147 / 196
第七章:動き出す予兆
その140 王妃様のお願い
しおりを挟む「――ということだった」
「ふえぇ……」
「だ、大魔王が異世界の住人だったなんて……」
喫茶店でケーキを頬張りながらメディナが黄泉の丘での顛末をあたし達に説明してくれ、アニスとクロウが本気で驚いていた。
「このタイミングで旅の男が繋がってくるなんて、出来の悪い物語みたいね。で、バス子は仲間のところへ戻ったんだ」
「うん。バスの一番偉い人物は蘇る可能性が少なくなった」
「それで旅の男を探すことにしたんですね。ルビアさん、王妃様が各国に旅の男に注意するように通達するって言ってましたけど、大魔王の件も明らかにしておいた方がいいんじゃ?」
「そうね。レオスと合流してからが良かったけど、書状が出来る前に言っておかないといけないわ。それを食べたら戻るわよ」
「ん」
「ゆっくり食べてね、メディナさん」
高速で咀嚼をするメディナにあきれ顔をしながらアニスが言う。メディナの咀嚼がゆっくりになったところで、あたしに尋ねてきた。
「ところでその卵、なに?」
「ああ、これ? ちょっと前に子狼を誘拐して売り飛ばそうとしたやつがこの町に居たのよ。そいつを見逃す代わりに売ってもらったってわけ」
「ルビアは優しい。そんなやつのめして奪えば良かった」
「うーん、何かお金に困ってそうだったからお金を渡せば犯罪はしなくなるかなって思ったのよ」
「そう。時に優しさは仇となるから、注意。そしてドラゴンはまだ食べたことないから楽しみ」
「食べないわよ!?」
よだれを垂らすメディナから卵を背中に隠し、あたし達は再び城へと向かう。途中、ネックスやフェネクとすれ違い、後でギルドに来るようにと声をかけられた。
「拳聖のルビアよ。申し訳ないけど、もう一度王妃様と話がしたいわ」
門番へそう告げると、城の中へ伝達をしてくれ、あっさりと再度の面通しをすることができた。
「ルビア様、先ほどはどうもありがとうございました。それで、どうかなさいましたか?」
「お忙しいところ申し訳ありません。実は――」
バス子達悪魔のことは伏せ、大魔王の件と旅の男について王妃様へと伝える。
「異世界……そんなことが有り得るのですか……」
「しかし、事実です。そこで、書状を各国へ回す際、大魔王のことを書いてもらえますか? 彼は確かに公国を滅ぼし、旅の男を探すために世を混乱に陥れました。……結局あたし達が倒しましたが、本来であれば手を取り合える人物だった。アスル公国の国王の犠牲者でもあると」
「どこまで理解が得られるかはわかりませんが、約束しましょう」
王妃様が微笑みながら頷き、あたしも頷き返す。続けて王妃様が口を開く。
「お話は以上でしょうか? ルビア様はこの後どうなされるのですか? やはり旅の男を探しに?」
「いえ、あたしは明日、仲間と合流してラーヴァ国へ向かいます」
「ラーヴァへ?」
「はい。元々、そういう旅だったのです。途中、紆余曲折を得てこんなことになっていますけどね」
あたしが肩を竦めて返すと、王妃様は少し考えた後、
「……ルビア様、お願いがあるのですが」
「え? あ、はい。なんでしょうか?」
「ラーヴァ国へ送る書状ですが、ルビア様にお願いしてもよろしいでしょうか?」
……こういう話をした後にラーヴァへ行くと告げたので、話がくる可能性はあるだろうと思っていたから驚きはない。だから後はあたしがどう答えるか? それだけである。
受けない、という選択肢が一番いいだろう。余計なことに首を突っ込む必要はないのだから。しかし、旅の男という共通の敵を探すなら国に協力をし、協力を仰ぐのが手っ取り早い。
メディナの話。いえ、エリィの案ではギルド経由で『探してもらう』ということだったので、あたし達が探すことに、レオスが懸念を抱かないかが心配ではある。
が、
「……その依頼、受けます」
と、あたしは承諾する。
「いいんですか? レオスさんに相談もなしで」
クロウが鋭いことを言ってくるが、あたしは頷いてから返事をする。
「書状を出すのは早い方がいいでしょ? どうせラーヴァには行くんだし。レオスが嫌だって言ったら別行動するわよ」
「構わない。でもそれでいいか?」
「いいわよ。いざとなればあたしだけでも国に協力すればいいから。故郷に帰ったらレオスとエリィ、ベルにはゆっくりしてもらいましょ」
「わかった」
メディナも頷いて了承し、この話はこれで終わる。王妃様が即座に書状を用意し、あたしに手渡してくる。
「ではお願いしますね。聖職が手伝ってくれれば少しは安心できます。魔聖も手伝ってほしいものですが……」
そう嘆きながら、王妃様は見送ってくれた。旅の男は国王の病気の呪いのことで早く見つけたいのだと思う。それ故に精力的に働きかけているのだ。
「さて、それじゃ今日のところは帰って休みましょうか」
「え!? ギルドはいかないのおねえちゃん?」
「ま、明日でもいいでしょ? 疲れたから寝たいわ……」
「自由だなあ……」
そして、翌日――
「ああ、ちゃんといたよ! トマトパスタを食べている時に急に体が光り出したから驚いたよ、僕」
「その瞬間、お皿のパスタを全部口に入れるあたりメディナさんというかなんというか……」
「ふふ、無事でよかったわ。ルビア、そっちはどうだった?」
あたし達は予定通り、レオス達と合流を果たしていた。黄泉の丘でのことはメディナに聞いたけど、まさかエリィが前世でレオスの恋人だったとは……。
言われてみればレオスのエリィに対する態度は大幅に変わった気がする。以前はレオスがなるべくエリィから離れようとしていたけど、今は凄く距離が近い。
「色々あったけど、旅の男に関して――」
「やっぱり鍵は旅の男か……タイミングが良すぎる気がするけど……」
「そうね。でも、手がかりが少しでもあればチャンスはあるじゃない」
「そうだね。ありがとうルビア、別行動は思ったよりも収穫があったよ」
「どうしたしまして。さ、それじゃギルドへ行きましょう!」
「あはは。ルビアさん張り切ってるわね」
と、ベルに言われたけど、なんだか大人びて見えるエリィと、レオスとの関係にあたしはあの大人のレオスを思い浮かべ、少しだけ嫉妬するのであった――
◆ ◇ ◆
【あとがき劇場】
というわけでルビア視点はこれにて終了です! 次回からレオス視点へと戻ります。
他キャラ視点はどうだったでしょうか?
もう一人、予定していますので、ご感想などお待ちしております!
0
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる