推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!

寺原しんまる

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トイレは絶好の隠れ場所3

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 立派な下半身というのは男にとって自慢であるべきだろう。しかし浮田は過去の出来事から、他人に見せるのが怖くなった。綺麗な顔に似合わない凶悪な逸物は、どうやら女性には人気がないようだ。



 個室のドアをそっと開けて鏡の前に移動し、自分の顔を鏡越しに見つめた。



 ――人前でコレを勃たせるわけにはいかない! 平常心だ……。



「あ、浮田課長ですよね? 挨拶する前にトイレに行かれたので。俺、同じ課の田中勝まさるっていいます」



 田中はニカッと笑って手を差し伸べてきた。浮田は「ああ、よろしく」と返す。



「あれっすか? 緊張してトイレが近くなったってやつ? 俺も緊張しやすくて、トイレが近いんですよ。特にプレゼン前!」



 田中は物怖じしないタイプなのかもしれない。直感タイプというべきか……。



「いや、トイレが近い訳ではないんだよ……。ちょっと、精神統一が――」

「え? 課長って意識高い系なんですか? ヨガとかやっちゃう系? 課長、男前だしヨガマット持ってジムとか行くとモテるでしょう?」



 田中は人との距離感が掴めない人物なのか、ズカズカと土足で他人の領地を荒らすタイプなのかもしれない。驚いた浮田は少し後退りするが田中の質問は止まらない。



「課長、未婚ですよね? はは~ん、女は使い捨て状態でしょう。毎日取っ替え引っ替えかな。良いなあ、男前は」



 一言も言っていない! 否定も肯定もしていないのに、話が勝手に進んでいく。怖いと思った浮田は「ちょ、ちょっと待て!」と声を上げるが、田中は「じゃあ、先に席に戻っていますね」とトイレから出て行ってしまった。



「ち、違うんだ。取っ替え引っ替えだなんてあり得ない! 経験人数なんて……」



 浮田は目をギュッと瞑る。自分の過去の女性経験は少ない。年齢を重ねても王子様顔は衰えなく、その下に凶悪な下半身を持っている。そのギャップを見せるのが怖く、また女性に自分の異常な性癖がバレるのが怖くて一線を越えるのが……。



「俺の全てを知っても受け入れてくれる女性と付き合いたい……。泣くのじゃなくて、なじってくれるくらいの強い女性」



 そう、西浦さんなら「デカいだけですか? そこにぶら下がっているものは」とか言い放ちそうではないかと想像する。



「眼鏡を指で直しながら仁王立ちだと良いなあ……。手には革の鞭とか」



 浮田の下半身がピクリと反応した。しまった、また精神統一が必要になってしまったようだ。



「今度は社会人一年目のときのあの出来事を――」



 別の萎える出来事を思い出し、目を瞑って下半身を落ち着かせるのだった。
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