275 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル
その296 兵器②
しおりを挟むキュィィ……ン……
「動かない……?」
「……今の内にできるだけ接近するぞ! あれを取りこまれたら面倒なことになる、できればユウリも救出したい!」
丸っこいやつはユウリを体に入れた後、鉄の箱……ヘリを取りこむ作業に入っていた。動きを止めている今がチャンスとノゾムは叫んだ。
「俺達も行くぞ、破壊寸前まで持って行ったんだ、剣で倒せない相手じゃない」
「じゃあみんなに≪クイック・シルバ≫を!」
「わんわん♪」
「ん……これは、一気に行きましょう、みなさん!」
「行くわよ!」
「俺が先に行く、ルーナとアイリは狙える時に狙ってくれ」
射撃ができる私とアイリは後方へ回り、パパとレイドさん、そしてノゾムが前へ。中間に回復役のフレーレとセイラを走らせ、ファウダーは巨大化したまま空から丸っこいのに向かっていく。
「ガウ」
「きゅふん」
「レジナ達は後からついてきて、いざとなったら回り込めるように」
「ガオォォ!」
レジナ・シルバ・ラズベの三匹は散開して別角度から攻める。賢い子達だから助かるのよねえ。と、それよりもアレを止めないと!
「いきなりシューティングスター!」
走りながら私は大技を狙う!
バシュウ! 光の軌跡が一直線に丸いのに向かい、直撃した!
ガゴン!
体の後ろの方が吹き飛び、手ごたえを感じる。無敵ってわけじゃなさそ……
「こら! 中にユウリが乗ってるんだ、無茶な技はやめとけ!」
と思っていたらパパに怒られた。確かにあの大きさだと貫通した時が危ないか。
「私のライフルなら範囲が小さいので、任せてください」
「そうね、私は足を狙ってみる」
アイリと頷き合い、左右に散る。丁度そのころ、レイドさんとノゾムが接近に成功していたところだった。
「セッキンケイホウ」
ダラララ……
くぐもった声が響き、二人に向かって弾を発射してくる丸っこいやつ。だけど、レイドさん達も慣れたもので、攻撃をひらりとかわしていた!
「レイドさん、俺がワイヤーで足を引っかける。バランスを崩したところに攻撃を」
「分かった! 行くぞ!」
左手からワイヤーを出し、足に絡めて引っ張ると思っていたとおりバランスを崩させることができた。その隙にレイドさんが前にある目玉のような丸い水晶のような場所へ剣を叩きつける。
「でぇええい!」
ガギン!
「何!?」
驚くレイドさんに、その後ろからパパが飛びかかっていった!
「次は俺だ!」
ガン!
「かってぇぇぇ!? まだまだ!」
ガゴン! ガン!
「いいぞ、へこんでいる!」
「ダメージ、ショウ、キキレベル、Sトハンテイ。ゲイゲキモードに……」
「ダメ押しにもう一発行きますよ!」
ノゾムがワイヤーを動かしながら動きを抑えていると、フレーレがメイスで体の横をぶん殴った。
メキョ……!
剣よりも鈍器の方がいいのかもしれない……そんな鈍い音がして、ユウリが入れられた場所の蓋が少し開いた。
「……ハッチが動いたか! これならいけるかもしれない」
ターン!
バキン!
「カメラは破壊したわ!」
「アイリか、助かる。俺はユウリを助けるからそのまま攻撃を続けてくれ!」
「任せておけ! うお!? つぅ……」
ダラララララ! ヒュルル……
「……! させないわ」
カン、カン! ボン!
よろけながらも、デタラメに銃を撃ち、背中から、ユウリも使っていた爆弾をばら撒いてくる。爆弾はこちらへ落ちる前に私が矢で弾き、丸っこいやつが自爆したような形になり、動きを止めた。
そして目のようなものから光が消えた。
「ついでに足を壊す!」
ベギン! ズシャア……
「ギ……ギギ……」
「さすがルーナ、いい腕だ」
「へへ、ちゃんとやる時はやるわよ! セイラ、レイドさんとパパの回復を!」
「もちろんよ。≪リザレクション≫」
セイラがレイドさんとパパのケガを治していると、ノゾムが左手のワイヤーを回収し、右手のワイヤーで開きかけたハッチとかいうところへ結び付け丸っこいやつの上に乗った。
「よし、今助けるぞ」
グググ……と、扉を開けようと力を込め、少しずつ扉が浮いていく。これならすぐに助けてこいつを破壊できる。そう思っていたのだけど、私の考えはすぐに打ち消された。
「戦闘ヘリを回収完了。再起動。修復箇所をチェック……完了。修復を開始」
ブルン……!
「回復が早い……! うわ!?」
<危ない!>
後少しという所で振り落とされ、ノゾムはファウダーの背に着地する。 開けようとしていた扉がまたたくまに修復されていった。
「くそ、目を覚ませユウリ! お前が止めればそれで済むはずだ」
「……」
「まだ気絶していますね……回復される前に壊しましょう」
「フレーレちゃんの言うとおりだ、こっちの回復は済んだ。行こう」
<オイラが上から抑えるよ。うまくいけば中にいる彼を助けてみる>
レイドさん、パパ、フレーレ、ノゾムがそれぞれ別の方向から攻撃を仕掛けるために散開。ファウダーが上空から狙うということで動き始める。
だが……!
「対空迎撃を開始します」
「あれってさっきのヘリの!?」
「いつの間に!? ファウダーさん避けて!」
<あ!?>
丸っこいヤツはいつの間にかミサイルをヘリから奪い取り、己のものとしていた。垂直にミサイルが飛び、攻撃が来ないとふんでいたファウダーに直撃する!
ひゅるる……
「ファウダー! もう足も直りつつあるのか」
「カメラもだ、一体どんな造りになってるんだこいつは!」
キュイイン……
「あなた達の戦闘力は先程把握しました。排除します」
ドッ……!
「ぐふ……っ!?」
「レイドさん!?」
丸っこいヤツが物凄いスピードであっという間にレイドさんへ体当たりし、吹き飛ぶ、すかさず銃を乱射し、レイドさんが文字通り蜂の巣になった。かろうじて頭を庇っているので死ぬことは無いけど、全身に弾を浴びて崩れ落ちる。
「チッ……! セイラかフレーレちゃん、レイドへ……! な!?」
パパが叫んだ時にはすでにフレーレへ、ミサイルを放っていた。
「回復者を優先的に排除」
「間に合え!」
ミサイルに私がシューティングスターを放ち、破壊しようとするも、わずかに軌道が逸れただけでそのままフレーレへと向かう。
「≪シャインウォール≫! ……きゃああ!?」
ドゴン!
かろうじて魔法壁でガードしたものの、衝撃が大きく吹き飛んで気絶してしまった。そして攻撃を仕掛けていたパパをスルーしてセイラへと向かう。
「行かせるか……! う……!?」
チュイン……カシャ
「背後に熱を感知。後部機銃で迎撃します」
「うおおお!?」
「ノゾム!? こいつ、止まれ!」
ノゾムもお尻から出てきた銃に撃たれ、ワイヤーを放して砂の上に倒れた。レイドさんと違って鎧が無い分、血の量が多い!
「今度は私って訳ね? 補助魔法がかかってるから足は負けないわ!」
「セイラ、援護するわ!」
「こっちはダメです……ライフルが……効かない……!」
セイラが銃の射線から外れながら円を描くように動き、丸っこいヤツに接近する。狙いは杖での攻撃のようだった。
「捉えたわ! 魔杖フューネラルよ、眼前の敵を腐らせよ!」
ゴン! と、固い物を叩いた音が響いた瞬間、体が錆び始めた! これは効いている!
「状態……腐食。危険度SSS。ただちに離脱」
「都合が悪くなった逃げる気? 逃がさないわよ……!」
走りながら杖を押し付けるセイラを嫌がって逃げるが、セイラも食い下がる。
「排除します」
「……何なの? これは!?」
体から、ユウリを掴んだ時につかった触手がセイラに巻きついた。
「くっ……放しなさい……」
「アタック」
小さく呟き、セイラをアイリに向かって投げてきた!?
「ハッ!?」
「きゃあ!?」
「ガオオオン!」
ガシッ!
間一髪の所でレジナがセイラを咥えて着地する。
「わおわおーん!」
「機銃、損傷」
小さいシルバの死角からの攻撃は分からなかったのか、シルバの爪で左の機銃がボロボロになっていた。
「ナイスよシルバ!」
すると、丸っこいヤツに異変が起こった。
ドンドンドン!
「何だこれは!? 僕はなんでこんな所に居るんだ!? おい、誰か……あれは望か!? どうしてそんな血だらけで……? 愛理もいるのか! 愛理! これはどういうことだ! 何が起きている!」
「ユウリ! 正気に戻ったのね?」
「正気? ……そういえば最初に出撃してからの記憶が無いぞ! ええい、とりあえず脱出を……ハッ!? まずい、避けろ!」
「え?」
「修復完了……KILL YOU……」
ユウリの叫びと同時に、先ほどフレーレに放ったものより大きいミサイルが、私達に向かって飛んできていた。
カッ!
直撃は免れたものの、爆発の衝撃で私は意識が途切れた……。
0
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。