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第二百十三話 真相というもの
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「僕は……」
「良かったのー! みんな生きているよー!」
「うわあ!?」
ゼオラの質問に答える前に、アニーが鼻水を流して泣きながら僕に突撃してきた。
ひとまず安心したということでハリヤーが戻ってきたらまた寝ようという話になり、庭を後にすることにした。
「それじゃあみんなよろしくね!」
「うぉふうぉふ!」
「クルルル♪」
「にゃー♪」
シルヴァ達もお祭り騒ぎで庭を駆けまわっている。とても嬉しそうだ。
とりあえずみんなを部屋に入れてから自室へ戻ると、ゼオラが再度口を開いた。
【……さて、さっきの続きだがお前は何者だ? ヴァンパイアロードの息子にしてもハリヤーとジェニファー達の件を知っていたのはつじつまが合わない】
「そうだね、どこから話すべきか」
ベッドに座って腕組みをして考える。最初からという方がいいと思う。まあ、信じるかは本人次第かと思ったところで部屋の入口から声がかかった。
「でも、ゼオラ。ウルカちゃんはウルカちゃんよ?」
【クラウディアさん】
「母さん?」
そこには母さんが立っていた。
ゼオラに言った後、部屋に入ってきて微笑みながら僕の頭を撫でる。
「無理しなくてもいいのよ? 話したくないことなら」
【しかし母上……】
「いいのよ、この子は間違いなく私が産んだ子だもの」
心配そうなゼオラに母さんは返す。だけど、この件は知られてしまったからには話しておいた方がいい気がする。
「大丈夫だよ母さん。えっと、ハリヤーとジェニファー達を蘇らせてくれたのは……この世界を創ったとされる神様なんだよ」
「なんですって?」
【ウルカ、冗談は――】
「冗談じゃないよゼオラ」
訝しんだゼオラの言葉を遮り首を振る。そし僕にあったことを語る。
「領地の噴水広場に作ってもらった女神像があるだろ? 僕はあの女神さまに会ったことがあるんだ」
「……!」
【なんだと!?】
「この世界に生まれてくる前に母さんの下へ生まれさせてくれたのがその女神様で、さっき女神像を建てたお礼としてハリヤー達をなんとかしてくれた」
僕が真面目な顔で話すと、二人とも珍しく冷や汗を掻いて押し黙ってこちらを見ていた。しばらく沈黙が部屋を包んでいたけど母さんが最初に口を開いた。
「それじゃあウルカちゃんは生まれる前に女神さまに会っていたということ……?」
「そういうことになるかな。ごめん母さん、ずっと隠していて」
【なるほどな……それにしても何故ウルカが生まれる前にそんなことがあったのか気になるな】
ゼオラがやはり気になると口にするけど、前世までは言う必要が無いかとそこは省いた。
「でも、凄いわ! さすが私の子供! 女神様に会っていたなんて。だから賢いのねきっと!」
「うわあ!? 苦しいよ母さん!」
「ああ、ごめんなさいウルカちゃん。んー、ちゅーしましょうねー」
「あああ!?」
特別な子みたいな認識になったらしく褒めちぎって来た。そこでゼオラが腕組みをしたまま僕に言う。
【それにしても女神様とはな。もしかしてウルカは物凄く期待されているのか?】
「え? ううん、適当に寿命を生きてねって言われているよ?」
【ふうん。お前のアンデッド方面の能力は女神さまのおかげだったりして?】
「あ、そうそう。だから母さんのところに産まれたんだと思う」
「ヴァンパイアロードの系譜が尽きなくてよかったわ。産まれてきてくれてありがとうウルカちゃん♪」
「あ、もうキスはやめてよ!?」
【……】
とりあえず母さんはご機嫌になりゼオラも無言だけど苦笑していた。まあ、言えていない部分もあるけど今日のところはこれくらいでいいかな?
転生者として記憶があることを伝えるのは……難しいな。
「それじゃ、ママは寝るわねー。もう少しで朝だけど」
「うん! ごめんよ、起こして」
僕がそう言うと、母さんはウインクをしながら廊下へ出て扉を閉めた。
残された僕とゼオラはお互い顔を見合わせていると、ゼオラが頭を掻きながら口を開く。
【で? 嘘じゃないと思うが、どこまで本当なんだ?】
「全部本当なのは間違いないかな。あの現象は本当に女神様のおかげだからね」
【まあ、それでもいいが……今後、お前が不利になりそうなことは隠すんじゃねえぞ? あたしもアニーやステラも母君も、兄ちゃん達も真実を聞いてお前をハブるような真似はしねえだろうし】
「うん。ありがとうゼオラ。困りそうなことがあったら言うよ」
【ああ。……あたしはちょっと屋根の上に行ってくる】
ゼオラは肩を竦めるとそのままスッと窓をすり抜けて部屋から消えた。気を使ってくれたのかもしれない。
「もうひと眠りするか……」
庭でじゃれあっている動物達を見てから再びベッドへ潜り込むのだった――
◆ ◇ ◆
【女神様、ねえ……?】
あたしは屋根に寝転んで星がまだ輝いている空を見上げて呟く。
ウルカが気づいているかどうかわからねえが、女神にしちゃおかしい点がいくつかある。
まず一つは『そういう話はウルカ以外に聞いたことがない』という点。長いこと生きているクラウディアさんも驚いていたところを見るとこのン百年女神にあったという人間は居ない。
次にウルカの能力。
仮にも女神がアンデッドを生み出す力を授けるだろうかという部分に違和感を覚える。最近、学校で自分の本を読んで少しずつ記憶が返ってきているけど、不死の存在を増やすと還れない者が増える。
あたしもそうだし、ウルカが蘇らせたオオグレやボルカノはもしかすると別の存在として生まれ変われるはずだったのかもしれない。
【どうも腑に落ちねえな……? ……誰だ?】
「……」
一人考えるゼオラの背後に誰かが立つ――
「良かったのー! みんな生きているよー!」
「うわあ!?」
ゼオラの質問に答える前に、アニーが鼻水を流して泣きながら僕に突撃してきた。
ひとまず安心したということでハリヤーが戻ってきたらまた寝ようという話になり、庭を後にすることにした。
「それじゃあみんなよろしくね!」
「うぉふうぉふ!」
「クルルル♪」
「にゃー♪」
シルヴァ達もお祭り騒ぎで庭を駆けまわっている。とても嬉しそうだ。
とりあえずみんなを部屋に入れてから自室へ戻ると、ゼオラが再度口を開いた。
【……さて、さっきの続きだがお前は何者だ? ヴァンパイアロードの息子にしてもハリヤーとジェニファー達の件を知っていたのはつじつまが合わない】
「そうだね、どこから話すべきか」
ベッドに座って腕組みをして考える。最初からという方がいいと思う。まあ、信じるかは本人次第かと思ったところで部屋の入口から声がかかった。
「でも、ゼオラ。ウルカちゃんはウルカちゃんよ?」
【クラウディアさん】
「母さん?」
そこには母さんが立っていた。
ゼオラに言った後、部屋に入ってきて微笑みながら僕の頭を撫でる。
「無理しなくてもいいのよ? 話したくないことなら」
【しかし母上……】
「いいのよ、この子は間違いなく私が産んだ子だもの」
心配そうなゼオラに母さんは返す。だけど、この件は知られてしまったからには話しておいた方がいい気がする。
「大丈夫だよ母さん。えっと、ハリヤーとジェニファー達を蘇らせてくれたのは……この世界を創ったとされる神様なんだよ」
「なんですって?」
【ウルカ、冗談は――】
「冗談じゃないよゼオラ」
訝しんだゼオラの言葉を遮り首を振る。そし僕にあったことを語る。
「領地の噴水広場に作ってもらった女神像があるだろ? 僕はあの女神さまに会ったことがあるんだ」
「……!」
【なんだと!?】
「この世界に生まれてくる前に母さんの下へ生まれさせてくれたのがその女神様で、さっき女神像を建てたお礼としてハリヤー達をなんとかしてくれた」
僕が真面目な顔で話すと、二人とも珍しく冷や汗を掻いて押し黙ってこちらを見ていた。しばらく沈黙が部屋を包んでいたけど母さんが最初に口を開いた。
「それじゃあウルカちゃんは生まれる前に女神さまに会っていたということ……?」
「そういうことになるかな。ごめん母さん、ずっと隠していて」
【なるほどな……それにしても何故ウルカが生まれる前にそんなことがあったのか気になるな】
ゼオラがやはり気になると口にするけど、前世までは言う必要が無いかとそこは省いた。
「でも、凄いわ! さすが私の子供! 女神様に会っていたなんて。だから賢いのねきっと!」
「うわあ!? 苦しいよ母さん!」
「ああ、ごめんなさいウルカちゃん。んー、ちゅーしましょうねー」
「あああ!?」
特別な子みたいな認識になったらしく褒めちぎって来た。そこでゼオラが腕組みをしたまま僕に言う。
【それにしても女神様とはな。もしかしてウルカは物凄く期待されているのか?】
「え? ううん、適当に寿命を生きてねって言われているよ?」
【ふうん。お前のアンデッド方面の能力は女神さまのおかげだったりして?】
「あ、そうそう。だから母さんのところに産まれたんだと思う」
「ヴァンパイアロードの系譜が尽きなくてよかったわ。産まれてきてくれてありがとうウルカちゃん♪」
「あ、もうキスはやめてよ!?」
【……】
とりあえず母さんはご機嫌になりゼオラも無言だけど苦笑していた。まあ、言えていない部分もあるけど今日のところはこれくらいでいいかな?
転生者として記憶があることを伝えるのは……難しいな。
「それじゃ、ママは寝るわねー。もう少しで朝だけど」
「うん! ごめんよ、起こして」
僕がそう言うと、母さんはウインクをしながら廊下へ出て扉を閉めた。
残された僕とゼオラはお互い顔を見合わせていると、ゼオラが頭を掻きながら口を開く。
【で? 嘘じゃないと思うが、どこまで本当なんだ?】
「全部本当なのは間違いないかな。あの現象は本当に女神様のおかげだからね」
【まあ、それでもいいが……今後、お前が不利になりそうなことは隠すんじゃねえぞ? あたしもアニーやステラも母君も、兄ちゃん達も真実を聞いてお前をハブるような真似はしねえだろうし】
「うん。ありがとうゼオラ。困りそうなことがあったら言うよ」
【ああ。……あたしはちょっと屋根の上に行ってくる】
ゼオラは肩を竦めるとそのままスッと窓をすり抜けて部屋から消えた。気を使ってくれたのかもしれない。
「もうひと眠りするか……」
庭でじゃれあっている動物達を見てから再びベッドへ潜り込むのだった――
◆ ◇ ◆
【女神様、ねえ……?】
あたしは屋根に寝転んで星がまだ輝いている空を見上げて呟く。
ウルカが気づいているかどうかわからねえが、女神にしちゃおかしい点がいくつかある。
まず一つは『そういう話はウルカ以外に聞いたことがない』という点。長いこと生きているクラウディアさんも驚いていたところを見るとこのン百年女神にあったという人間は居ない。
次にウルカの能力。
仮にも女神がアンデッドを生み出す力を授けるだろうかという部分に違和感を覚える。最近、学校で自分の本を読んで少しずつ記憶が返ってきているけど、不死の存在を増やすと還れない者が増える。
あたしもそうだし、ウルカが蘇らせたオオグレやボルカノはもしかすると別の存在として生まれ変われるはずだったのかもしれない。
【どうも腑に落ちねえな……? ……誰だ?】
「……」
一人考えるゼオラの背後に誰かが立つ――
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