私がガチなのは内緒である

ありきた

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1章 私がガチなのは内緒である

3話 コンビニにて

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 これから何度もお世話になるであろう店に入り、アイス売り場で物色を始める。
 私はちょっと悩んでから、アイスの実を手に取った。
 さてと、発案者の萌恵ちゃんは――

「見て見て真菜! じゃがバター売ってる! レンジでチンするだけのやつ! うわっ、タピオカまであるじゃん! 最近のコンビニってすごいね!」

 本来の目的とは違うところで大興奮していた。
 気持ちは分かる。電子レンジ調理が可能な商品は年々増えているし、流行に乗ってタピオカドリンクがコーヒーやカフェオレに負けず劣らず棚を占領しているのはすごい。
 ただ、アイスは? アイスが食べたくて来たんじゃないの?

「あたしアイスじゃなくてこれにする」

 と、萌恵ちゃんはタピオカミルクティーを手に宣言。

「アイスはいいの?」

「んふふっ、真菜のやつもらうから大丈夫~」

「えー。じゃあ、萌恵ちゃんのも半分もらうよ?」

「もちろん! 節約しなきゃだし、半分こすれば二人とも同じように楽しめてお得だしね」

 お得かどうかはさておき、おおむねその通りだ。
 なにより、飲み物を分け合うということは自然に関節キスできる!

「萌恵ちゃんも節約とか考えてたんだね」

「失礼な! 真菜と一緒に暮らせるのすごく楽しみにしてたから、ママに怒られて家に連れ戻されないようにいろいろ考えてるんだよ」

「ごめんごめん、ちょっとからかっただけ。私もすごく楽しみにしてたよ。実際に楽しいし」

 感動で泣きそうになるのを堪える。
 萌恵ちゃんが私との同居をそんなにも望んでくれていたなんて、幸せ。

***

 会計を済ませて退店し、来た道を戻って家に向かう。
 最寄りのコンビニだから、同じ学校の生徒とすれ違うことが多かった。
 これからの高校生活、新しく友達ができたりするのだろうか。
 萌恵ちゃんがいれば満足というのが本音だけど、休みの日にみんなで遊んだりもしたい。

「真菜、あたしたちの愛の巣が見えてきたよ!」

「意味分かって言ってる?」

 迂闊に際どいこと言うと、危ないのは萌恵ちゃんだよ? 私が牙を剥いたら、責任は取るけど無事では済まないんだから。

「ん~、よく分かんない。真菜といっぱい愛を育む場所だから、間違ってないはず! 多分だけど」

「そうだねー」

 萌恵ちゃんが言う愛は友情の方だけど、素直に嬉しい。尋常じゃなく嬉しい。
 思い返せば、『同じアパートで別々の部屋を借りるならいっそ一緒に暮らせばいい』。そう提案してくれたのは萌恵ちゃんだった。
 生活を左右するような提案や、何気ない会話での一言。私が抱いている気持ちとは異なるものとはいえ、大好きな人が自分を求めてくれて悪い気がするわけがない。

「あからさまな棒読み! 真菜はあたしとイチャイチャしたくないの?」

 まったく、彼女は無自覚でこういうことを口走るからタチが悪い。
 なまじ付き合いが長くスキンシップも多めだったこともあり、一般的に友達同士で使わないような表現が飛び出るのだ。
 私としては役得というか幸福というかありがたい限りなんだけど、ドキドキしすぎて心臓によくない。

「さぁ、どうかな? とりあえず、帰ったらアイスの実をあーんして食べさせてあげるね」

「やった~っ、真菜の指ごと食べる!」

「それはやめて」

 即答で一蹴しつつ家の鍵を開ける。
 甘噛みよりちょっと強めぐらいなら、本当に食べてほしいなぁ。なんてことは、口が裂けても言えない。
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