魔兵機士ヴァイスグリード

八神 凪

文字の大きさ
32 / 146
第一章

第31話 疑惑

しおりを挟む

「師匠、布はどれくらい必要?」
「結構必要じゃな。大きさは子供二人分くらいの幅のを穴に被せるつもりらしい」
「オッケー」
「あ! またシャルル様は仕事を! ここは我々がやりますから休んでいてください!」
「えー、国を取り戻すまでみんなと同じじゃない?」
「姫様は姫様です! レッツェ様が居たらそう言いますよ」
「確かにいいそうじゃのう。まあ、長旅じゃったから休んでおくのもいいじゃろ」

 むう。
 神経質な大臣の名前が出てあたしは仕方ないと、騎士と師匠からそそくさと離れていく。
 お姉さまとわたしは宿の一番いいところを使わせてもらえるようになったけど、みんなが働いているのに黙ってのんびりなんてできるわけがないわよね。
 ……とはいえ、騎士に見つかるとうるさいし、町の人もあたしを認識しているからなかなか手伝わせてもらえないのよね。

 子供と女性たちがやっている布の用意くらいはいいかと思ったんだけどダメだった。

「リクのところに……って言ったらあいつ怒りそうだしなあ」

 ヴァイスという魔兵機《ゾルダート》に似た巨人と融合してしまったという異世界の人間、リク。
 コクピットという操縦席になにか液体の入った筒のようなものがあり、その中に本来の姿が入っていた。

 右半身が抉れてちょっと肉とかはみ出ていて気持ち悪かったわね……。
 だけど顔は結構良かった。素直に言うと好みだった。
 そんな人が助けてくれたんだからカッコいいと思うのは当然だったりする。

「まあ、会って数日だし顔以外はよくわかんないけどさ。でもいい奴よねリクは」

 外壁の向こうで頭が見え隠れしているヴァイスを見ながらそう思う。自分のことよりあたし達の心配ばかりしている気がする。

「なんとか治療してあげたいわね。借りは返さないと気が済まないし」

 エリクシールとかいう伝説の薬みたいなのがあればだけど、サクヤが言うにはこのままでもいつかは治るらしい。
 今の方が役に立つとリクが言っていたけどそれはそう。でも彼一人に任せっぱなしも良くないと思う。

「対抗するには同じものがないと無理よねえ」

 そんなことを考えていたからか、町の比較的広い場所に置いてある魔兵機《ゾルダート》のところへ足が向いていた。
 ちなみにリクが抱えて入れて置いたという無茶ぶりだ。

「シャルル様、どうなさいましたか?」
「いやあ、戦いになったら魔兵機《ゾルダート》は来るわけだからさ、これ使えないかなって」
「……!? 馬鹿なことを言いなさんな!? 使えたとしても他のものが乗ります! 王女に危ない役目をさせるわけないでしょう……」
「リクも戦っているのに」
「彼には感謝していますが、それとは話が違います!」

 ダメかあ。
 せめて操縦方法だけでも覚えておけばいざという時に使えそうだけど。

「ね、グライアードの人。あたしに操縦方法を教えてよ」
「……そんなことができるわけないだろう」
「殺さないでいてくれるのはありがたいが、それとは話が別だ」
「ぐぬ……。なら、なんでエトワール王国を攻めて来たのよ」
「「……」」

 二人の騎士は質問には答えなかった。
 ただ、分かるのは『殺せ』とは言わないこと。この場合、意味合いがいくつかあって、必ず助けにくることを考えている。もしくはこの状況が理不尽だと思っているとかね。
 前者が有力だけど、どうも連行している間から大人しいので気になってはいる。

「まったく。平民を巻き込んでくれちゃってさ。町も襲うし、それでも騎士なの?」
「……! それは! 命令だから……! 騎士は命令には――」
「よせ、ヘッジ。この結果が全てだ」
「しかし、ビッダー……」

 ふうん。仕方なくって感じ? これはますます理由を聞きたいわね。
 そう思いながら二人を見ていると、後ろから声がかかった。

「王女様ごきげんよう!」
「あら、ソウの町から一緒に来た冒険者じゃない」
「覚えていてくれたとは光栄です。いえ、こっちへ来るのが見えたのでついてきたんですよ」
「そうなの? まあ、情報は得られなかったから戻るけどね」
「あら、そいつは残念だ」

 声をかけてきたのは三人の冒険者だった。特に用があるというわけではなく、グライアードの騎士に文句を言いにきただけみたい。

「……こいつらのおかげで俺達はこんな目にあったんだ。一発くらい殴ってもいいだろ?」
「ダメだ。確かに悔しいが、そんなことをすればこいつらと同じになってしまう。法で裁かなければならない」
「チッ、固いこと言わないでくれよ」
「はいはい、ダメだって言われたら諦める! これでもあたしは王女だからね。そういうのは見過ごせないわ」

 詰め寄る冒険者とウチの騎士の間に割って入り、諫めることにした。

「確かにこいつらは仇だけど、指揮をしているのは国でしょ? そっちに喧嘩を売るべきだと思わない?」
「それは……」
「あたしは諦めていないわ。リクも居るし、こいつらを盾にしていつかグライアードに攻め込むわ」
「「盾にするな……!?」」

 ヘッジとビッダーの二人が焦りながら口を開く。まあまあ悪くない反応だわね。
 魔兵機《ゾルダート》をなんとかこっちも作れればいいんだけどなあ。

「さあさ、他の人達の手伝いでもしてよね。あたしは手伝ったら怒られる……ってあなた、どこを見ているの?」
「へ!? あ、ああ、いやあのデカブツかっこいいなってよ。行こうぜ、こいつらを殴れないんじゃ意味がねえ」
「……そうだな」
「はいはい行った行った!」
「シャルル様、それはちょっと……王女としてどうかと」
「そういうのはいいって。今はガエイン師匠の弟子、剣士シャルルよ」

 お小言にそういって笑うと騎士がため息を吐いていた。ヘッジとビッダーの二人は呆れたような顔を向けてくる。するとヘッジの方が口を開く。

「……我々にもよくわからんのだ。確かに魔兵機《ゾルダート》を作れと言ったのは陛下だ。しかし国を守るために使うという話だった……にも関わらずことを起こした……」
「命令をしていたのは国王じゃないの?」
「だからわからないんだよ。俺達ゃ末端の騎士だ。行けと言われれば行くだけだからな。喋り過ぎたなあヘッジ。寝ようぜ」

 それだけ言ってビッダーは腕を縛られたまま寝転がった。ヘッジの方も目を瞑ってこれ以上は話すつもりがないといった感じだ。
 なんだか複雑? でも命令を下すのはウチだとお父さんだしそうじゃないのかしら?

「できたぞー! でかい兄ちゃんに持って行ってやろうぜ!」
「おー!」

 そんなことを考えていると大きな布を抱えた子供たちが走り抜けていく。どうやらリクに渡しに行くらしい。

「……」

 するとその光景をヘッジとビッダーが口をへの字にしてみていた。よく分からないけど、今はできることをしようか。
 そう思いあたしは子供たちのところへ駆けるのだった――

◆ ◇ ◆

「……いけるか?」
「さあな。王女は連れていけたら行く。グライアードの騎士に見張りが少ないのは助かるな。あいつらを助けたら魔兵機《ゾルダート》とやらに乗り込んでグライアードの部隊に合流だ。そのまま逃がしてもらう」
「それでいいな。チャンスは少ない、戦闘が始まるまで近くで待つぞ」

 ――三人の冒険者はシャルルと話した後、脱出計画を練っていた。それぞれの思惑が交差するまであと数時間。
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...