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20.学院と騎士達
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「あー、まあそんな感じで今日から学院生活が始まる。心してかかるように」
副院長のフィアームに連れていかれたアセーファが不貞腐れて戻って来た。
適当な話をしてホームルームを終わらせようとする。
そこでフィーシアがにこにこしながら手を上げて質問を投げかけた。
「せんせー。授業って基本的に先生がするんですか?」
「ん? いや、専門の教員が入れ替わりで来るぞ。わたしはあくまでも担任だ。ああ、そうだひとつ伝え忘れていたことがあったな」
「なんです?」
ゴルドが腕組みをしながら眉を顰める。
するとアセーファが白衣から手を出し、指を立ててから答えた。
「学院生活において部活動というものがある。剣術部や魔法研究会、演劇部といったものだな。無所属でも構わないけど、友人を作るならオススメだということだな」
「ふうん」
リアムがそう生返事をすると、アセーファがふふんと鼻を鳴らす。
「恋人を作る奴もいる。先輩後輩で、とかな。むふふ」
「……先生がそれ言っていいんですかね……」
「いいんだよミトラ君。先生だからこそだよ! それと平民の生徒が貴族の部活に入ってそのままなにかに雇用されるというパターンもある」
「おお」
そこで平民であろう生徒から声が上がる。
学院でいい成績を手に入れてデスクワークや危険の少ない仕事を選びたいからである。例えば貴族の庭師やメイドなどを将来に見据えている者が多いためだ。
『冒険者』という、雑務ばかりでその日暮らしになりやすく、危険な職はなるべくなりたくないと考えている。
「それは授業が終わってからですよね?」
「そうだね。まあ、選択肢の一つとして覚えていてくれということさ。勉強ばかりでは息苦しいのはわたしも学生の時に思っていたからねえ。後は、教員が顧問をしているから、授業の延長で顧問から部活を選ぶ奴もいるな」
アセーファは頷きながらそう言うと、今度はロイが手を上げてから質問をする。
「先生はなにか部活の顧問をやっているんですか?」
「わたしかい? ああ、もちろんだ。……面倒くさいけど薬学実験部という部活を顧問しているよ」
「今、面倒くさいって言いましたね!?」
「はっはっは、まあね! だけど部員も一人しかいないし、いい休憩室だよ。だから薬学研究部には入らないでくれ」
「なんて先生だ……」
ロイは呆れてため息を吐いた。
そのまま授業が始まるぞとダメ教員のアセーファは教室を後にした。
すぐに教室に喧騒が包まれ、先程の話に花を咲かせ始める。
「ロイ君はなにか入ってみる?」
その中でミトラも部活についてロイへ尋ねていた。すると逆サイドに座っているゴルドが口を開く。
「俺は剣術か魔法の部活だな! 宰相の後釜にになるのは確定として、能力は必要だ!
「いや、だったら勉学の方がいいんじゃないか? 宰相って国王様のフォローとかしなきゃならないんだし」
「う、うるさいぞ田舎者!」
「でもロイ君の言う通りだと思うよ? なんか戦術とか研究している部活とかないかなあ」
「あ、そういうの面白そう」
授業が始まるまでの間、各々部活の話で盛り上がる。
ゴルドが宰相の後釜なら武力より知力だろうといい、ミトラが意外なチョイスをし、フィーシアがのっていた。
「よーし、授業を始めるぞ! まずは自己紹介からだ――」
そしてロイやリアムの学院生活がスタートする――
◆ ◇ ◆
「いやあ、まいったぜホブゴブリンが出た時は訓練にならねえよってさ」
ロイ達の授業が始まったころ、昨日助けた騎士のアキサムが装備を身につけながら騎士仲間にそんな話をする。
そこで同じくロイ達に助けられたダグがアキサムへ声をかけた。
「先輩、結局あの二人の報告はしたんですかい?」
「グルダがしてくれているはずだ。なあ?」
「だな。ちょうどその件で今日、テリア学院長を陛下が呼んでいるぞ」
「なるほど……あれだけの強さがあればウチに欲しいもんなあ」
ダグが肩を竦めて言うと、他の騎士が訝しむように言う。
「そこまでなのか? まだ学院に入りたてのような少年と少女だろう?」
「俺だってそう思うけど、目の前でホブゴブリンを一撃で倒してたら疑う余地はねえって! 先輩も見ているしな」
「ま、そういうこった」
「見てみたいなあ」
騎士達の中でロイ達が話題になっていた。特に目の当たりにした三人は称賛していたりする。
「ほら、お前達。守るべき民に守られていては本末転倒だ。そうならないよう訓練をしっかりとな」
「はっ! 団長、おはようございます!」
「うむ。まあ、将来強い者は欲しいところではあるがな。……ホブゴブリン以外にも魔物が増えているようだ。未来はさておき、現在をなんとかしないと」
銀髪のイケメン騎士団長は困った顔で肩を竦めると騎士達を連れて訓練へと向かう。
「最近、冒険者だけで対応も難しいですもんねえ」
「ああ。我々も協力する必要がある。調査はしているが不明……現状維持が精いっぱいだからな」
「なんとかならないものですかねえ」
そんな話をしながら騎士達は訓練を開始する。その光景を上の階にある部屋から若く見える男性が見ていた。
「……それで私に話とはなにかな、テリア学院長」
「少し変わった生徒が学院へ入りまして、陛下――」
副院長のフィアームに連れていかれたアセーファが不貞腐れて戻って来た。
適当な話をしてホームルームを終わらせようとする。
そこでフィーシアがにこにこしながら手を上げて質問を投げかけた。
「せんせー。授業って基本的に先生がするんですか?」
「ん? いや、専門の教員が入れ替わりで来るぞ。わたしはあくまでも担任だ。ああ、そうだひとつ伝え忘れていたことがあったな」
「なんです?」
ゴルドが腕組みをしながら眉を顰める。
するとアセーファが白衣から手を出し、指を立ててから答えた。
「学院生活において部活動というものがある。剣術部や魔法研究会、演劇部といったものだな。無所属でも構わないけど、友人を作るならオススメだということだな」
「ふうん」
リアムがそう生返事をすると、アセーファがふふんと鼻を鳴らす。
「恋人を作る奴もいる。先輩後輩で、とかな。むふふ」
「……先生がそれ言っていいんですかね……」
「いいんだよミトラ君。先生だからこそだよ! それと平民の生徒が貴族の部活に入ってそのままなにかに雇用されるというパターンもある」
「おお」
そこで平民であろう生徒から声が上がる。
学院でいい成績を手に入れてデスクワークや危険の少ない仕事を選びたいからである。例えば貴族の庭師やメイドなどを将来に見据えている者が多いためだ。
『冒険者』という、雑務ばかりでその日暮らしになりやすく、危険な職はなるべくなりたくないと考えている。
「それは授業が終わってからですよね?」
「そうだね。まあ、選択肢の一つとして覚えていてくれということさ。勉強ばかりでは息苦しいのはわたしも学生の時に思っていたからねえ。後は、教員が顧問をしているから、授業の延長で顧問から部活を選ぶ奴もいるな」
アセーファは頷きながらそう言うと、今度はロイが手を上げてから質問をする。
「先生はなにか部活の顧問をやっているんですか?」
「わたしかい? ああ、もちろんだ。……面倒くさいけど薬学実験部という部活を顧問しているよ」
「今、面倒くさいって言いましたね!?」
「はっはっは、まあね! だけど部員も一人しかいないし、いい休憩室だよ。だから薬学研究部には入らないでくれ」
「なんて先生だ……」
ロイは呆れてため息を吐いた。
そのまま授業が始まるぞとダメ教員のアセーファは教室を後にした。
すぐに教室に喧騒が包まれ、先程の話に花を咲かせ始める。
「ロイ君はなにか入ってみる?」
その中でミトラも部活についてロイへ尋ねていた。すると逆サイドに座っているゴルドが口を開く。
「俺は剣術か魔法の部活だな! 宰相の後釜にになるのは確定として、能力は必要だ!
「いや、だったら勉学の方がいいんじゃないか? 宰相って国王様のフォローとかしなきゃならないんだし」
「う、うるさいぞ田舎者!」
「でもロイ君の言う通りだと思うよ? なんか戦術とか研究している部活とかないかなあ」
「あ、そういうの面白そう」
授業が始まるまでの間、各々部活の話で盛り上がる。
ゴルドが宰相の後釜なら武力より知力だろうといい、ミトラが意外なチョイスをし、フィーシアがのっていた。
「よーし、授業を始めるぞ! まずは自己紹介からだ――」
そしてロイやリアムの学院生活がスタートする――
◆ ◇ ◆
「いやあ、まいったぜホブゴブリンが出た時は訓練にならねえよってさ」
ロイ達の授業が始まったころ、昨日助けた騎士のアキサムが装備を身につけながら騎士仲間にそんな話をする。
そこで同じくロイ達に助けられたダグがアキサムへ声をかけた。
「先輩、結局あの二人の報告はしたんですかい?」
「グルダがしてくれているはずだ。なあ?」
「だな。ちょうどその件で今日、テリア学院長を陛下が呼んでいるぞ」
「なるほど……あれだけの強さがあればウチに欲しいもんなあ」
ダグが肩を竦めて言うと、他の騎士が訝しむように言う。
「そこまでなのか? まだ学院に入りたてのような少年と少女だろう?」
「俺だってそう思うけど、目の前でホブゴブリンを一撃で倒してたら疑う余地はねえって! 先輩も見ているしな」
「ま、そういうこった」
「見てみたいなあ」
騎士達の中でロイ達が話題になっていた。特に目の当たりにした三人は称賛していたりする。
「ほら、お前達。守るべき民に守られていては本末転倒だ。そうならないよう訓練をしっかりとな」
「はっ! 団長、おはようございます!」
「うむ。まあ、将来強い者は欲しいところではあるがな。……ホブゴブリン以外にも魔物が増えているようだ。未来はさておき、現在をなんとかしないと」
銀髪のイケメン騎士団長は困った顔で肩を竦めると騎士達を連れて訓練へと向かう。
「最近、冒険者だけで対応も難しいですもんねえ」
「ああ。我々も協力する必要がある。調査はしているが不明……現状維持が精いっぱいだからな」
「なんとかならないものですかねえ」
そんな話をしながら騎士達は訓練を開始する。その光景を上の階にある部屋から若く見える男性が見ていた。
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「少し変わった生徒が学院へ入りまして、陛下――」
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