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第五部:終わりの始まり
その103 エレナとレジナ
しおりを挟むエリック、ライノスさん、アンジェリアさん。そして私は謁見の間で国王と面会していた。
一瞬顔を見たけど、絶対好きになれない顔だったので俯いたまま話を聞いていた。
「国王、連れて参りました」
「おっほ! よくやったぞライノス!! ど、どれ顔を見せい!」
……私は生理的に嫌だな、と思ったけど逆らって癇癪を起されてもたまらないので俯いていた顔を上げる。
「や、やはり女神の力を宿すだけあって……う、美しいじゃないか! なあ?」
「……ありがとうございます」
いやあああ! 何か涎出てるぅぅぅ! 同じおじさんでもファロスさんとは大違い……年齢的には国王の方が若そうなのに……。
不健康そうな肌、細い腕で全体的にガリガリ……初めて会ったレジナ達より酷く、病気じゃないかと思うくらい目の下は隈があるのだ。
「そ、それでは部屋を割り当てねばな……」
「そのことで、国王のお耳に入れておきたい事がありまして……よろしいでしょうか?」
「何じゃ! は、早くせい!」
「このルーナを捕えるのは相当骨が折れました。それもそのはず、女神の力をその身に宿しているので護衛はとても強力な者達でした。以前お話したレイドという男も勿論その場にはおりました。そして取り戻しに来るのは必至」
「う、むう……」
すると国王が顔を顰めてライノスの次の言葉を待つ。
「そこで事が片付くまで、こちらのオリビエ殿を同じ部屋に護衛として置いていただきたい。いえ、おく必要があります!」
おお、ライノスさんが言いきった! これは効いたでしょ!
「……事が終わるまでとはいつまでじゃ……?」
そこにエリックが割り込んできた、話し手を変えて気を逸らす作戦のようだ。
「それは分かりませんー。ですが、こちらは向こうの顔を知っておりますからねー、国境はすでに人相書きを配布しています。見つけ次第、ということになりますでしょうね?」
これは嘘。
一応国境の兵士にはレイドさんの人相と容姿だけは伝えてある。一番クーデター前に場を荒らす可能性がある厄介な相手はやはりレイドさんだからだという。
フレーレは来ても問題にならない(捕えたりするのが簡単そう)し、ギルドが冒険者一人を助けに来るとは思えないという観点である。一応エクセレティコの人間が来た場合は牽制するらしいけど。
それはともかく、エリックの言葉でイラついてはいるけど納得はしたようだ。
「なるほど、まあ少しの辛抱か……良い、オリビアよ頼んだぞ?」
「は! 隊長の名に恥じぬ働きをしてみせましょう」
「それでもう一つ、エレナの事ですが……」
「申して見よ」
「は、僭越ながらルーナ……いえ、女神の力を宿しているので呼び捨ては失礼ですね、ルーナ様に付けるメイドの役目をエレナにお願いできませんでしょうか?」
ルーナ様は止めて欲しいけどとりあえず黙っておく。
ライノスさんの妹、エレナさんを私のメイドにして目が届くようにすれば、少なくとも逃げ遅れる事は無いと思う。私の補助魔法があるからね。だからこれが実現できれば、私としては話は早いけど……。
「ふうむ、エレナか……そうじゃのう、女神が手に入った今、エレナに構っている暇は……よかろう、好きにしろ。誰か、エレナを呼んで来い」
近くに居たメイド服を着た人が無言で頭を下げ、部屋を出て行く。
「いいじゃろ? あっちの具合も悪くないんじゃ、はっはっは!」
私とアンジェリアさんが顔を顰めていると、エリックがそれに対して答えていた。
「僕もあやかりたいものですねー! ……しかし国王自ら奴隷を買うのは危険です、今後はお控えくださいませんと……」
それを聞いた国王は眉をぴくっと動かしエリックを見ていた。そしてひんやりとした声でエリックに告げる。
「……ふん、お前が気にすることではないわ。お前等はしっかり儂を守ればいいんじゃ、余計な事は考え無くて良いわ、儂は気分が悪くなった。後は好きにしろ、儂は部屋に戻る」
よろよろと玉座を立ち、メイドと護衛の騎士に連れられ出て行った。謁見の間には私達だけが残された。
「……気分が悪いのはこっちだってのー。さ、それじゃエレナちゃんをゆっくり待とうかー。汚い顔も見えなくなったことだし!」
なるほど、ここから出て行かせるためにあんな話を……というか嘘でも無さそうだし、見た目もだけど性根から腐っている感じ、か。
「でかしたエリック」
「今すぐにでも斬り殺してやりたいけど、あの護衛についている二人だけはこっちの管轄じゃないからねー……もしかすると弱いのかもしれないけど……」
アンジェリアさんが褒め、エリックが笑いながらも目の前いる仇敵を倒せない悔しさを滲ませていた。
下手に手を出して死んでしまっても困るし、国を挙げてクーデターを起こさないと意味が無いとエリックは言う。
「もう少しの辛抱、か。オレも結局参加することになったが……決行はどうする? エレナがルーナさんと一緒ならそれほど難しくないんじゃないか? あの騎士二人は俺達三人で相手をすれば……」
「まあねー。こんなにうまく事が運ぶとは思っていなかったよ。男連中は七〇人ほどこちらの味方だから、数では勝ってるねー。おや、どうやら来たみたいだよ?」
ライノスさんとエリックが話していると、国王が出て行った扉から一人の少女が入って来た。
「お兄様~! お久しぶりでございます~」
カクっとする感じのゆるーい子だった。私と同い年くらいだと思うけど……?
いかにもお嬢様ってドレスを着てふわふわと歩いて来た。
「……まあ気持ちは分かるよ、昔からああだからねー」
「あら~エリック様も。お久しぶりです~」
近くに来ると、ライノスさんと同じ紺色の髪をショートカットにした女の子だった。身長は私より少し高い。
「僕も会いたかったよー。最近国王に襲われたとかはない?」
「大じょぶですよ~? 国王様、お忙しいみたいですから~! こちらの方はどなた様でしょう~?」
コテンと首を傾げて私を見るエレナさん。
あ! どっかで見たことあるなと思ったら、あれだ。アイビスに喋り方が似てるんだ!
もしかしてだからあの時アイビスと一緒にパーティ組んでたんだろうか?
「あ、私はルーナです! ライノスさんにはダンジョンでお世話になりまして……それで色々あって今日からここでエレナさんと一緒に暮らす事になりました! よろしくお願いしますね!」
「私は知っているだろう? オリビアだ。私もお前と同じでルーナ付の護衛を行う」
「まあ~! それはそれは! わたしはエレナです~。同じ年くらいのお友達が居ないからお友達になってくれると嬉しいです~!」
するとライノスさんが慌ててエレナさんを窘める。
「こ、こら。ルーナさんはお客様としてお前がお世話をするんだぞ? 友達は流石に……」
ライノスさんが言い終わらない内に私はエレナさんと握手をして笑顔で答えていた。
「いいですよエレナさん! 一緒に暮らすんだし色々教えてもらえると私も嬉しいです!」
「ええ、ええ! 良かったわ~優しそうな人で~! それでは早速お部屋にご案内しますね~」
握手をした手を引っ張って私を部屋へ連れて行こうとするエレナさん。
とても感じがいい子だなあ。ゆるふわだけど。
「い、いいんですかルーナさん……」
「ははは、いいじゃないかライノス。それじゃ、僕達は行くよー。ライノスは大臣の親父さんに会っておいてよ? ……国王にバラすとは思えないから、クーデターの事伝えてもいい。で、ルーナちゃん達は決行が決まったら必ず伝えるからーそれまで城の逃走経路とかを考えておいてよー」
「?」
エレナさんがニコニコしながら首を傾げていたが、私とアンジェリアさんはこくんと頷いた。
「それじゃエレナ、また会おう。父さんに会ってくるよ」
「うん~。お父様最近疲れているみたいだから、顔を見せたら喜ぶと思うの~♪ それじゃあ行きましょう~」
ライノスさんがそう言って先に謁見の間を出て行った。
続いてエリックも「それじゃ、気を付けてねー」と後を追って行ったのだった。
私達も同じ方向だが、部屋は奥にある部屋らしい。国王が出て行った扉からエレナさんに案内され部屋へと向かった。
でもエレナさんを探す手間が省けたので色々と見る時間はありそうだ。
問題はどうやって探すかだけど、これは意外にあっさり解決した。割と不本意な方向で。
そして、探索中に私はあの男と出会うのだった。
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<北の森>
レジナはシロップがスカーフを見つけてくるのを待っていたが、ただ待っていた訳ではない。
じっと目を閉じて周囲の気配を、風を、匂いを感じていた。
そしてシロップに近づく魔物の気配に気づく。……少し大きいなと思った。
レジナ達は普通の動物で、相手は魔物。通常の動物なら逃げ出す所だが、今後もルーナに着いて行こうと思うならそれを覆すくらいの強さが必要だと思っていた。
そしてそれはチェイシャの存在も大きい。
彼女は子ぎつねの姿をしながらも頭が良く、魔法も使える。魔物の一種だと分かってはいるがそれが羨ましいと感じているのも事実だった。
「きゅん! きゅーん!?」
やがて魔物がシロップを見つけ咆哮をあげる。
前世ではどう戦っていたか? 今できることは何か? 勝てないなら逃げる、ではどうやって逃げるのか?
そんな事を思いながらシロップの元に辿り着く。
「きゅ、きゅーん!」
「わふ!」
そして対峙するのはデッドリーベア。
あの傷持ちとは違う個体だが、デッドリーベアは一度ルーナを助けるために戦っている。
今の自分に足りない物が分かるかもしれない。
グルォォォォォォン!!!
「ガウゥゥゥゥ!」
二匹の雄叫びと共にレジナの苛烈な特訓が始まった!
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