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22.記憶から呼び起こす
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「まったく……じいやったら」
「いいじゃない、ご両親が心配してるから偵察に来たみたいだったし」
「それも恥ずかしいじゃない?」
注目を浴びながら教室で豪華なランチを食べたフィーシアが、撤収した使用人たちに口を尖らせていた。
しかし、じいやと呼ばれていた執事が食事中、ロイやリアム、ミトラに『お友達がもう出来たのですね、旦那様と奥様が喜びますな』などと言っていたのだ。
それでリアムがフィーシアへ笑いながらいいご両親だと口にしていた。
「ふん、ウチのコックならもっと――」
「フィーシア様やっぱりすごいね!」
「一緒の教室でいいのかしら? 私、平民なんですけど」
「わあ!?」
「うお!?」
ゴルドがふふんと鼻を鳴らしてフィーシアに対抗しようとしたが、女生徒が席に集まって来て阻まれていた。
貴族のお嬢様ということで遠巻きで見られていたが、照れたりするところを見て親近感が湧いたようである。
「あはは、ウチの両親は心配性なのよねー。ま、帰ったら色々言っておくわ! さて、次は剣術の授業だから着替えて外へ行くわよ」
「あ、そうですね!」
「お着替えに行きましょう」
「じゃあ後でねロイ、ミトラ。リアムもいきましょ」
「おう」
「ええ」
女生徒に囲まれたまま、リアムとフィーシアは着替えを持って更衣室へと向かって行った。
残された男子生徒はこのまま教室で着替えることになる。
「くそ……平民女達め……このゴルド様を無視するとはいい度胸だ……!」
「いや、貴族とか平民とか関係ないって言ってたじゃないか」
「……ふん、そうは言っても身分はあるからおいそれと変わらないもんじゃないか? じゃあ、学院の外で会ったらうやうやしくするというのか?」
「人によるかもな?」
「うーん、僕もロイ君と同じかな?」
ゴルドの持論にロイが上着を脱ぎながらあっさり返すと、ミトラも小さく頷きなロイに乗っかった。見ればゴルドよりは下だが、やはり貴族の男子生徒も肯定していた。
「なんだと!?」
「まあ落ち着けって。俺は平民で村人だからなんとも言えないけど、友達になっていたら貴族と平民とはいえ、外でも普通にするんじゃないか?」
「うん。僕は一応、貴族だけどロイ君と外で会っても多分偉そうにしないよ? 多分、貴族の態度次第だと思う」
「そうそう、ミトラ君の言う通りだ」
「ぐぬう……」
ロイだけなら反論をするつもりだったが、貴族組にも窘められてゴルドは顔をしかめて黙り込んだ。
「村人め、覚えていろ……!」
「なにをだよ!?」
さっさと着替えてゴルドは外に出て行った。何故かロイへ捨て台詞を吐いて。
それを見ていたクラスメイトが首を傾げて口を開く。
「なんでゴルドはロイを目の仇にしているんだろうな……?」
「ちょっとひと悶着あったんだよ。大したことじゃないからその内冷静になると思うけど」
「ふうん? ま、ロイは頭がいいみたいだから、ゴルドじゃ勝てないだろうなあ」
「剣と魔法もいけるんだっけ?」
「まあ、それなりに」
クラスメイト達は授業中のロイが難問を正解していくのを見て、ゴルドの言う田舎者から尊敬できるクラスメイトに昇格していた。
まだまだ十三歳という若さなので、すぐに切り替わるのは子供の良いところである。
クラスメイト達は運動着へ着替えて外へ行く。ロイとミトラもそれに続く。
「ゴルドも考え方を変えたらいいのになあ」
「ええ、嫌なことを言われているのにロイ君」
「ゆう……いや、貴族も色々居て、ああいう態度の人間も知っているからさ。で、だいたいロクな目に遭わないんだ」
「性格のせいで、ってこと……? 僕と同い年なのに達観しすぎてない……?」
「あ、あー、まあ村人は苦労が多いってことだな」
ミトラがびっくりした顔でロイの意見を聞いていた。ちょっと踏み込みすぎたかとロイは視線を逸らして頬を掻いていた。
そのまま歩いていき、グラウンドへ出るとバラバラと着替えを終えた女子生徒も集まり始めていた。
「やっほ、ロイ♪」
「ああ、フィーシア……って、おお……」
「なに?」
そこへフィーシアが声をかけてきて、ロイが片手を上げて口を開く。が、とある一点に視線が行き口ごもっていた。
「ふん」
「いてえ!? なにしやがるリアム!?」
「自分の胸に聞いてみれば?」
「胸……」
リアムに尻を叩かれて飛び上がったロイに、そう言うリアム。すると再び視線がとある一点に向き、喉を鳴らす。
「?」
「ごくり……」
「成敗!」
「っと、何度も食らうかよ!」
相当数の戦いを経ているので、リアムの攻撃は見切っている。もちろん逆もまたしかりだが、ロイが反撃をすることはなかった。
「チィ……相変わらず素早い……」
「悔しかったらお前も大きくなれよー」
「うるさい!」
ロイはリアムにそう言いながらグラウンドへ向かった。ミトラが追いついてきて彼女を見ながら口を開いた。
「いいの? お隣さんなんでしょ?」
「……いいんだよ。俺達は喧嘩しているからな」
「ええー?」
よく分からないといった感じで顔を見比べてミトラは困惑していた。
「よーし集まれー」
「ま、俺達のことはいいんだ。行こうぜ」
「う、うん」
納得がいかないが、教員が声をかけてきたのでミトラは仕方なくロイについていった。
「いいじゃない、ご両親が心配してるから偵察に来たみたいだったし」
「それも恥ずかしいじゃない?」
注目を浴びながら教室で豪華なランチを食べたフィーシアが、撤収した使用人たちに口を尖らせていた。
しかし、じいやと呼ばれていた執事が食事中、ロイやリアム、ミトラに『お友達がもう出来たのですね、旦那様と奥様が喜びますな』などと言っていたのだ。
それでリアムがフィーシアへ笑いながらいいご両親だと口にしていた。
「ふん、ウチのコックならもっと――」
「フィーシア様やっぱりすごいね!」
「一緒の教室でいいのかしら? 私、平民なんですけど」
「わあ!?」
「うお!?」
ゴルドがふふんと鼻を鳴らしてフィーシアに対抗しようとしたが、女生徒が席に集まって来て阻まれていた。
貴族のお嬢様ということで遠巻きで見られていたが、照れたりするところを見て親近感が湧いたようである。
「あはは、ウチの両親は心配性なのよねー。ま、帰ったら色々言っておくわ! さて、次は剣術の授業だから着替えて外へ行くわよ」
「あ、そうですね!」
「お着替えに行きましょう」
「じゃあ後でねロイ、ミトラ。リアムもいきましょ」
「おう」
「ええ」
女生徒に囲まれたまま、リアムとフィーシアは着替えを持って更衣室へと向かって行った。
残された男子生徒はこのまま教室で着替えることになる。
「くそ……平民女達め……このゴルド様を無視するとはいい度胸だ……!」
「いや、貴族とか平民とか関係ないって言ってたじゃないか」
「……ふん、そうは言っても身分はあるからおいそれと変わらないもんじゃないか? じゃあ、学院の外で会ったらうやうやしくするというのか?」
「人によるかもな?」
「うーん、僕もロイ君と同じかな?」
ゴルドの持論にロイが上着を脱ぎながらあっさり返すと、ミトラも小さく頷きなロイに乗っかった。見ればゴルドよりは下だが、やはり貴族の男子生徒も肯定していた。
「なんだと!?」
「まあ落ち着けって。俺は平民で村人だからなんとも言えないけど、友達になっていたら貴族と平民とはいえ、外でも普通にするんじゃないか?」
「うん。僕は一応、貴族だけどロイ君と外で会っても多分偉そうにしないよ? 多分、貴族の態度次第だと思う」
「そうそう、ミトラ君の言う通りだ」
「ぐぬう……」
ロイだけなら反論をするつもりだったが、貴族組にも窘められてゴルドは顔をしかめて黙り込んだ。
「村人め、覚えていろ……!」
「なにをだよ!?」
さっさと着替えてゴルドは外に出て行った。何故かロイへ捨て台詞を吐いて。
それを見ていたクラスメイトが首を傾げて口を開く。
「なんでゴルドはロイを目の仇にしているんだろうな……?」
「ちょっとひと悶着あったんだよ。大したことじゃないからその内冷静になると思うけど」
「ふうん? ま、ロイは頭がいいみたいだから、ゴルドじゃ勝てないだろうなあ」
「剣と魔法もいけるんだっけ?」
「まあ、それなりに」
クラスメイト達は授業中のロイが難問を正解していくのを見て、ゴルドの言う田舎者から尊敬できるクラスメイトに昇格していた。
まだまだ十三歳という若さなので、すぐに切り替わるのは子供の良いところである。
クラスメイト達は運動着へ着替えて外へ行く。ロイとミトラもそれに続く。
「ゴルドも考え方を変えたらいいのになあ」
「ええ、嫌なことを言われているのにロイ君」
「ゆう……いや、貴族も色々居て、ああいう態度の人間も知っているからさ。で、だいたいロクな目に遭わないんだ」
「性格のせいで、ってこと……? 僕と同い年なのに達観しすぎてない……?」
「あ、あー、まあ村人は苦労が多いってことだな」
ミトラがびっくりした顔でロイの意見を聞いていた。ちょっと踏み込みすぎたかとロイは視線を逸らして頬を掻いていた。
そのまま歩いていき、グラウンドへ出るとバラバラと着替えを終えた女子生徒も集まり始めていた。
「やっほ、ロイ♪」
「ああ、フィーシア……って、おお……」
「なに?」
そこへフィーシアが声をかけてきて、ロイが片手を上げて口を開く。が、とある一点に視線が行き口ごもっていた。
「ふん」
「いてえ!? なにしやがるリアム!?」
「自分の胸に聞いてみれば?」
「胸……」
リアムに尻を叩かれて飛び上がったロイに、そう言うリアム。すると再び視線がとある一点に向き、喉を鳴らす。
「?」
「ごくり……」
「成敗!」
「っと、何度も食らうかよ!」
相当数の戦いを経ているので、リアムの攻撃は見切っている。もちろん逆もまたしかりだが、ロイが反撃をすることはなかった。
「チィ……相変わらず素早い……」
「悔しかったらお前も大きくなれよー」
「うるさい!」
ロイはリアムにそう言いながらグラウンドへ向かった。ミトラが追いついてきて彼女を見ながら口を開いた。
「いいの? お隣さんなんでしょ?」
「……いいんだよ。俺達は喧嘩しているからな」
「ええー?」
よく分からないといった感じで顔を見比べてミトラは困惑していた。
「よーし集まれー」
「ま、俺達のことはいいんだ。行こうぜ」
「う、うん」
納得がいかないが、教員が声をかけてきたのでミトラは仕方なくロイについていった。
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