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八月灯香

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推しが振り向いた後のこと。

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⭐︎推しが振り向くなんて事。のお話



僕、天城敬一は天変地異が起きて世界一好きな人とお付き合いしている。

僕の人生に雷を落とした『鉄の羊』のキーボードのキュージ。
勝手に大好きになって、勝手に心の支えにしてずっと恋をしてた。

就職したデザイン事務所のオーナーの中野さんがまさかの『鉄の羊』ヴォーカルのイリヤの高校の頃からの仲良い先輩だった。

よく飲みに連れて行ってくれて、飲んでる時に「黙ってたけど俺イリヤの高校の先輩だよ」って教えてくれて。

イリヤのインタビューで時々出てくる"伝説のSパイセン"だとは思いもしてなかった。

中野さんは下の名前が四郎だ。

どれもまさかと思うエピソードばかりなんだけど『話し方で盛ってるように思えたかもだけどかねがね本当』らしい。

『ガキなんて大体馬鹿だから若気のイタリアンだよ』と中野さんは笑っていた。

その後、中野さんとご飯の予定だったのがイリヤとキュージを誘ってくれてて…そんな事なると思ってなかったから…自分でも驚くくらい上がって飲みすぎて酔良過ぎて…気が付いたら…キュージにお持ち帰りされてヤッちゃってて。

馬鹿な自分の行動がショック過ぎてキュージのマンションを抜け出して狼狽えてたけど、キュージは探して迎えにきてくれた。

『敬一君の事好きになっちゃった。』って。
それから言葉と行動でずっと好きって言ってくれる。

お昼休みには必ずメッセージのやり取りをしてて…こんな事生きててあるのかなって思っちゃう。

週末はキュージが居なくてもキュージの家に行く約束。

キュージが筋トレ部屋にしてた部屋がいつの間にか何も無くなってて「敬一ここに引っ越して」って言われて…キュージに我慢の限界って言われて…ずっと躊躇ってたけど先月から一緒に住んでる。

元いた自分の部屋より広くて、お気に入りのグッズとか写真とかを飾るスペースが増えた。

本物がここに居るのにとはいうけど、やっぱりミュージシャンとしてのキュージも大好きだから…。

キュージがスタジオ録音で帰れない日で、キュージが来てって言ってきた日は自分の部屋で過ごしてる。
そんな時は大体夜中に帰ってきたキュージが僕のベッドに潜り込んでくる。

暑くて目が覚める事もあるけど、大好きな人に背中から抱き締められてる安心感が嬉しい。



今、職場に長期インターンで中野さんの甥の臣君がきている。

明るくて人懐こい印象の友達が多そうないい子で、
彼女出来たばっかりで楽しいしインターンも楽しいって言っててメンタル的にも充実していて「親戚だから甘やかすわけじゃ無いけどいい奴だしもし相性がいいならこのままウチに就職させるかも」って中野さんも言ってる。

感覚もいいし飲み込みも早いし僕も賛成だなって思った。

「敬一君それ一口頂戴。」

隣に座ってた居た臣君につくね串を持っていた手を掴まれて返事をする前に齧り取られた。僕のレモンハイもさっき飲まれた。

「うま、わさび効くねこれ~!」

キュージが夜遅い時とかに中野さんは相変わらずご飯に誘い出してくれる。

最近は臣君もそこに加わった。

「いえーい!敬一君ワンバンコー!」

「…何してんの…。」

んだけど…これがまた…臣君とキュージとの相性がすごく悪いみたいで…

「臣どいて。」

今何処にいるの?と連絡が来たから3人で飲んでるって返事を返して暫くしたらお店にキュージとイリヤがやってきた。

イリヤは完全にデバガメモードでニヤニヤしているけど、キュージは僕の隣で僕の手からつくね串を食べた臣君を見たらしく眉間にシワを寄せた後無表情になった。  

ニヤニヤしながらイリヤは中野さんの隣に座るし、中野さんはまた始まった…って顔になるし。

店員さんに椅子を持ってきて貰ったけど、僕の隣に座ってた臣君の服の背中を掴んで立たせてからキュージが「お前ここ。」って襟首掴んで移動させた。

キュージの身体で多分僕の姿は臣君からあんまり見えない様にされてる。

イリヤがそれを見て「キュージ超心がせめぇ」って爆笑してるけど…。

「お前さ、何回言ったらわかんの?ほんと。」とキュージが臣君にお説教はじめてるし…それに対してあんまりこたえてない臣君も凄いよ…。

キュージは臣君より背が高くて体格もいい。
スッとした切れ長の目をしてて、カッコいいけど凄まれたら怖い。

皆んなに見えないようにキュージの服を軽く引くとすぐに振り向いてくれる。

「敬一仕事お疲れ様。」

そう言って軽く抱き寄せられる。

「も~~!イチャイチャ禁止!」臣君が喚いたのを中野さんが「煩いお前は黙ってろ!」って牽制してた。

実は僕がキュージの部屋に引っ越したのは臣君の存在が大きい。

臣君にとても懐かれた僕。
もちろん恋愛的な雰囲気じゃない…と思う…彼女居るしよくセクシー女優とか好みの女の子の話を中野さんにしてるし…

だけどなんか中野さんと同じ遺伝子なのか、僕の方が年上なんだけど、年下を可愛がっているような雰囲気で…身長とか…顔立ちとかが臣君の方が大人っぽいから仕方ないのかもしれないけど…「敬一君の家遊びに行きたい」って言ってきたからいいよって言っちゃってからちょこちょこ来るようになって…そのうちに泊まりたがるようになってしまった。

「いーなー一人暮らし。ここからだと駅出やすいもんなー。四郎君とこ就職決まったら俺もここ住みたいなー。」

遊びに来るのは良いけど、泊まりはダメとキュージから言われてるからそれだけは断ってたけど….臣君が「敬一君とこのアパート一個部屋開いたっぽいよね。」とか言うもんだからキュージが「もうダメ、本当にダメ。俺だって敬一と一緒に居たいのに何でアイツが部屋に上がり込んでんの。しかも何同じアパート住もうとしてんの無理。」ってなってしまって本当に引っ越しする事になった。

「一緒に住むのはダメってしぶってた敬一が来てくれたからそこだけはアイツに感謝してる。」って言ってた。

臣君は敬一君と遊びたくてもキュージさん絶対俺家に入れてくれないじゃんって文句言ってたけど、中野さんが「臣、どう考えても敬ちゃんが引っ越さないといけなくなった原因お前だぞ。」って言ってた。





「土日、撮影だよね?衣装も新しくなるの楽しみだな…。」

「敬一本当に撮影来ない?」

「僕居たら邪魔になるし…中野さんが勉強しに那須の方の美術館一通り回ろうって言ってくれてるから…。」

キュージのベッドの上でキュージが帰る前には戻るから、と言うとそっか、と抱きしめてくれた。
頭を撫でられて気持ちよくてうっとりしてしまう。

明日は早起きして、車で美術館を巡る約束をしている。
キュージは新曲のPV撮影が入ってる。

デモ音源聴かせてもらったら、キュージの鍵盤パートが重低音の尖ったメロディで鳥肌立つくらいカッコよくて熱くなった。

頭を撫でていたキュージの手が、首から降りていって着てるスウェットの中に潜り込んでくる。

キュージが誘う時の触り方…

「敬一…」

「ぁ………今日はしたらだめ…」

「…ちょっとだけしよ。」

「ぅ…」

「ちょっとだけ…。」

おねがい…と言いながら大きな手が下着の中に入ってくる。

キュージに望まれたら、僕は強く断れない。

大好きな人が自分を望んでるんだもん…

唇も、触る手も、お腹の中に挿入されたキュージの勃った物全てで僕を甘やかしてくるからすぐにイッてしまう。

原盤を叩く長い指が身体の中を拡げながら撫でるのを、うつ伏せで枕を抱きながら耐える。

「キュ…ジ………も……ぃ……れて…」

撫でられた肌がキュージを求めて泡立つように敏感になってしまう。

「っ………!!」

ひくついた孔を押し広げながらキュージの熱い杭が侵入してきて息が詰まった。

「ン……ゥ………ッ」

「大丈夫?」

大きな身体で後ろから覆い被さって、顔にかかった髪の毛を払って半開きでよだれで濡れた唇に何度もキスをしてくれる。

苦しいけどお腹の中が熱くて…それ以上に気持ちよくて。

頷いたけどもっと快感が欲しくなって勝手に腰が揺れる。

「敬一、腰揺れてる。」

「ン…だっ…て…ぇ…」

「俺も動いてい?」

耳元でそう言いながらキュージが中を刺激し始めた。
頭の中が気持ちいいでいっぱいになっちゃう。

「ぁ…ァ………ッ!」

奥を突かれるとイきっぱなしになるから思わず腰を逃すと、奥突っ込まないからって言いながら前立腺狙って擦られてあっという間にイきそうになる。

「まだ射精しないで。」

キュージに根本を握られて背後から奥に押し付けるみたいにされて身体が勝手に震える。

「ッ!おく…ダメっ…て……ぇ……」

「敬一…」

耳元で囁いてくるキュージの落ち着いた低い声が下腹に響く。

「ひ………ぅ…!」

「…っ……はは、気持ちいい?…やばいね敬一の中……こんなの俺もすぐイく…。」

「っ…!ン……ン……ア……きもち………ぃ………うァ………ッ!!キュージ…キュー…………ジ…!!!!」

勝手に暴れる身体を片手で抱きすくめられて、キュージの大きな手が堰き止めていた前を扱いてくる。
のしかかられて何度も突かれて身体が揺れて、その度に気持ちいいのが大きくなる。
性器の先端を長い指が撫でて腰が砕けそうなところに、長大なキュージの物が奥まで挿入されてしまった。

さっき奥しないって言ったのに…

「ぁ……そんなの…一緒したら………ァ!!」

キュージが動くたび、僕のチンコから精液が噴き出て、枕を抱いているしか出来ない僕の
首や肩にキュージの唇が押し当てられる。

「敬一…」

「ま…た…ィ…………くぅ……!」

キュージの熱を帯びた低い声が名前を呼んできて…胸が熱くなって涙が出てくる。

世界一好きな僕のキュージ…。

「あーヤバ……俺もイク……」

「ぅ……ぁ……ッ!お……く…あた…て…ぅ!」

「ン………きもちぃ…」

ゴムしてるから中には出してないけどキュージがお腹の奥に強く押し付けてくるから震えが止まらない…

「ぅあ…は……はっ………ァッ………」

全身、トロトロにされて抱きしめられて…愛されてるって伝わる。

「…キュージ…キュージ…だいすき……。」

仰向けになって向かい合わせて汗ばんだキュージの身体に腕を回した。

沢山、ファンに言われてる言葉だろうけど、毎日の生活の中で勝手に口から溢れでてくる。

キュージはいつも満足そうに笑いながら

「俺も敬一大好き。」

と返してくれる。

信じられないくらい、幸せ。






早朝、敬一が洗面台で歯磨きを終えて水を吐き出すのに腰を屈めていた。

パイル生地の短パンから滑らかなラインを描く脚が伸びていて、敬一がかがむと昨日内腿につけた真新しい跡が見える。

キュージは後ろから左手を敬一の腹に回し、右手を掌を内ももに押し付けて肌を撫でた。

身体を起こした敬一が腕を回して抱きついてくるのを抱きしめ返す。

「…敬一やっぱり一緒に現場行こ…。」

「ぁ…ダメだよ…もうすぐ中野さん来ちゃうし…。」

キュージがねだる声を出すが敬一はきちんと断る。
こういう時ミーハー丸出しの人間が現場に居るのはよく無いと敬一はガンとして譲らない。

ファンに手をつけた事は無かったのに手を出して付き合い始めてからどんどん敬一にキュージがハマっていってしまっている。

敬一はなんとか一線を保とうとしているが、今やキュージの方はどんな時でも敬一に隣にいてほしい。

「くそー…結構腹立つ…」

すごすごとリビングに戻ると、マネージャーからの着信が入った。

「はい。」

『もしもしキュージ?まだ自宅いる?今日のスケジュールズラしになった。器材トラブルと映像監督がノロで体調崩したってさっき連絡来て急でなんとかするの無理だなって…近々でリスケになる、だから今日みんなフリーにしてって連絡してる所で、夜また改めて調整日程出すから、急でほんとにごめんなさいね。』

「…了解。」

(仕方ない…曲作りに充てるか…)

敬一のスマホが震えて、キュージの作曲した曲が流れ「中野さん」と表示されていた。

「敬一、中野さんから電話きてる、出るよ。」

洗面所にいる敬一に向けて大きめの声を出すと「ごめん!すぐ行くお願い。」と返してきた。

通話ボタンをタップするとすぐに中野の機嫌良さそうな声がした。

『おはよー!敬ちゃん待たせてごめーんもう着くから!急なんだけど臣も行きたいって言っ喚いて煩いから連れてきたんだわ。だから今日は3人で回るよ!キュージ今日撮影で遅いって言ってたよね?美味しいもの食べながらのんびり色々見て回ろう!』

おじさん敬ちゃんに美味しい物ご馳走しちゃうぞ!と中野が電話の向こうで上機嫌で言っている後ろで別の声もしている。

『あ~~もう!臣!うるさいな電話中だぞ!』

「はぁ………?」

『ごめんごめん…あれ?もしもーし?え?今の敬ちゃん?聞こえてる?おーい。だから!うるさいな臣!』

「…中野さん、今日俺も行くわ。」

敬一からは二人と聞いてるのに臣がついてくるのなら話は別だ。

『ゲ…!キュージ!!』

何か電話口でまだ言って居たがキュージは通話を切った。

ただでさえ中野の愛車は小型の旧車で車内は狭い。

臣は普段から「敬一君可愛い」だのなんだの言ってるし、敬一の隣に座って「それ一口頂戴」とやっている。

敬一が助手席に座ろうがなんだろうがベッタリするに決まっていた。

友達としては悪い奴では無いがどこかしらいい加減な部分が見えている。

キュージと敬一の関係を知った時も「え!そうなの!敬一君ならわかるわー」と言っていた時の表情もずっと引っかかっている。

人の物は余計に欲しくなる。

なーんだ、そっか、じゃあ俺ともいいじゃないかなどと敬一に迫られたら堪ったもんじゃ無い。

最近は嫌にスキンシップも多い。
中野が嗜めてもあまり効果は無い。

(クソ…自分がこんなに余裕無くなるとは思わなかったな…。)

「もしかして中野さんもう来た?」

「もうすぐつくって。俺、撮影リスケなっちゃったからなんかあったらいつでも連絡して。」

敬一に今日がオフになった事を伝えると驚いた表情をしてすぐにもじもじし始めた。

「え…え…そしたら…キュージも……一緒に行けないかな…。」

でも、休みになったからって休みじゃ無いだろうし僕仕事邪魔してるよね…と呟いてる。 

「実は中野さんにさっきそれ伝えた。中野さんの車小さいから俺の車で行こ。」

そういうと敬一はパッと表情を明るくして「ほんと!?嬉しい!」と見上げながらキュージに抱きついたあんまりに可愛いので軽いキスを何度も唇に落とした。




「中野さんの車、これ出したらそこ停めて。」

キュージの車で行くとなると、本来なら隣は年長者の中野が座り、後ろに敬一と臣が座る事になるが臣が「えー!キュージさんの車でっかー!改造した?シートもカッコいー!敬一君後ろでしゃべ「無理、助手席は敬一。それがダメなら2台で行く。中野さんと臣と仲良く行けばいいんじゃない?」とキュージが言うので「嫌だよこんなうるさい甥っ子と2人なんて!」と中野が返した。

道すがら、ずっと敬一がニコニコしていてとても可愛いかった。
邪魔をしているのは自分なのだが後ろからヤイヤイ騒ぐ中野と臣さえいなければ本当に充実したデートになるのになと思った。

「へへ…キュージと出掛けられてるの嬉しい…。」

展示を観てまわり、物陰で2人きりになると敬一が言った。

展示物を照らすライトが敬一の顔も照らして、目がキラキラして綺麗だ。

「あの煩い2人が居なかったらもっとよかったのに…ここからならバスもあるし自力で帰れるから捨ててこうかな…。」

「だ…だめだよ!」

「…冗談。」

いつもより低めの声で言われて敬一が思わずギョッとした声を出した。

2人きりになれたのはその一瞬だけだった。

看板デザインをしたアイスが評判な店があるから寄ってと中野が言ったので休憩がてら立ち寄った。

どれも地元の農家と契約したフルーツや野菜を使ってつくられていて冷凍庫の中にカラフルなデザインの容器に入れられたアイスがならんでいる。

それぞれ好きな物を選ぶ。

「キュージどれにするか決めた?」

「オレンジかラムレーズンのかで悩んでる。」

「そしたら僕そのどっちかにする。」

「敬一やさし。」

それぞれが選んだのを手に外のベンチで食べる事にした。

「お前は自分のやつ食え。」

早々に敬一が手にしたアイスを狙う臣をキュージが止める。

「なんで!色々食べたいから違うの頼んだんじゃないですか。」

「…しらねぇよ。」

「臣!キュージ怒らせるな!置いてかれるぞ!コイツならマジでやるから笑えねぇ!」

「アッ!キュージさんだって敬一君の食べてんじゃん!」

「だから!あの二人は付き合ってんだから!そんなに人の食いたいなら俺の食え!」

「えー四郎君のはいらない!」

「んだと!」

敬一との距離がおかしくなりがちの臣はその後も時々キュージに頭を掴まれていた。

サービスエリアに立ち寄った時、中野とキュージが喋っているタイミングを見計らって臣が敬一に近づいてくる。

「敬一君、本当にキュージさん好きなんだね…キュージさんも敬一君大事にしてんのわかる。」
 
臣の問いかけに敬一がキュージを見たまま
「うん、大好き…キュージはずっと僕の憧れで…僕の宝物。」と答えた。

その横顔が余りに綺麗で、臣は思わずスマホで撮った。

「わ、なに。」

「あーぁ…完全に脈なしかなぁ…」

「え?」

臣は「なんでも無い」と言った。

中野が手に肉の串を持って二人を呼んでいる。

「やったー!食べるー!敬一君いこ!」

帰りの車の中も騒がしく、笑い声が絶えず敬一はずっと楽しかった。





「今日楽しかった!」

「良かった。」

湯船に浸かり前に抱いた敬一のおでこを撫であげる。

「企画展も見れて良かったなぁ。図録買ったけど原画にはやっぱり全然勝てないなって思ったなぁ。」

キュージの音楽もCDとライブじゃ全然違うもんね。と今日の事を思い出しているようだった。

「あとね…臣君が今日、キュージが僕の事大事にしてるのわかるって言ってくれた。」

恥ずかしそうに小さな声でいう敬一の顔を上向かせてキスをした。

「そう?……言っとくけど本当に臣とはこれ以上仲良くなるのは俺あんまり面白くない。」

帰り際、臣はわざわざ『俺…負けないですよ。』と言ってきた。

敬一の長年の自分への思いを舐めるなよとは思ったが、酔ってる敬一に手を出した時を思い出してしまう。

断れないのがわかってどんどん飲ませて酔い潰した。

酩酊したら小柄な敬一は力で臣には勝てない。

済し崩しに流されて泣く羽目になる。

一方的な想いが敬一が大切にしてきた気持ちを滅茶苦茶にしてしまう。

そうなれば敬一はずっと贖罪を繰り返し、後悔している姿を見せてくるだろうし、キュージも敬一を責めるかもしれない。

『はは…なぁ、臣。もし敬一に手を出したらどんな事なるかちゃんと考えろよ。お前の欲望に無理やり付き合わされて傷つくのは敬一だぞ…そうなったら…ただじゃおかないからな。』

もしそんなことがあったとしても俺は敬一を離さない。

睨み合いになり中野が慌ててすっ飛んできた。

『どええぇストップストップストップ!!!臣!お前もいい加減にキュージ挑発すんのやめろ!キュージも大人気ないのやめろ!見ろ、敬ちゃん青くなってんだろうが!』

あまりの険悪な空気に敬一が固まってしまい、中野は渋る臣を車に詰め込んで帰っていった。

「……ごめんねキュージ…僕思わせぶりな態度取らないようにちゃんと気をつける…。」

「嫌な言い方してごめんな…敬一盗られるんじゃないかって不安なんだよ。」

「そんなの…絶対ないもん…」

敬一が身体の向きを変えてキュージにキスをした。
真剣な眼差しがキュージを射る。

「僕はキュージしか見てない。ずっと…キュージしか見えてない。」

「敬一…嬉しい…。」

キュージは首の後ろに手をやり、相変わらず小さい頭だなと思いながらそのまま深いキスを返す。

敬一の腰を抱き、胸の尖に舌を這わせて吸うと鼻にかかった甘い声が漏れる。

「ぁ……は……キュージ……。」

敬一の反応したものが身体に当たり腰を離そうとするのを腕に力を込めて自分の身体に押し付ける。

「キュ…ジ…。」

切ない声が頭上から降って来る。

「のぼせるからあがろうか。」

大人の余裕なんて敬一の前では何一つ発揮されない。

敬一の見下ろして来る瞳は美しく、大勢の中で自分だけを一心に見つめてきた物と変わらずに視線を送ってくる…自分を真っ直ぐ見つめて来るこの目が大切で、何処にもやりたくなくて、誰にも触ってほしくなくて欲望に塗れた眼で見返してしまう。

大判のバスタオルで敬一を包み、自分は適当にふいてすぐに壁に敬一を押し付けて唇を貪った。

「捕まって。」

敬一の身体をタオルごとだかえあげてソファに寝ころばせる。

何度抱いても、どれだけ一緒に過ごしても飽きはしない。
それどころかどんどんのめり込んでいく。

汗ばんだ肌も、くぐもった甘い声も。

キュージだけしか知らない。

まえから腹の中を擦られて射精せずに何度も達して潤んだ瞳で天を仰ぐ。

「ァ………ぅ…………ッ!」

その度に中がビクついて震えているとこを何度も突いて責める。

「は…敬一……ッ!」

「ん…ン!!!ぁは………まって…!そこばっか……も………ッまっ……てぇ…!まってぇ…ぅ………ぁ"ッ!!」

腰を打ちつけるたびに音が鳴り、逃げようとする敬一の腰を押さえつけて何度も当て掘りしてイかせる。

「ひ…ん…!ァ………!アッ!!」

「…逃げないで。」

甘く高くなった声に触発されてキュージの凶暴な面が抑えきれずに出て来てしまう。

「ぅア"………ッ!!」

身体を固定されて逃げれずにまともに突きを何度もくらい、喘ぎに泣き声が混じる。

「敬一…敬一…ッ!」

「まって…!!まってぇ!!あ……は!!!まっ…て…ぇ!!ン"…ッ!!イッ………!ァ………!」

「ぁー…ヤバ…………ッ…中でイっていい…?」

「…ん……っ!ゔン…な……か…だし………てぇ……!」

泣きながら敬一が何度も頷いた。

射精を堪えながら強く中を穿ち、泣き声を洩らす唇を何度も塞ぐ。

「は…イき……そ………ッ」

「ぁ……は……も………だめ……ェ……」

抽挿が早くなりイきっぱなしにさせられている敬一はキュージの身体にしがみつきながら堪えようとしている。

キュージは絶頂で緊張する小柄な身体を強く抱き込んで揺すりながら腹の中の物を奥に押し付け射精した。

「ッ………!!」

「ァ………ぁ…ッ……ア………」

敬一は忙しなく息を吐きながらトロトロと前から精液を溢していた。

「ぅう………キュ…ジ…」

「はぁ…ごめん…泣かせちゃった…。」

敬一がしがみついて首を横に振る。
余韻が続いているのか、時折身体をひくつかせながら涙を溢していて、敬一をより幼く見せている。

キュージは抱きしめて頭や顔を撫でてキスをした。

「はー敬一かわい…」

俺だけの敬一だから。

「風呂入ったけど汗すごいし中に出したからシャワーしよ。」

「ん…。」

敬一はしがみついて頷くので精一杯でキュージにくっついたまま世話をしてもらった。

キュージが求めるならどんな事をされても構わないと言い切れるほどに敬一はキュージが大好きだった。

キュージ以外の誰かとこんな事をするだなんて事は考えられない。



「臣の入社はなくなりましたーーー!」

週明けに出社すると中野が笑いながらキレていた。

「あいつ、今朝なんつったと思う?他に内定貰ってるとこあるからそこに行くんだって!!しかも現代っ子爆発よ…スマホのメッセージで言って来やがった…」

那須から戻って解散した後、敬一のスマホに臣からメッセージが入っていた。

寝る前に気が付いてベッドの上で通知をタップすると"俺敬一君のこと好き。気持ちならキュージさんに絶対負けてない、敬一君のこと絶対大事にする、付き合いたい。"とあった。

いつもと違い絵文字も、スタンプもない文字の羅列に敬一は真剣に返事を返した。

"僕はキュージ以外考えられない。臣君とは付き合えない。"

そう打ち返すと胸がいっぱいになってキュージに抱きついた。

ありがとうも、ごめんねも違う。

きっとその言葉を使えば臣はいつか振り向くかもしれないと希望を持ってしまう予感がした。

泣いてる犬のスタンプだけが送り返されてきて、会話は終わった。

アイツ、断られるのわかってて告白したな。とキュージは言った。

「あの…僕のせいかもしれません…。」

「いやいやそれは無い、完全に臣が悪いよ…まてよ…俺もか…。臣が敬ちゃんの事気に入ってるのわかってて真面目に止めてなかったかも…。キュージがキレてんの珍しくて面白がっちゃったもん…敬ちゃんごめんなぁ。」

中野はゲンナリした顔で敬一に詫びた。

「まぁ、臣が入社して来たとしたらそのうち敬ちゃんキュージに仕事やめてとか言われそうだもんな…。」

「ははは。」

そんな事、と笑って返したが何度かその事でキュージと軽い言い合いになりそうになってしまったことがあった。

『もし臣が同じ職場入ってきたら俺流石に中野さんに言うかも。』

とどう諌めてもキュージは苛立った目をしたままだったからこれでよかったのかもしれない…。

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