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ハイツについて外階段を上り、自分の家に入る。孝太郎は春に笑いかけた。
「いつでも言ってください。なんなら今度多めに作ってタネを冷凍しておいたら、ハンバーグカレーとかハンバーグドリアとかも作れます」
「え! すごい!」
瞳を輝かせた春に孝太郎は、少し待ってて下さいね、とキッチンに向かう。そのまま離れようとした孝太郎の服の裾を春は掴んで引き留め尋ねた。
「……キス、しないんですか。いつもは外から帰ってきた時には玄関ですぐにするのに」
「してもいいんですか。帰ってきたときは好きが溢れてしてしまったけど、今はしない方がいいのかなって……」
春が孝太郎の服から手を離し、不安げな顔をした。
「今は、好きが溢れてないんですか」
「溢れてますよ!! 毎日、24時間溢れてます。一緒に居るときもいない時も」
そう言って孝太郎は春を抱き寄せて口づける。春は孝太郎の腰に手を回し、そのまま何度も、何度もキスをした。キスを終えてから春が言った。
「ぼくのところに帰ってきてくれてありがとうございます。大好きです」
孝太郎が、うー、と呻いて春に抱きついた。
「そんなん帰ってくるに決まってるやないですか……おれも大好きです……」
ぎゅっと春を抱きしめていた孝太郎が力を緩めて顔を上げた。
「あの、先にハンバーグ作りますね。後でゆっくり続きしたいです」
春は少し笑って、はい、と答えた。手を洗った孝太郎は手早く、玉ねぎをみじん切りにして肉と卵、パン粉、牛乳、ナツメグを合わせて手際よくこねる。そしてあっという間に丸い形を1つ作った。
「わ! もうできた」
「混ぜて丸めるだけですからね。あ、チーズ忘れてました。すみません。手、ベタベタなので冷蔵庫からチーズ出してください」
そう言って孝太郎は春に冷蔵庫からチーズを取ってきてもらい、フィルムを剝いてもらう。それを少しちぎって、丸くしたタネの真ん中に入れた。同じ要領で次々と作っていく。
「してみてもいいですか?」
そう春が尋ねたので勿論です、と孝太郎は答える。春は孝太郎の真似をしてタネを丸くしようとしたが、手にやたらとくっつく上にボロボロ、とバラバラになってしまう。春が悪戦苦闘してようやく1つ完成させた時には孝太郎は他の分をすべて作り終わっていた。
「1つだけ噛みちぎられた後みたいになってすみません……あとチーズも忘れました」
「これ、おれに下さい。春さんの手作りハンバーグ」
「孝太郎くんがいいのなら……」
孝太郎がフライパンに油をひいてタネを並べていく。
「おれ将来、お金貯めたら家買って1階で飲食店したいです」
孝太郎の言葉に春は目を輝かせた。
「いいじゃないですか! 応援します。通いますね」
いえ、あの……とおそるおそる孝太郎は切り出した。
「その時は……2階に住んでて欲しいです。嫌じゃなければ……おれと同じ家に」
春は一呼吸置いてから、最高じゃないですか、と真面目な顔で言った。
「今も最高なのに階段降りるだけでいつでも孝太郎くんに会えて美味しいご飯食べられるの凄いですね……絶対幸せです」
孝太郎は春の答えにくしゃっとした笑顔を見せる。ちょうどよく焼き上がったハンバーグを次々に皿にあげていく。そしてフライパンに残った肉汁にデミグラス缶を開けて、ウスターソースやケチャップで味を整えつつ孝太郎はソースを作っていった。
「すごい……もうハンバーグができた……早い……」
「あ!付け合わせ忘れてました。何かあったかな……」
孝太郎は冷蔵庫に残っていたにんじんの皮を向いて適当に切り電子レンジでチンしてから、卵焼き用の小さなフライパンを使いバターで軽く炒めた。
「これハンバーグの横でよく見るやつですね!」
「にんじんのグラッセです。今度はなにか、春さんの好きなつけあわせにしましょうか」
孝太郎は皿にハンバーグを盛り、デミグラスソースをかけてにんじんのグラッセを添えた。
「春さん、白ごはんお願いします」
はい、と春はお茶碗に炊きたてのご飯をよそった。孝太郎がハンバーグを運び、春もお茶碗をローテーブルに並べたら完成だ。2人は、いただきます、と手を合わせる。わくわくした顔でできたてのハンバーグを一口頬張った春は、美味しい、と頬をほころばせる。
「お肉美味しいしチーズ美味しいしソース美味しいです~!」
「よかった。春さんの好みのソースとかまた教えてくださいね。今日はデミグラスにしたけど和風とかもできますよ」
そう言ってにこにこと笑う孝太郎に春は、ふふ、と笑った。
「いつの間にか悲しいの、どこか行っちゃいました。孝太郎くんのお料理のおかげですね」
そう言って笑顔を見せた春に孝太郎が、よかった、と微笑みかける。
「いつでも言ってください。なんなら今度多めに作ってタネを冷凍しておいたら、ハンバーグカレーとかハンバーグドリアとかも作れます」
「え! すごい!」
瞳を輝かせた春に孝太郎は、少し待ってて下さいね、とキッチンに向かう。そのまま離れようとした孝太郎の服の裾を春は掴んで引き留め尋ねた。
「……キス、しないんですか。いつもは外から帰ってきた時には玄関ですぐにするのに」
「してもいいんですか。帰ってきたときは好きが溢れてしてしまったけど、今はしない方がいいのかなって……」
春が孝太郎の服から手を離し、不安げな顔をした。
「今は、好きが溢れてないんですか」
「溢れてますよ!! 毎日、24時間溢れてます。一緒に居るときもいない時も」
そう言って孝太郎は春を抱き寄せて口づける。春は孝太郎の腰に手を回し、そのまま何度も、何度もキスをした。キスを終えてから春が言った。
「ぼくのところに帰ってきてくれてありがとうございます。大好きです」
孝太郎が、うー、と呻いて春に抱きついた。
「そんなん帰ってくるに決まってるやないですか……おれも大好きです……」
ぎゅっと春を抱きしめていた孝太郎が力を緩めて顔を上げた。
「あの、先にハンバーグ作りますね。後でゆっくり続きしたいです」
春は少し笑って、はい、と答えた。手を洗った孝太郎は手早く、玉ねぎをみじん切りにして肉と卵、パン粉、牛乳、ナツメグを合わせて手際よくこねる。そしてあっという間に丸い形を1つ作った。
「わ! もうできた」
「混ぜて丸めるだけですからね。あ、チーズ忘れてました。すみません。手、ベタベタなので冷蔵庫からチーズ出してください」
そう言って孝太郎は春に冷蔵庫からチーズを取ってきてもらい、フィルムを剝いてもらう。それを少しちぎって、丸くしたタネの真ん中に入れた。同じ要領で次々と作っていく。
「してみてもいいですか?」
そう春が尋ねたので勿論です、と孝太郎は答える。春は孝太郎の真似をしてタネを丸くしようとしたが、手にやたらとくっつく上にボロボロ、とバラバラになってしまう。春が悪戦苦闘してようやく1つ完成させた時には孝太郎は他の分をすべて作り終わっていた。
「1つだけ噛みちぎられた後みたいになってすみません……あとチーズも忘れました」
「これ、おれに下さい。春さんの手作りハンバーグ」
「孝太郎くんがいいのなら……」
孝太郎がフライパンに油をひいてタネを並べていく。
「おれ将来、お金貯めたら家買って1階で飲食店したいです」
孝太郎の言葉に春は目を輝かせた。
「いいじゃないですか! 応援します。通いますね」
いえ、あの……とおそるおそる孝太郎は切り出した。
「その時は……2階に住んでて欲しいです。嫌じゃなければ……おれと同じ家に」
春は一呼吸置いてから、最高じゃないですか、と真面目な顔で言った。
「今も最高なのに階段降りるだけでいつでも孝太郎くんに会えて美味しいご飯食べられるの凄いですね……絶対幸せです」
孝太郎は春の答えにくしゃっとした笑顔を見せる。ちょうどよく焼き上がったハンバーグを次々に皿にあげていく。そしてフライパンに残った肉汁にデミグラス缶を開けて、ウスターソースやケチャップで味を整えつつ孝太郎はソースを作っていった。
「すごい……もうハンバーグができた……早い……」
「あ!付け合わせ忘れてました。何かあったかな……」
孝太郎は冷蔵庫に残っていたにんじんの皮を向いて適当に切り電子レンジでチンしてから、卵焼き用の小さなフライパンを使いバターで軽く炒めた。
「これハンバーグの横でよく見るやつですね!」
「にんじんのグラッセです。今度はなにか、春さんの好きなつけあわせにしましょうか」
孝太郎は皿にハンバーグを盛り、デミグラスソースをかけてにんじんのグラッセを添えた。
「春さん、白ごはんお願いします」
はい、と春はお茶碗に炊きたてのご飯をよそった。孝太郎がハンバーグを運び、春もお茶碗をローテーブルに並べたら完成だ。2人は、いただきます、と手を合わせる。わくわくした顔でできたてのハンバーグを一口頬張った春は、美味しい、と頬をほころばせる。
「お肉美味しいしチーズ美味しいしソース美味しいです~!」
「よかった。春さんの好みのソースとかまた教えてくださいね。今日はデミグラスにしたけど和風とかもできますよ」
そう言ってにこにこと笑う孝太郎に春は、ふふ、と笑った。
「いつの間にか悲しいの、どこか行っちゃいました。孝太郎くんのお料理のおかげですね」
そう言って笑顔を見せた春に孝太郎が、よかった、と微笑みかける。
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