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席で2人きりになったタイミングで春が、あの、と孝太郎に声を掛ける。ヒソヒソ話するような格好をされたので何かと思って孝太郎が耳を傾けたら春はひっそりと言った。
「帰ったらキスしたいです」
孝太郎は、も~! と声を上げてソファに倒れ込む。
「なんでそんなん今言うんですかぁ!」
「あ、ごめんなさい仕事中に……孝太郎くんが仕事中なの忘れちゃってました」
「そうじゃなくてそんなん言われたらすぐ……したくなるやないですか」
そう言って孝太郎がテーブルの下でこっそりと春の手を握る。春は、駄目ですって、と孝太郎を叱る。
「絵梨花さん、お手洗いから戻ってきますよ」
「戻ったら離します」
「もう……って、わ!!」
なにげなく後ろを見た春が驚いた声を上げて振り払ったので何事かと思った孝太郎が振り返ると、後ろの卓にお手洗いに行ったはずの絵梨花がこっそりと座っていた。絵梨花は可愛く、ごめぇん、と謝った。
「今2人っきりになったらイチャイチャするかなーと思って、トイレ行くふりしてぐるっと回って後ろに隠れてたの。ふふ。ふふふ」
本当にお手洗い行ってくるね、と笑いながら絵梨花はトイレに行った。春が、ごめんなさい、と孝太郎に謝った。
「孝太郎くんのお客さんに変な会話聞かせてしまってごめんなさい! 不快になってないでしょうか」
「その心配は……ないですよ」
腐女子の絵梨花は不快になるどころか、かなり上機嫌だった。本当にお手洗いから帰ってきた絵梨花が2人に言った。
「全然気を使わずいつも通りにしててね。2人でおうちデートしてる時みたいに。手も繋いだままでよかったのに」
「……すみません」
そう恥ずかしそうに謝った春に絵梨花は、いいのよ~、と笑顔を見せる。
「ポッキーとか頼もうか?」
「絵梨花さん変なこと考えてますよね。しませんよ。春さんが嫌がります」
孝太郎がはっきりと断ると絵梨花は、もっとベロベロにした方がいいのかな、と口にする。ぎょっとして孝太郎は止めた。
「もうすぐワンセット終わるのでそれで春さんは帰らせます」
「春くんラストまでいてくれたらアルマンドあと2本」
「絵梨花さん、それはやりすぎです!」
それをやると今日の会計が100万円を余裕で越えてしまう。慌てて断った孝太郎に絵梨花は、違うの、と声を上げた。
「だって今帰らせたらこの夜の歌舞伎町の1番治安悪い時間帯に春くん置き去りになっちゃうじゃない! こんなピュアな子が! どうする? 道間違えて2丁目に行っちゃったら……」
孝太郎が顔をしかめて、早退して送って帰ります、と言ったので慌てて春は止めた。
「帰れますよ1人で!」
「少しお酒入った状態で、この酔っぱらいと客引きが溢れてる道を1人で、ね」
孝太郎は、うう、と頭を抱えた。そんな孝太郎に絵梨花は耳打ちした。
「深く考えないで。全員win-winだから。孝太郎は売上上がって、春くんは安全に帰れて、私は酔ってしまった推しカプを見たいの、お願い。ここまで来たらそれ見るまで帰れない。ね、一緒に帰るなら少々酔っても平気じゃない。ね、ね、ね!」
孝太郎は、おそるおそる、聞いた。
「あの……春さん、お仕事の方は大丈夫ですか?」
「それは平気ですけど、でもずっといたらお会計すごく高くなっちゃうんじゃないですか」
そう心配そうにする春に絵梨花は、大丈夫よ、と答える。
「今日のために先々週バースデーイベント頑張ったんだもん」
「帰ったらキスしたいです」
孝太郎は、も~! と声を上げてソファに倒れ込む。
「なんでそんなん今言うんですかぁ!」
「あ、ごめんなさい仕事中に……孝太郎くんが仕事中なの忘れちゃってました」
「そうじゃなくてそんなん言われたらすぐ……したくなるやないですか」
そう言って孝太郎がテーブルの下でこっそりと春の手を握る。春は、駄目ですって、と孝太郎を叱る。
「絵梨花さん、お手洗いから戻ってきますよ」
「戻ったら離します」
「もう……って、わ!!」
なにげなく後ろを見た春が驚いた声を上げて振り払ったので何事かと思った孝太郎が振り返ると、後ろの卓にお手洗いに行ったはずの絵梨花がこっそりと座っていた。絵梨花は可愛く、ごめぇん、と謝った。
「今2人っきりになったらイチャイチャするかなーと思って、トイレ行くふりしてぐるっと回って後ろに隠れてたの。ふふ。ふふふ」
本当にお手洗い行ってくるね、と笑いながら絵梨花はトイレに行った。春が、ごめんなさい、と孝太郎に謝った。
「孝太郎くんのお客さんに変な会話聞かせてしまってごめんなさい! 不快になってないでしょうか」
「その心配は……ないですよ」
腐女子の絵梨花は不快になるどころか、かなり上機嫌だった。本当にお手洗いから帰ってきた絵梨花が2人に言った。
「全然気を使わずいつも通りにしててね。2人でおうちデートしてる時みたいに。手も繋いだままでよかったのに」
「……すみません」
そう恥ずかしそうに謝った春に絵梨花は、いいのよ~、と笑顔を見せる。
「ポッキーとか頼もうか?」
「絵梨花さん変なこと考えてますよね。しませんよ。春さんが嫌がります」
孝太郎がはっきりと断ると絵梨花は、もっとベロベロにした方がいいのかな、と口にする。ぎょっとして孝太郎は止めた。
「もうすぐワンセット終わるのでそれで春さんは帰らせます」
「春くんラストまでいてくれたらアルマンドあと2本」
「絵梨花さん、それはやりすぎです!」
それをやると今日の会計が100万円を余裕で越えてしまう。慌てて断った孝太郎に絵梨花は、違うの、と声を上げた。
「だって今帰らせたらこの夜の歌舞伎町の1番治安悪い時間帯に春くん置き去りになっちゃうじゃない! こんなピュアな子が! どうする? 道間違えて2丁目に行っちゃったら……」
孝太郎が顔をしかめて、早退して送って帰ります、と言ったので慌てて春は止めた。
「帰れますよ1人で!」
「少しお酒入った状態で、この酔っぱらいと客引きが溢れてる道を1人で、ね」
孝太郎は、うう、と頭を抱えた。そんな孝太郎に絵梨花は耳打ちした。
「深く考えないで。全員win-winだから。孝太郎は売上上がって、春くんは安全に帰れて、私は酔ってしまった推しカプを見たいの、お願い。ここまで来たらそれ見るまで帰れない。ね、一緒に帰るなら少々酔っても平気じゃない。ね、ね、ね!」
孝太郎は、おそるおそる、聞いた。
「あの……春さん、お仕事の方は大丈夫ですか?」
「それは平気ですけど、でもずっといたらお会計すごく高くなっちゃうんじゃないですか」
そう心配そうにする春に絵梨花は、大丈夫よ、と答える。
「今日のために先々週バースデーイベント頑張ったんだもん」
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