冷や汗を流しつつも盗賊と斬り結んでいた。
それでも村人の方が多いため、強気に出て盗賊に分が悪いと思わせ、撤退してくれるのを期待する形だ。
しかし、数が多いためその毒牙は少なからず村人を襲う。
「お、お母さん……」
「な、なんですかあなた達は……!」
「こけー!!」
そしてリアムとフレスコの前にも盗賊は現れた。二人の男はニワトリ小屋に押し入り、ダガーを向けていた。
「へへ……ガキはともかく母親は楽しめそうだな……」
「ガキも使えるから連れて行くぞ」
「馬鹿、内鍵をかけて今やっちまえばいいだろ」
「い、いや……! あなた!」
「フレスコ!! どこだ!」
「おっと、旦那か?」
そこで夫であるカルドの声が響き渡る。盗賊の一人が小屋の外に出てカルドの前に立つ。
「旦那かい? 大人しくしていれば妻がやられる声が聴けるぜ?」
網で覆われている小屋に視線を送りながら盗賊がニヤニヤと笑う。
「……そこをどくんだ」
「やる気か? 農夫が生意気だな」
だが、怒りの表情を見せて怯むことなく声を出すカルドだった。そのことに、やや苛立ちを覚えて盗賊がダガーをチラつかせた。
「リアム! リアム!」
「お兄ちゃん!」
「くそ、お前達なんでこんなことを!」
「俺達は食うものにも困る可哀想な奴等なんだ、ちょっと分けてもらいたいと思ってきたんだよ!」
フレスコに覆いかぶさろうとしていた男が下卑た笑みを浮かべながらリカルドを挑発する。
「なんて奴等だ……! お前達はクズだ! 僕がもっと大きかったら倒してやる……のに……」
「……! お、兄ちゃん……」
「う……」
瞬間、盗賊がリカルドに接近してお腹にダガーを刺していた。
「ガタガタうるせえガキだな……冷めちまった。女は連れて行って後で楽しむか。親父も後を追わせてやれ」
「おう」
「あ……ああ……」
「こけー!!」
リアムが這いずるようにリカルドのところへ行くと、地面からすっと血だまりが出来ていた。
このままでは死んでしまうだろう。子供でも生死の意味は知っている。
「う、うう……」
「お嬢ちゃんは大きくなるまで飼ってやるからな? さて、旦那を殺して――」
「……さない」
「お? なんだ?」
リアムが立ち上がって男達を睨みつける。そのまま涙を流して激昂する。
「許さない……!! お兄ちゃんをよくも!」
(力と……記憶を……取り戻せ……私……)
「……! 今の……なに? う、魔王……記憶が……」
「リアム!? う、は、離して! あなた!」
「くっ……うう……」
娘の異常に気付いたフレスコが手を伸ばす。だが、引っ張られてそれができなかった。一方、カルドも盗賊に切り刻まれて膝をついていた。
「さて、とどめを刺しておこうか。後で恨まれても困るからな」
「う、うう……す、すまない……リカルド……フレスコ……」
農夫のカルドではやはり歯が立たずその場に崩れ落ちる。このまま妻と娘を連れされてしまうと悔し涙を流していた。
「おら、ガキ行くぞ」
「う、うう……」
「手こずらせるな! ぶたれたいか!」
盗賊はリアムに怒声を浴びせる。脅かして従わせようとしているのだ。
「おら、行くぞ」
「……!」
そしてリアムの手を盗賊が取った瞬間――
「……私に触るな、盗賊風情が!」
「な!? このガキ! ……うぐあ……」
「少しそこで待っているのね。すぐ片付けてあげる。……お兄ちゃん! <ハイキュア>!」
「う……リアム……?」
「「え……?」」
手を掴んだ盗賊がリアムに弾き飛ばされ、さらに回復魔法を使い兄の傷をあっという間に治した。
「な……!?」
「邪魔」
「がっ!?」
「お父さん、しっかり!」
「う、うう……リアム? いったいなにが……」
「ふふ、大丈夫だよお父さん! すぐに終わらせるね♪ ロイも危ないかもしれないいし」
父を助けたリアムは笑顔でそう言うと、ウインクしてから盗賊へ振り返る。
「それじゃ、お掃除の時間だね――」
「「……!?」」
リアムが真面目な顔になったかと思った瞬間――
◆ ◇ ◆
「父さん!」
「火の手が……! 母さんのところへ行くぞ!」
「うん! ……ああ、みんな!?」
盗賊が入り込んでからすぐにロイ達も戻って来た。そこは家屋に火矢が放たれ、いつもの景観がとんでもない地獄になっていた。
数人、知り合いが倒れているのが見えてロイは顔を覆う。ディアクも焦りを抑えつつ妻の下へと向かう。
「へっへ……こっちに来いよ!」
「いやあああ!」
「下衆が!」
「うぐあ……!?」
途中、連れ去られそうになっていた女性を助け、さらに家へ向かう。
こんなに遠かったかと錯覚していると、ちょうど自宅の前にロイの母、イオが居ることに気づく。
「イオ!」
「……! あなた、ロイ!」
「お母さん無事!」
「ああ、良かった……家の中に居ないと危ないじゃないか」
「え、ええ、そうなんだけどお隣が襲われて……」
イオが困惑しながらそう口にし、手にはフライパンがあった。お隣、と聞いてロイは視線を移す。
するとちょうどリカルドが刺され、リアムが泣き叫んでいるところだった。
「……! あ、あいつら……!! リアムとリカルド兄ちゃんを……!」
「おい、ロイよせ!」
ロイはリアムの泣き顔を見て完全にキレていた。
すると――
(奴等を……倒せる力……ある……)
「う、な、なんだ……!? ゆ、うしゃ……記憶が――」
「待つんだ! ……う!?」
「ひゃっはー! 獲物を見つけたぜ!」
不意に頭痛を起こすロイ。
そこへリアム達のところに居る盗賊とは別の者がロイに立ちふさがるように姿を現した。
(倒せ……俺の力は
「邪魔……するんじゃねえ! <フレイムボルト>!!」
「「え!? ロイ!?」」
いきなり息子が魔法を放つのを見て驚く両親。
あっという間に盗賊が炎に包まれる中、リアムを助けに走って行く。
「リアムぅぅぅ!!」
「ロイ……! ちょっと待ってねこいつを片付けるから!」
「なんだって!? へへ、なら俺も手伝う……ぜ!!」
「ガキ共が――」
そして、リアムの魔法とロイのダガーがヒットして盗賊はその場に崩れ落ちた。
「よし……これならいける。父さん、俺このまま行ってくるよ」
「行ってくるって……盗賊退治か!?」
「うん。今の俺ならできる」
「しかし……」
「おじさま、私も行くから大丈夫だよ! 魔法、使えるし! いこ、ロイ!」
「ああ!」
困惑する両親をよそに、ロイとリアムは手を繋いで駆け出していく。慌ててディアクが追いかけていくと、恐るべし光景を目にすることになった。
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