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22-1タコライスと姉御
しおりを挟む孝太郎に春と付き合えた事を報告された果歩は素直に祝福した。しかし、ありがとうございます、と答えた孝太郎はなんだか笑顔が冴えない。気になった果歩が問い詰めると孝太郎は白状した。
「いや……実は……幸せを感じるどころか気づけば3キロ痩せてました……」
なんでよ、と果歩が突っ込む。孝太郎は俯いてシャンパングラスを回しながら、答える。
「毎日……フラれるかとドキドキしてるんです……この1か月でフラれる夢もう5回は見ました」
「どういうこと?」
「実は春さんが……その、テレビで可愛い女の子が出てる時によく見ているのに気づいてしまって……春さん本当は女の子が好きなのにそれがなんでおれと付き合ってくれているのか日に日にわからなくなって……」
あらあら、と果歩は呆れたように言った。
「エッチはまだしてないの?」
そう尋ねられた孝太郎は、するわけないじゃないですか……、と真っ赤になって頭を抱えた。ふふ、と口元を隠して果歩は笑う。
「すればいいのに」
「無理ですって……付き合った日以来、指一本触れてないんですおれ」
「どうして?」
「だって付き合ってる間柄で触ったらなんかいやらしい事をしようとしている風に受け取られないかと……」
だめなの? と果歩は首を傾げる。
「その、そういうこと目当てで告白したと思われたくなくて……」
「真面目ね~」
「でも実は告白した時にその、余計なことを言ってしまって……プラトニックは無理だ、とか……後々になって考えるとよくなかった気がして反省して……」
「いや、大事よ、それ。だって性の不一致って男女でも別れの原因になるじゃない」
「でも、本当に好きならそういうの抜きでも付き合えるはずじゃないですか」
そう大真面目に言った孝太郎に果歩は吹き出して、笑ってしまった。
「果歩さん?」
「ごめんなさい。孝太郎が可愛すぎて……。確かにそうだけど、それって片方が触りたいって思ってたら成立しないのよ。孝太郎、触りたいんでしょう」
果歩がそう言うと孝太郎は一気に顔が赤くなった。果歩は、言いなさい、と孝太郎に命じた。
「言いたいことは言って、駄目なら別れる。それが大人の恋愛よ。結局別れの原因の大半は価値観の不一致だからね。付き合うまでわからない事も多いし、付き合ってみて駄目なら潔く別れるのよ」
「わ……別れたくない場合は、どうしたらいいんですか……? 合わなくても別れたくないです……」
無理よ、と果歩はバッサリと切った。
「価値観合わないときは、向こうも合わないと思ってるからどちみち続かないわ。こればっかりはもうどうしようもないの」
うう、と情けない声を出した孝太郎を、果歩は焚き付ける。
「帰ったら思い切ってスキンシップしてみたら? そもそも付き合う前に向こうがスキンシップ多いって悩んでたくらいでしょ」
孝太郎がおずおず、と言った。
「手、繋いでみます」
「ハグくらいしなさいよ。ね、今度会わせてよ」
「ッえ、春さんとですか?」
果歩はそうよ~、と楽しそうに脚を組んだ上の脚をぶらつかせて笑う。孝太郎が、それはちょっと、と難色を示すので果歩は不満げに突っ込んだ。
「なんでよ。散々恋バナ聞かせておいて」
「だって春さん果歩さんのこと前に凄い美人って言ってたんですもん……」
「あら、見る目あるのね。口説いちゃおうかしら」
勘弁してください、と情けなく眉を下げた孝太郎に果歩は笑う。そして、バカねえ、と言った。
「もっと自信持ちなさいって。本当に女の子と付き合いたい子はあんたを選ばないわよ。あんた自分が身長いくつあると思ってんの」
「185です……」
「筋肉あるし、声低いし、女の子と付き合いたいやつが選ぶ相手じゃないわよ」
ですかね、と孝太郎は返事をしたが自信なさげだった。
「もー。あの子大人しそうだしそんなに不安にならなくても大丈夫じゃないの? そんなに目立つタイプじゃないでしょ」
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