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第五章:スヴェン公国都市
その72 都合がいい展開?
しおりを挟む「なんで町中でウッドゴーレムなんか出てくるんだよ! あ、すみません!」
奴隷商の店から出て僕はウッドゴーレムに向かって走る。町には悲鳴が飛び交い、ウッドゴーレムから逃げる人たちにぶつかりながら進むと、途中でバス子と合流できた。
「ソレイユさん、こっちですよこっちー! 大きな音がしたと思ってトイレからでるとあんなのが出てきてびっくりですよ」
「いいからズボンを履いて! 見えてるから!」
「おっと、慌てて出てきたから……よっと……というか、えっへっへ、見ましたね?」
「今のは不可抗力でしょ、今は女の子同士なんだから問題なし!」
バス子の色気のないパンツを見たところでどうってことは無いからね。そう思っていると、バス子が心外そうに腕組みをして呟く。
「うーん。あれだけ誘っているのにどうしてわたしにはそういう気持ちにならないんですかね?」
「誘ってたのあれで!? もういいからアレを倒すよ!」
「へいへーい」
「あいつ、僕の冒険者試験の時に出てきたやつと同じだ。それほど強くないから一気に叩くよ」
「ですねえ。あ、でも他の冒険者が迎撃に出てるみたいですよ」
ウッドゴーレムは出現していて建物を殴りながら少しずつ移動していた。そしてバス子が言う通り冒険者達がすでに攻撃を始めていた。
「僕達も行くよ」
「腕がなりますねえ。アレを倒したら報奨金出ますかね!」
しかし、横から僕を止める声が聞こえてきた。
「ソレイユ、止めなさい!」
「ルビィ!? どうして止めるのさ、このままじゃ町が壊されるよ」
「ダメですよ、ここは我慢です」
さらにエリィも合流しそんなことを言う。
「ええー、いつもの二人らしくないよ!」
僕がげんなりすると、ルビアが言い聞かせるように僕の頬を引っ張りながら笑顔で答えた。
「今のあたし達は聖職でもなんでもない一般人なのよ? あんたみたいによくわからない魔法をぶっ放して一撃で破壊したら目立っちゃうで・しょ・う・が!」
「いひゃい!? いひゃいよ!」
「それに見てください、アホが居ますよ」
「ふえ……?」
頬をさすりながらエリィの目線の先を見ると、
「俺が前へ出る、援護を頼むぞ」
「レオバールゥ……」
厄介な人物が戦闘で剣を振り回していた。
「ああ、僕パス。町の人には悪いけど顔を合わせたくない」
「ま、どっちにしても目立てないから傍観するしかないわね。実力はあるからアホに任せておけばいいでしょ」
「あー確かにそうですねえ。というかもしかしてこれってわたし達を燻り出すための罠だったりしますかね? セーレが仕掛けたとか?」
「可能性は高いですね」
「だとしたら嫌らしいね」
「いやらしいのはソレイユさんじゃありませんか? さっきもわたしのパンツを見て――」
「こらー!?」
「?」
エリィが首を傾げてバス子の口を塞ぐ僕を見るので、話題を無理やり変える。
「くっ、家屋が破壊されている。こんな時に何もできないなんて……!」
「ええ。でもギルドも無能じゃありませんよ、ほら!」
見ると数人の魔法使いがウッドゴーレムへ炎魔法を放ち、全身が燃え上がっていた。怯むウッドゴーレムへ、近接の冒険者たちが足を切り裂こうと群がっていく。
「コアを壊さないといけないからなぎ倒してからだろうね」
「城までおびき寄せたほうがいい気がしますけどねえ」
確かにバス子が言う通り被害が広がるよりは、と思う。すると次の瞬間とんでもないことが起きた。
「あ! ウッドゴーレムが逃げ出しましたよ!」
エリィが指さすと、斬撃で傷つき、炎の魔法で燃やされ、矢が突き刺さっているウッドゴーレムが移動を始めたのだ。なんと城に向かって!
「え、あれって逃げるの? 命令されたらその通り忠実に動くもんじゃないの?」
ルビアが驚いていると、エリィが声をあげる。
「あ! ああ……。あー!? ああー」
口に手を当てて「あー」しか言ってないけど、背後から冒険者の攻撃でボロボロになっていくウッドゴーレムがガクガクと震えだし、城へ辿り着く間もなく時計塔へ倒れこんだ。
ズゥゥゥゥン……
「や、やった! ってあれ? もしかしてこれってチャンスじゃない? 騒ぎに乗じて時計塔へ入れないかな」
「後片付けに乗じて、か。それはいいわね。でも、ベルとレジナさんは?」
「えっへっへ、そういうことならわたしが残りますよ。お三方の方が実力が高いですから少ない方がいいでしょ?」
「そうですか? では、バス子ちゃんにお任せしますね」
「ええ、ええ、任せてください」
うんうんと頷くバス子見て、僕とエリィ、ルビアは顔を見合わせて頷き、次の瞬間駆けだして行った。
「えっへっへ、頑張ってくださいよー」
◆ ◇ ◆
「どう?」
「集まってるわね、冒険者。ギルドマスターも居るわよ」
時計塔近くになる建物の影から様子を伺うと、ウッドゴーレムは時計塔に倒れこむように動かなくなっていて、コアがある付近で、昨日僕とぶつかった人物が槍を抜く場面に出くわした。
僕達は気配を消す魔法やスキルは持っていないのでこそっと入ることになるけど、まだ昼前なのでこのままでは見つかってしまう。
「もう少し待ちますか?」
「それだと騎士を配備されてもっと面倒になるよ。一人が注意を引き付けて残りで入るとか――」
僕が提案していると、背後からのんきそうな声がかかる。
「時計塔に入りたいの?」
「そうなんだ。でも警備がって、うわあ!?」
「あ、あんた……フェ……フェ……フェックション!」
ルビアが僕の後ろに回り指を突きつける。確かフェイ、だったっけ?
「あはは、くしゃみじゃないよ? フェイだよ。で、時計塔に入りたいの?」
「う、そ、そうだけどあんたには関係ないでしょ」
「だったら俺が手伝ってやるよ。君達も付いてきてくれ」
「あ、ちょっと!」
フェイがルビアの手を引き、時計塔へ向かい、僕達も慌ててそちらへ向かう。フェイは鼻歌交じりでルビアの手を引き時計塔へ歩き、ギルドマスターのハダスさんの近くを通りかかる。
「ん!」
エリィが目を瞑って見つからないように祈っているのが可愛いと思ってしまう。他の手をどうしようか考えていると――
スッ……
「え? あれ?」
フェイとルビアの姿が薄くなり、見えなくなる。横にいたエリィを見ると、段々薄くなっていき、エリィも驚いた顔で僕を見ていたけどやがてフッと消えた。そのままウッドゴーレムが破壊した時計塔の壁を乗り越えて中へと入ることができた。
「どうなってるんだろ?」
「あ、そこに居るんですね? ひゃん!?」
「今柔らかいものが……」
「知りません! それより二人はどこでしょうか?」
時計塔の中はひんやりしていて、外の喧噪が遠い世界のように聞こえてくる。エリィが呟くと少し前からルビアの声が聞こえてくる。
「どこ触ってるのよ!」
「ルビィ、そこにいるの?」
ふよん
「また柔らかいもの――痛ぁ!?」
「あ、ソレイユだったの? ごめん!」
そう言うと僕達の姿がスゥっと出てきて、ルビアの後ろでフェイが腹を抱えて笑っていた。
「あははは! 面白いね君達! さ、それじゃ行こうか?」
「え? 行くって、付いてくる気ですか!?」
「もちろん! 何か面白そうだしね。ほら行こう」
「ちょっと手を繋がなくてもいいでしょ!」
「(……何者、ですかね?)」
「(怪しさ大爆発だよね……注意しておこう)」
フェイの動向を気にしつつ、僕達は時計塔の探索を始めるのだった。
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