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第百八十話 外から来ると奇妙に見える村というもの

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「ハリヤー、居る?」
「わふ」
「クルル」

 セカーチさん達を連れて一旦自宅へ戻ってからハリヤーの様子を見ることにした。
 声をかけると厩舎からてくてくと庭へ現れ『どうしましたか?』といった感じで鳴く。

「お前ってもうお年寄りなんだよね? 元気にして欲しいから無理はしないでよ?」

 すると僕の頬に顔を摺り寄せてから『まだまだ元気ですよ』という感じで元気よく鳴く。良かった。

「大事にしているのね」
「うん。産まれた時からずっと居てくれている馬なんだ。この中じゃ一番の古株だよ」
「ほっ。古株とは難しいことを言うのう。ところでワシらはここで待てばいいのか?」
「すぐ家を作るんでお願いします! バスレさーん」

 僕は縁側に二人を座らせてからバスレさんを呼ぶ。家を作る間、お茶でも飲んでいてもらえれば幸いだ。

「にゃーん」
「あら、猫ちゃんも居るの? 私も昔は飼いたかったのよ」
「こら、タイガ。お客さんの膝の上はダメだぞ」
「にゃ」
「ああ、いいのよ。おいでタイガちゃん」
「にゃ~ん♪」

 そういえばタイガもアニーが拾った時は子猫だったけど、すでに五年経っているんだよね。老猫とまではいかないけど、成猫なのは間違いない。いつものびているけど。

「はい、どうしましたウルカ様? ……おや、こちらの方は?」
「芸術家のセカーチさんと奥さんのサーラさんだよ。僕の考えた彫刻を作ってもらうためにラースさんが呼んでくれたんだ」
「これはラース様の為にご足労を……。私はメイドのバスレと申します」
「セカーチじゃ。べっぴんさんじゃのう」
「サーラですよ。騎士さん達が放っておかないくらい美人ですわねあなた」

 二人と握手する中、バスレさんの容姿がとてもいいと褒めてくれた。
 僕は嬉しくなったので胸を張って言う。

「彼女は僕の婚約者の一人です。なのでバスレの気が変わらない限りは僕と結婚しますよ!」
「まあ、堂々として! ウッカーリにも見せてあげたいわね」
「ふむ。男らしいじゃあないか。気に入った! 女神像とは聞いている。気合を入れて作らせてもらうぞ」

 セカーチさんに気にいられて頭をめちゃくちゃ撫でまわされた。とりあえずどういった間取りがいいか尋ねておこう。

「そうそう。今から別荘みたいな感じでお二人の家を作るんですけど、どういう間取りにしましょうか? バストイレ別で部屋数は三部屋までが基本です」
「なに? お主が作るのか? 今から?」
「はい! こういう魔法があるので」

 クリエイトで土をもりもり動かしてミニチュアを作る。すると二人は目を丸くして驚いていた。

「……なるほど、凄いな」
「あなた。私はこのお庭が素敵だと思うの。ウルカちゃんにお願いしていいかしら?」
「うむ。テラスとはまた違った趣がある。ということでここのような感じで頼めるかの」
【どうしたウルカ。家はもう今朝の分で終わりではなかったか?】
「「な、で、でけぇ」」

 丁度そこでボルカノが家まで帰って来た。作業を始めるかと僕はヘルメットをみんなに被せてから出口へ向かう。

「分かりました! それじゃバスレさん、お二人をよろしく!」
「はい、かしこまりました」
「気を付けてねー」
「はーい」

 サーラさんがタイガを撫でながら手を振ってくれた。お年寄りは縁側が好きなのは
どこも同じなのかなとちょっと思う。

「ごめんごめん。ちょっと大掛かりなものを作るから夜までかかるかもしれないんだ。向こうは大丈夫?」
【まあ、我がいなくても問題はない。また客が増えたのか?】
「そうなんだ。冒険者さん達、少しだけ待っていてくださいね。そこに温泉もあるので入って疲れを癒してもらえると」
「お、おう……。領主って本当なのか?」
「そうですね。では、今から宿を作るのでこれで」

 フォルテに乗ってその場を後にすると、ボルカノも後をついてくる。ポカンとした冒険者さん達は曖昧に手を振っていたね。

「あ、そういばオオグレさんのことを言うの忘れてたけど大丈夫かな? というかどこにいるんだろ」

 最近、騎士さん達とフラフラしているので把握できていない。ピンチの時などはすぐに駆けつけてくれるんだけど。ま、いいか。


◆ ◇ ◆

「ありゃドラゴンか?」
「なんであんなのがいるんだ……ここ、村だよな……」
「ま、まあ、護衛任務が楽になるし、ちょっと風呂に入らせてもらおうぜ」
「そうだな。芸術家の夫婦もあの家に居るみたいだし」

 俺はパリオス。
 芸術家の老夫婦を辺境まで送り届けて欲しいと言う依頼を受けてここまで来た。
 距離はあったが、街道を進む護衛で金貨十枚という報酬は破格なので引き受けた。二パーティで護衛してきたので楽なもんだったぜ。

 しかし到着してみれば見たこともない家屋が立ち並び、魔物に乗った子供……領主らしいがそういうのも居た。極めつけは赤い皮膚をしたドラゴンが普通に歩いていたことだろう。

 しかし、妙な村だ。騎士がたくさんいて、基本的な住民は殆どいないそうだからな。一応、話によると開拓中であるため騎士はその間の繋ぎらしいけどな。

「リーダー、風呂いきやしょうや!」
「おう。……立派な建物だなあ」
「ははは! 田舎の銭湯なんてボロ小屋ばかりだもんな」

 中に入るとそこはキレイな脱衣所で、正直俺達の汚い服を脱ぐのが躊躇われるくらいの内装をしていた。

「天井も高いなー。お、中で声が聞こえるぞ。先客がいるらしい」
「騎士の誰かだろうな。挨拶をちゃんとするんだぞ」
「もちろんでさあ。誠実な仕事が売りだからな俺達は」

 個人用の服を入れる収納(剣も入るとは)に装備と服を押し込め、備え付けのタオル(これもキレイだ)をもちこんでいざ風呂へ!

「こんちはーす」
「ウルカ様に勧められて参りました。お邪魔します」
「おー! なんだ見ない顔だな。新入りか? ウルカ様がいいってんなら問題ねえよ」
「ありがとうございます」

 俺達は湯をかぶり体を一度流してから風呂へ。湯気で見えにくいがみな強そうな体をしている。流石は騎士だ。

【いやあこの村も少しずつ人が増えて嬉しいでござるな】
「だな。あんた達はどうしてここへ?」
「(なんか頭に響く声があったな……?)ええ、護衛で――」

 と、和やかな雰囲気で経緯を説明したりする。

【最近、冒険者も三人ほど定着したから良かったら暮らすのもアリでござるよ】
「ははは、ギルドができたら考えますよ」
【それもありでござるなぁ。では拙者は先に失礼するでござる】
「ええ、それ、で……は……!」
「「「うわああああああああああ!? 骨ぇぇぇぇぇ!?」」
「ああ、聞いていなかったのか。オオグレさんはアンデッドだぞ」
「なんだそりゃ!?」

 目の前に動くスケルトンが風呂から出て行き驚く俺達。いや、マジでなんなんだこの村……!?
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