パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

文字の大きさ
353 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル

その374 神裂の防衛網

しおりを挟む
 <バベルの塔:90階>

 「やけに天井が高い……でも無重力ってわけでもないのか」

 「そうですね、ここは下の階にあったような罠の類は無さそうです」

 カイムさんが地面に伏して床を調べ上げるが、あれほどしつこいくらい仕掛けてきた罠がどこにも無かった。疑心暗鬼、という言葉を思い出した。

 「本当に何も無いんじゃないの? ゆっくり進ませるために今までずっと罠を仕掛けてきていたとか」

 私の言葉にお父さんが腕を組んで考えていた。

 「……有り得なくはないな。だが、油断もしていられん。カイム、引き続き確認を頼むぞ」

 「ええ、分かっています」

 平衡感覚を失いそうな本当に真っ白な部屋ね……足音を響かせながら進んでいると、不意にソキウスが立ちどまって言う。

 「……それにしても面倒くさい仕掛けばっかりだよな。結構時間経っているけど、神裂ってやつはまだ神になれないのか?」

 『なっていても困るけどね。人が神の力を制御するんだ、この短期間でモノにできると宣言しただけでも凄いと思うよ』

 「エクソリア様はどうやって女神になったんですか?」

 『ボク達は最初からだよ。こういうのも何だけど、僕たちだってぽっと出で産まれたわけじゃない。神同士が子を作って――』

 みゅいーん、みゅいーん……

 「来たか。どんなやつが出て来るかな?」

 興味深い話が聞けそうだったけど警告音が鳴り響き中断される。

 音がした方を見上げると。ゆっくりと頭上から長方型で箱みたいな物体が二つ降りてきた。大きさは高さ三メートルくらいで、ユウリが乗せられていた兵器にも似ている気がする。

 「また機械ってやつですか? こんなものもあるんですね」

 「……機械というのは合っているが、こういうものは無い。父さんの自作兵器だ」

 「砲塔二門は分かるとして、真ん中のレンズはなにかしら?」

 ニールセンさんの言葉にノゾムが返し、アイリがライフルを持ち替えながら口を開く。私達も武器を構えていると、浮いたままの箱型機械から声が聞こえてきた。

 「最終防衛兵器起動。シンニュウシャ、発見、コレヨリ迎撃シマス」

 「目標、補足」

 キュィーン……

 「……! 散れみんな!」

 ズドン!

 二体かける二本の砲塔から弾が発射される瞬間、ユウリが叫び私達はその場を離れる。着弾した弾は白い床に大きな窪みを作っていた。

 「当たったら消えてなくなるわね……」

 セイラが床を見て呟いていると、横に居たアイリがライフルを撃った。

 「落ちなさい!」

 カィン!

 「危険度、C、カウンター」

 ドドドド!

 「当たった! え!? ……きゃあ!?」
 
 ライフル弾はヒットしたけど、機銃で反撃をしてきた。取り囲むように動き、一体は狙いを女神二人に定めて攻撃を開始した。

 「女神、発見、消去プログラム起動」

 『こっちはボク達専用の敵か? なら、粉々にしてくれるよ! 姉さん!』

 『分かってるわよ、こっちは私達でやるからそっちは任せるわ』

 「分かりました! 一体ならみんなでかかれば倒せるはずよ! 行くわよ!」

 「ああ!」

 私が合図するとレイドさんが頷いてくれる。だけど、そこにフレーレが声をあげた。

 「あの! 戦うのはいいんですけど、どうやって攻撃するんですか? 浮いてますけど……」

 「……確かに」
  
 お父さんが剣を握りしめて肯定すると、クラウスさんとソキウスが怒鳴り出していた。

 「おら、降りて来い! きたねぇぞ空を飛ぶなんて!」

 「オレ達が怖くてそんなところからしか攻撃できないんだろ!」

 ピピ……

 「発射」

 ドドドド!

 「うおわ!? あぶねぇえ!」

 「うおおお!?」

 「流石に考える時間を与えてはくれないわね、遠距離攻撃が出来る人中心に攻撃をしましょう! みんなに補助魔法かけるわ!」

 上級補助魔法を全員にかけてから私はレイジングムーンで砲塔に狙いを定める。

 ビュン! ビシ!

 「カウンターモード」

 ドドド……

 「おっと、大丈夫、傷は入るわね」

 私の攻撃に反応して撃って来るけど、フェンリルアクセラレータで避けられない速度ではない。傷が入ることを確認したレイドさんが砲塔からの攻撃を避けながら叫ぶ。

 ドン! ドン!

 「俺もこれなら届くか? ”ディスタントゼロ”!」

 「迎撃シマ――」

 ドォン!

 レイドさんが剣を持ち替えて技を放つと、砲台が一つ粉々になって壊れた。流石!

 「いける、どんどん攻撃だ!」

 「こっちですよ! ≪マジックアロー≫!」

 <これはわらわの出番じゃな!>

 「反撃」

 ドン! ボン!

 マジックアローとチェイシャの魔弾を機銃と砲塔の攻撃で消しにかかってくる。だけど、数はこっちが上、私はすかさずシューティングスターを放つ。

 「食らいなさい!」

 ドゴン!

 「着弾。危険度Aランク。砲台の修復を開始」

 「え、何? なんなのそれ?」

 バチバチと火花が散っているところが少しずつ消えていく。ノゾムがそれをみて喋る。

 「……自己再生があるのか、一気にトドメを刺さないと厄介だぞこれは。あいつはダメージを自分で回復させる手段がある。攻撃の手は休めるな」

 「ハッ! シュリケンは刺さるが……弱いか!?」

 「アイリ、壊れた右側の砲塔を狙ってくれ。僕はもう一つを狙う」

 コクリと頷き、アイリがカシャンカシャンと連射を始め修復をさせないよう撃ちつづける。私も魔力矢とチェイシャで攻撃を続けていた。

 「一斉射撃」

 ダラララララララ……

 「固まるなよみんな……!」

 いよいよとなったのか、箱型の機械が移動しながら攻撃を開始し、こちらの狙いが定まらない。足元にいくつも弾丸の痕が残っていく。当たったら確実に死ぬのは間違いない……! こちらは補助魔法で強化しているので簡単には当たらないし、

 「すまん、みんな頑張ってくれ!」

 「くそ、オレ達も空を飛べたら戦えるのに……!」

 完全に戦力外となったクラウスさんとソキウスが悔しそうにそんなことを言うと、レイドさんが何かを思いついたらしく、ノゾムに駆け寄っていく。

 「おいノゾム、お前のワイヤーはあそこまで届くか?」

 チュン! カイィン!

 剣で弾丸をガードしながら問う。

 「……十分届くが、どうする気だ?」

 「どっかに引っかけてあいつに近づくことは?」

 「……なるほど、掴まれ……!」

 「修復、完了」

 ドゴン!

 レイドさん達に向かって修復が完了した砲台から弾が飛び出し、爆発を起こす。煙で状況が見えない。

 「レイドさん!」

 「チッ、思ったより再生が速い! 叩き落として剣士組でバラバラにした方がいいかもしれないよ……うわ!? こいつ!」

 「ピピ……接近を感知」

 ボヒュ……

 「一気に破壊してやる!」

 「俺はブースターを狙う!」

 「レイドさん! ノゾム!」

 煙から出てきた二人がワイヤーを使って箱型の機械へと向かっていた。取りつくと、レイドさんは上によじ登り、ノゾムは下にぶら下がる。

 「これで終わりだ!」

 ズン!

 ボン!

 「今から落とす、離れろ!」

 ピン! ……ドゴォォン!

 レイドさんの剣が頭上で突き刺さり、ノゾムはいつぞやの手りゅう弾を、浮かせている装置に投げ入れると、大爆発を起こした!

 「損傷大……コーション、コーション……」

 ズゥゥゥン……

 「やったぁあ! レイドさんかっこいい!」

 「ふう……補助魔法もあったから一気に貫けた……」

 「……いい案だ、さすが勇者だな」

 ノゾムも無事着地。

 「おっし! 今度こそべこべこにしてやろうぜソキウス!」

 「バラバラにしてやる!」

 「あ、みんなで攻撃しないと!」

 シルキーさんの制止を振り切って二人がここぞとばかりに走ると、箱型の機械はまた動き出す。

 「修復マデ1800秒……地上迎撃モードにニ移行シマス」

 キュイーン!

 ガシャガシャガシャ……

 「うお!? 気持ち悪ぃ!」

 ザザザ、とストップしたクラウスさんの言葉に誰もが納得する。箱の両脇から、カニの足のようなものが生えてきたのだ。

 「……へっ、地上ならぶった切れるってもんよ。覚悟しやがれ!」

 「集束レンズ砲、使用準備」

 「え!?」

 ガゴン……

 ソキウスが啖呵を切った瞬間、白い部屋の左と右の壁が崩れ去り、太陽が輝いていた。
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」  私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。 「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」  愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。 「――あなたは、この家に要らないのよ」  扇子で私の頬を叩くお母様。  ……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。    消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。