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新しい扉が開く~!2
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しかし授業中も鞄の中にあるBL漫画に気を取られ、何度も鞄を開けては閉めをしてしまう。友人が「大丈夫?」と何度も心配そうに聞くが、そのたびに大丈夫と笑顔で応えていた。そんなことを繰り返し、遂に「気になる」という気持ちが我慢ができなくなった瑠璃子は、休憩時間になってトイレに駆け込むことになる。
男同士の絡みのある漫画だなんて、禁止目録のような気がした瑠璃子は、トイレで隠れて読まなければいけないと思い込んでいた。トイレの個室に入り、焦る気持ちを抑えながら、そっと鞄を開けて漫画を取り出して少し震える手でページを開く。一ページ、一ページ丁重に。
瑠璃子はどれ程の時間を掛けて読んだのだろうか。一時間か二時間か、それともたった一五分ほどだったのか、全く記憶にない。ただあっという間にページを捲り、舐めるようにページの隅々まで繰り返し読んでいた。鼓動は速くなり、何だか身体も熱い。
全て読み終わったときは、興奮で言葉が出ず、只々「はぁーー」と何度も息を吐き出す。ようやく出てきた言葉が「……と、尊い!」だったのだから。
自宅に戻った瑠璃子は、母親のBLコレクションを片っ端から読んだ。それから間もなく、母親とは週末に池袋に一緒に買い物にも出掛けるようになり、二人でBLカップルの話で盛り上がる。父親は妻が楽しければと文句も言わずに、彼女と瑠璃子のBL話を笑顔で聞いていた。
そんな日常は瑠璃子が就職して一人暮らしをするまで続く。
就職先の会社へ家からは遠くて通えないので、都内にマンションを借りて住むことにし、BL漫画は誰にも遠慮する必要もないので読む本も過激を極めていく。幾ら仲が良い母親相手にも、激しい描写のものは見せられない。母親はウットリするような「耽美」作が好きで、瑠璃子はガッツリ性描写ありが好きだった。実家では遠慮していた過激BL漫画が、本棚には隠すこともなく並んでいく圧巻の状態になっていく。一人暮らしは瑠璃子の性癖を全開にしていった。
そんな瑠璃子は現在二五歳。勿論、彼氏無し……。
「西浦さん。今日の朝礼で新しい課長が紹介されるんだって」
「へえ、そうなんだ……」
同課の女子社員は少し浮き足立っているようだが、瑠璃子にとって新しい課長も古い課長もどうでも良いこと。湖に落ちて女神が出てきても、「両方とも要りません!」と言えるなとほくそ笑む。それよりも、今夜放送の倒産危機に陥った航空会社の社員の葛藤ドラマの方が気になる。
――主人公の武田と同僚の木下を早く観たい! 今日はどんな熱い視線のやり取りがあるのか~! 身体は触れちゃう? グフフ……。
瑠璃子は最近では普通のアニメやドラマを見ていても、「腐った目」で観てしまうようになる。お気に入りのカプ(カップル)を見つけて、その二人の禁断のストーリーを想像しながら楽しむ。今のお気に入り、武田と木下のカプの薄い本を求めて、同人誌即売会にも出掛けるようになっていた。そう、瑠璃子は「生もの」もいける口なのだ。
「ねえ、西浦さん聞いている? 新しい課長ってスッゴい男前なんだって――」
「え? ああ、うん……。そうなんだ」
瑠璃子が視線を前に向けると、入り口から部長と背の高い男が入ってくる。その男はフワフワの柔らかそうな髪をなびかせて、皺ひとつない上質なスーツを纏い、綺麗に磨かれた革靴をカツカツと音を立てながら歩いていた。直ぐ側の部長の脂ぎった顔とは雲泥の差の美形で、室内の空気が一瞬で変わったのが分かる。
「今日から東京本社に移動になりました浮田です。これから皆さんとともに頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします」
瑠璃子の息が止まる。そしてグフッと音を出しそうになりながら、大きく息を吸った。目の前に現れたのは推しドラマの主人公、武田にそっくりな容姿の人物。これはどういうことだと、瑠璃子の思考が停止しそうになる。芸能人に似ている? いや、気のせいなのだろうか? だれも武田に似ているなんて言っていない? と言葉がグルグルと回っていた。
「西浦さん。君が浮田課長のアシスタントになるから。頼んだよ!」
部長の声は聞こえていたが、余りの驚きで声が直ぐに出ない瑠璃子は、少し間を置いて「……はい」と答えた。そう、これが瑠璃子の推しを愛でるモブ生活の始まりだったのだ。
男同士の絡みのある漫画だなんて、禁止目録のような気がした瑠璃子は、トイレで隠れて読まなければいけないと思い込んでいた。トイレの個室に入り、焦る気持ちを抑えながら、そっと鞄を開けて漫画を取り出して少し震える手でページを開く。一ページ、一ページ丁重に。
瑠璃子はどれ程の時間を掛けて読んだのだろうか。一時間か二時間か、それともたった一五分ほどだったのか、全く記憶にない。ただあっという間にページを捲り、舐めるようにページの隅々まで繰り返し読んでいた。鼓動は速くなり、何だか身体も熱い。
全て読み終わったときは、興奮で言葉が出ず、只々「はぁーー」と何度も息を吐き出す。ようやく出てきた言葉が「……と、尊い!」だったのだから。
自宅に戻った瑠璃子は、母親のBLコレクションを片っ端から読んだ。それから間もなく、母親とは週末に池袋に一緒に買い物にも出掛けるようになり、二人でBLカップルの話で盛り上がる。父親は妻が楽しければと文句も言わずに、彼女と瑠璃子のBL話を笑顔で聞いていた。
そんな日常は瑠璃子が就職して一人暮らしをするまで続く。
就職先の会社へ家からは遠くて通えないので、都内にマンションを借りて住むことにし、BL漫画は誰にも遠慮する必要もないので読む本も過激を極めていく。幾ら仲が良い母親相手にも、激しい描写のものは見せられない。母親はウットリするような「耽美」作が好きで、瑠璃子はガッツリ性描写ありが好きだった。実家では遠慮していた過激BL漫画が、本棚には隠すこともなく並んでいく圧巻の状態になっていく。一人暮らしは瑠璃子の性癖を全開にしていった。
そんな瑠璃子は現在二五歳。勿論、彼氏無し……。
「西浦さん。今日の朝礼で新しい課長が紹介されるんだって」
「へえ、そうなんだ……」
同課の女子社員は少し浮き足立っているようだが、瑠璃子にとって新しい課長も古い課長もどうでも良いこと。湖に落ちて女神が出てきても、「両方とも要りません!」と言えるなとほくそ笑む。それよりも、今夜放送の倒産危機に陥った航空会社の社員の葛藤ドラマの方が気になる。
――主人公の武田と同僚の木下を早く観たい! 今日はどんな熱い視線のやり取りがあるのか~! 身体は触れちゃう? グフフ……。
瑠璃子は最近では普通のアニメやドラマを見ていても、「腐った目」で観てしまうようになる。お気に入りのカプ(カップル)を見つけて、その二人の禁断のストーリーを想像しながら楽しむ。今のお気に入り、武田と木下のカプの薄い本を求めて、同人誌即売会にも出掛けるようになっていた。そう、瑠璃子は「生もの」もいける口なのだ。
「ねえ、西浦さん聞いている? 新しい課長ってスッゴい男前なんだって――」
「え? ああ、うん……。そうなんだ」
瑠璃子が視線を前に向けると、入り口から部長と背の高い男が入ってくる。その男はフワフワの柔らかそうな髪をなびかせて、皺ひとつない上質なスーツを纏い、綺麗に磨かれた革靴をカツカツと音を立てながら歩いていた。直ぐ側の部長の脂ぎった顔とは雲泥の差の美形で、室内の空気が一瞬で変わったのが分かる。
「今日から東京本社に移動になりました浮田です。これから皆さんとともに頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします」
瑠璃子の息が止まる。そしてグフッと音を出しそうになりながら、大きく息を吸った。目の前に現れたのは推しドラマの主人公、武田にそっくりな容姿の人物。これはどういうことだと、瑠璃子の思考が停止しそうになる。芸能人に似ている? いや、気のせいなのだろうか? だれも武田に似ているなんて言っていない? と言葉がグルグルと回っていた。
「西浦さん。君が浮田課長のアシスタントになるから。頼んだよ!」
部長の声は聞こえていたが、余りの驚きで声が直ぐに出ない瑠璃子は、少し間を置いて「……はい」と答えた。そう、これが瑠璃子の推しを愛でるモブ生活の始まりだったのだ。
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