私がガチなのは内緒である

ありきた

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3章 一線を越えても止まらない

18話 残り香

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 布団に寝転んだまま、天井を見る。いつもと変わらない、すっかり見慣れた景色だ。
 ついさっきまで隣で寝ていた萌恵ちゃんは、いま用を足している。
 わずかな間とはいえ、この場にいるのは私だけ。

「……萌恵ちゃん」

 口腔内で掻き消えてしまいそうなほどの小さな声で、ポツリとつぶやく。
 萌恵ちゃんが寝ていた場所に移動し、うつ伏せになって枕に顔を埋める。
 洗濯前の下着を拝借するのと比べればかわいらしい行為なのに、心臓が騒々しく脈を打つ。
限界まで息を吸い込む。私と同じシャンプーの香りと、この世で萌恵ちゃんだけが放つ特別な甘い匂いが鼻孔をくすぐった。
お腹の奥がキュンと熱を持つのを感じる。
素敵な芳香に胸が高鳴り、興奮が抑えられないのに……なぜか満たされない。
大好きな人のことを感じられて嬉しい反面、ここには存在しないのだと思うと切なくなる。
 夜中に自分を慰めるときの気持ちに似ていると、ふと思った。
 顔を離すと視界の端に小さな染みが映り、よだれを垂らす萌恵ちゃんの寝顔が脳裏によぎる。
 唾液なんて、普通は自分の物だとしても決してきれいな印象は持てないだろう。
 でも、私にとって萌恵ちゃんのそれは、どんなにおいしいジュースよりも魅力的だ。
 はしたない行為だと分かりながらも、わずかに湿り気の残る場所に唇を軽く当てる。
 萌恵ちゃんなら許してくれるはずだと、彼女の優しさに甘えて己の欲求を満たす。

「ごめんね、萌恵ちゃん」

 罪悪感から、自然と謝罪の言葉が漏れる。
 誰の耳にも届かない、ただの自己満足だ。
 無意識のうちに手が胸に向かい、パジャマの上から貧相な乳房に指を食い込ませる。
 大した快感が得られないのは、服越しだからという理由ではない。萌恵ちゃんに触れられていないからだ。
 衝動を堪え切れず自慰行為に耽るときだって、半ば強引に快楽を得ているに過ぎない。
 同じ行為でもこれが萌恵ちゃんの手であれば、簡単に絶頂を迎えてしまう。

「真菜~、お待たせ!」

「萌恵ちゃんっ」

 足音と共に声が聞こえた瞬間、私は跳ねるようにして起き上がり、リビングに戻った萌恵ちゃんに思いっきり抱き着く。

「んふふっ、どうしたの? あたしがいなくて、寂しくなっちゃったのかな~?」

「うん、すごく寂しかった。ちゅっ、ちゅっ」

 ぎゅう~っと抱きしめながら、喉や首筋にキスの雨を降らせる。
 柔らかくて、温かくて、いい匂い。
 顔も声もかわいくて、存在そのものが愛おしい。
 こうして抱擁を交わしているだけで、なにも食べなくても、寝なくても、ずっと生きていけそうな気がする。

「そ、そんなに長かった? 寂しい思いさせてごめんね、よしよし」

 萌恵ちゃんに優しく頭を撫でられ、ふにゃっと頬が緩んでしまう。
 ちなみに私が一人だった時間は、ほんの一分弱だった。
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