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第百七十八話 人が増えるとよくあるというもの

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 ――寿命。

 生物には当然ある終わりの時。僕はヴァンパイアハーフで人間より長いらしい。
 父さんや兄ちゃんズのように普通の人間でも健康や不慮の事故が無ければだいたい七十年は生きるものだ。
 
 だけど動物は違う。

 長くても人間よりは短いのだ。だからいっぱい子供を産むのである。
 ニワトリのジェニファーは頑張って十五年、馬は確か三十年くらいじゃなかったっけ? 牛は飼っていないけど十年とかだった気がする。

 なにが言いたいかというと、僕が大人になる前に一羽と一匹と一頭は確実に寿命を迎えるということだ。
 さらに言うならハリヤーは僕が生まれる前から存在している。もしかして結構な歳なんじゃないかと思ったのだ。

「父さんと母さんに聞いてみよう! ラースさんー!」
【まあ死んでもアンデッド化するだろうし大丈夫じゃないか?】
「でもやり方が分からないだろ? お年寄りなら無理もさせられないじゃないか」
【なるほどな。ウルカは優しいなあ】

 フォルテの背に乗って村を駆けまわる。ラースさんの転移魔法で一旦自宅へ戻りたいからだ。

「わんわん!」
「こっちか!」
「クルルルル!」

 ダッシュをかけるシルヴァとフォルテ。この二頭は少なくとも五十年は生きるんじゃないかとゼオラは言う。魔物長生きだなあ。
 そして町の測量をしているラースさんとボルカノを発見した。

「ラースさーん!」
「ん? ウルカ君じゃないか。どうしたんだい?」
「それがかくかくしかじかで実家に戻りたいんだけど、いいかな?」
「まあ大丈夫だけど、あの距離だと魔力消費が激しいから向こうで一泊は確実に必要だな」
「急ぎじゃないけど、どうせやることも無いからと思ったんだけど……」

 今すぐ死ぬなんてことはないと思うけど心配だしね。するとラースさんは頭を掻きながら悩む素振りを見せた。

「いや、そうしたいのはやまやまなんだけど、実はそろそろ人が来るかもしれないんだ」
「人が? 移住者ですか?」
「あれだよ。噴水の像。彫刻家を呼んだんだ」
「あ、本当に呼んでくれたんだ」

 それとなく転移して王都に戻り、話をしてくれたそうなのだ。で、約束していた時期がこの辺りらしく応対はしたいとのこと。

「そっかぁ……」
【ならラースよ、ウルカに転移魔法を教えたらどうだ? その内やる予定だったろ】
「ああ、それはいいかもしれないな。最初のプログラムを覚えたら後は難しくないと思うし」
【魔力量は恐らくお前より多いから早いかもしれないぞ。クリエイトも早かったし】
「そうだな、じゃあやってみるか」
【ここは任せてもらって構わないぞ】
「ボルカノ、そのヘルメットお気に入りだねえ」

 ラースさんが僕のために時間を割いてくれるとのこと。そこでボルカノが頼もしいこと言い、騎士さんも問題ないと言ってくれた。とりあえずボルカノのヘルメット姿は面白い。
 ちなみに安全面を考慮して土木工事系の仕事をする人には配っている。それこそ木を加工して中に綿を詰めればいいだけなのでお手軽だ。

「よし、それじゃ広場で――」

 と、歩き出した瞬間、見慣れない人達が馬車に乗ってやってきた。周りには冒険者らしき人もいる。

「おお、見つけたぞ! ラース殿、やってきましたぞ!」
「あれ!?」

 荷台から顔を出し、長い顎髭を生やしたお爺さんが大きな声でラースさんに笑いかけていた。しかし当のラースさんは困惑気味だ。

「えっと、どちらさまですか?」
「む、名を尋ねる時はまずは自分からだろう小童!」
「うわ!?」
「ばうわう!」
「クルルルル!」
「お、なんじゃこいつら!?」

 とても大きな声で怒声を浴びせて来たので僕は驚いて飛び上がる。するとシルヴァとフォルテが敵だと思い負けじと吠え掛かる。

「今のは爺さんが悪いな。この子はウルカ。ウルカティウス様だぞ」
「なに、ということはこの小童が領主!?」
「そうだよ。というかウッカーリには説明していたぞ。あいつが来るはずじゃなかったのか?」
「うむ……。ま、まあ、まずは挨拶といこう。すまなかったな小童。いや、ウルカ様」
「ううん、大丈夫だよ」

 お爺さんが申し訳ないと頭を下げてくれた。怖そうな人だけど悪い人ではないみたいだ。

「ワシはセカー。セカーチ・モノというしがない芸術家じゃ! よろしくな!」
「よろしく! こっちはシルヴァとフォルテといいます」
「わふ」
「クルル」
「ほう、魔物を使役しておるのか。毛並みもいい……。彫刻にしたいのう」

 顎に手を当てて二頭を見るセカーチさんがキラリと光る。
 そこへラースさんが呆れた顔で口を開く。

「質問に答えていないですよ。なんで依頼者の祖父が来たんだ? そこを話してくれ」
「うむ――」
「おおーい、ウルカ様! ちょっといいか!」
「おや、グラフさん」

 説明をしようとしたところでグラフさんとヨグスさんもやってきた。なんだろう?
 そう思っていると――

「ワシは「いや、この部品を」いから頼「を聞きたいんです」という。馬車「ねえかな?」れたわい」
「情報が多い……!?」
「いっぺんに喋るな……!!」

 セカーチさんはラースさんに。他二人は僕にだけど、一斉に喋ったのでなにがなんだかわからない。
 しかし、セカーチさんの話で僕は今と全然関係ないことを閃いた……!!
 
 ごめんハリヤー、もう少し待っていてね……。
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