52 / 256
兄の縁談。
しおりを挟む
「………いつ見ても何て可愛いのかしら」
「ああ、リーシャの小さい頃そっくりだ」
パパンとママンは娘溺愛からするっと孫溺愛にシフトチェンジした。
カイルが生まれて半年。
ダークの血筋なのか、やたらと成長が早い。
既にハイハイから掴まるものがあればたっちまで出来る。
「まー」(ママ)、「ぱー」(パパ)、「うー」(ルーシー)、「んま」(まんま)まで言える。
「めっ」(ダメ)と「まーしゅ」(いただきます)、「ったまー」(ごちそうさま)など、日々言える言葉は省略形だが増えている。
私が子供の頃は、一歳まではハイハイ位でたっちもギリギリといった感じ、話すのもそれから半年位は後だったと聞いたので、かなり早い方だと思う。
両親は、「ばー」「じー」を覚えさせようと必死である。
ルーシーが先に呼ばれるようになったことが悔しいらしい。
接してる時間が違うのだからしょうがないと思うのだが、孫バカとしては納得いかないのだろう。
ちなみに、ダークのお義父様も生まれて一週間ほどで顔を見に来てくれたが、カイルに会う時には何故か口にスカーフを巻いて、顔をなるべく近づけないようにしていた。
「こんな不細工なのがじーさんだと分かったら可哀想じゃないか。こんなに可愛い子の目が汚れる」
とアホな事を言うので、
「お義父様、うちの旦那様も同じような事を言って、なるべく顔を背けながら抱っこしたりしてたのでグーパンしました。
目線を合わせてもらえない方がカイルが嫌われてると思うんじゃないかなと。
それに顔の好みは千差万別ですし」
と、強制的にスカーフを外してもらった。
「本当に、こんないい娘さんがうちなんかの嫁に来てくれて………」
またしても号泣された。
つくづく親子だなあ、と納得した。
うちのパパンは、開き直り系の不細工|(いやイケメンですけどね)のようで、
「いやはや、私みたいなのに妻が貰えただけでも御の字なのに、美人で性格もいいときましてね。奇跡ってのは起きるもんですよ。本当に幸福者ですよええ」
などと伯爵と言うより商人のような気さくさで接するため、敵も作らないし、妬まれる事も少ないようだ。
うちのダークやお義父様みたいにぶっちぎりの不細工になると風当たりは強いんだけど。神のごとき美貌なのにねえ。
じーばー作戦が苦戦している中、紅茶とクッキーを運んできたルーシーに、ゼンマイのオモチャみたいにハイスピードなハイハイで近寄ったカイルが、
「うー」
とニコニコ笑ってスカートに掴まり立ちした時点で、今日のじーばー作戦は諦めたようだ。
ママンの舌打ちが聞こえたような気がした。
◇ ◇ ◇
「えー、お茶会?イヤよー、私そういうの苦手だって知ってるでしょう?」
今回はただの孫遊びではなく、別の用件があったようだ。
「実はな、マークスに縁談が来ているんだよ」
「兄様に?」
そうか。考えてみたら兄様も23である。
この国ではアッサリ顔のイケメンだし、私なんかより先に結婚しててもおかしくないほどモテていた。
本人は、仕事が楽しいからまだ先でいいとか以前遊びにきた時に言っていたが、跡取りの事も考えるとそう呑気なことも言ってられないのだろう。
どんなお嬢様なのかしら。
未来のお義姉様になる人である。
大いに気になる。
「………どこの方なの?」
「カレイド伯爵のお嬢様なのよ。レベッカ嬢。リーシャも会った事あるんじゃない?同い年だそうよ」
………うーん、記憶にない。
私にとって社交はダークを落とすためだけの儀式みたいなものだったからなー。
「覚えてないわ申し訳ないけど。どんな方なの?」
「評判は悪くないんだ。美人だそうだし」
家格も同レベルで美人で年頃もばっちりと。文句なしじゃないか。
「ただ顔に拘ると、リーシャの時のルイ君みたいなのもいたし、ちょっと躊躇してしまうんだよ」
あー、コケシのルイルイね。
前にフランが話していたが、少し女性恐怖症気味らしい。見合いをする毎に相手に、
「君はいきなり自分の顔とか切りつけたりしないよね?」
とか言って不気味がられているらしい。
私の言動が大分トラウマになったようで申し訳ないが、後悔はしていない。
「お茶会に彼女が来るのね?」
「そうなんだ。リーシャは人妻にはなったが、未だに社交界でもびいせんの女神とか神の愛し子とか言われてるらしくて、お茶会にもホイホイ入れてくれたよ」
「私の返事を聞く前にひどいじゃないの」
まだ消えてないのかびいせんの女神。
「でも、私達が行ったら明らかに見定めに来てるみたいじゃないの。世代も違うし」
ママンの言うことも尤もだけどもね。
既に生活が子持ちの母親目線なのに、そんな若々しい集まりに行くのはどうなのかしら。話が合う自信がない。
「とりあえずほら、レベッカ嬢が良さそうな子かどうかだけでも見極めてきて!お願いよリーシャ」
「………分かったわよ」
兄様の為だ。仕方ない、一肌脱ぎますか。
「ああ、リーシャの小さい頃そっくりだ」
パパンとママンは娘溺愛からするっと孫溺愛にシフトチェンジした。
カイルが生まれて半年。
ダークの血筋なのか、やたらと成長が早い。
既にハイハイから掴まるものがあればたっちまで出来る。
「まー」(ママ)、「ぱー」(パパ)、「うー」(ルーシー)、「んま」(まんま)まで言える。
「めっ」(ダメ)と「まーしゅ」(いただきます)、「ったまー」(ごちそうさま)など、日々言える言葉は省略形だが増えている。
私が子供の頃は、一歳まではハイハイ位でたっちもギリギリといった感じ、話すのもそれから半年位は後だったと聞いたので、かなり早い方だと思う。
両親は、「ばー」「じー」を覚えさせようと必死である。
ルーシーが先に呼ばれるようになったことが悔しいらしい。
接してる時間が違うのだからしょうがないと思うのだが、孫バカとしては納得いかないのだろう。
ちなみに、ダークのお義父様も生まれて一週間ほどで顔を見に来てくれたが、カイルに会う時には何故か口にスカーフを巻いて、顔をなるべく近づけないようにしていた。
「こんな不細工なのがじーさんだと分かったら可哀想じゃないか。こんなに可愛い子の目が汚れる」
とアホな事を言うので、
「お義父様、うちの旦那様も同じような事を言って、なるべく顔を背けながら抱っこしたりしてたのでグーパンしました。
目線を合わせてもらえない方がカイルが嫌われてると思うんじゃないかなと。
それに顔の好みは千差万別ですし」
と、強制的にスカーフを外してもらった。
「本当に、こんないい娘さんがうちなんかの嫁に来てくれて………」
またしても号泣された。
つくづく親子だなあ、と納得した。
うちのパパンは、開き直り系の不細工|(いやイケメンですけどね)のようで、
「いやはや、私みたいなのに妻が貰えただけでも御の字なのに、美人で性格もいいときましてね。奇跡ってのは起きるもんですよ。本当に幸福者ですよええ」
などと伯爵と言うより商人のような気さくさで接するため、敵も作らないし、妬まれる事も少ないようだ。
うちのダークやお義父様みたいにぶっちぎりの不細工になると風当たりは強いんだけど。神のごとき美貌なのにねえ。
じーばー作戦が苦戦している中、紅茶とクッキーを運んできたルーシーに、ゼンマイのオモチャみたいにハイスピードなハイハイで近寄ったカイルが、
「うー」
とニコニコ笑ってスカートに掴まり立ちした時点で、今日のじーばー作戦は諦めたようだ。
ママンの舌打ちが聞こえたような気がした。
◇ ◇ ◇
「えー、お茶会?イヤよー、私そういうの苦手だって知ってるでしょう?」
今回はただの孫遊びではなく、別の用件があったようだ。
「実はな、マークスに縁談が来ているんだよ」
「兄様に?」
そうか。考えてみたら兄様も23である。
この国ではアッサリ顔のイケメンだし、私なんかより先に結婚しててもおかしくないほどモテていた。
本人は、仕事が楽しいからまだ先でいいとか以前遊びにきた時に言っていたが、跡取りの事も考えるとそう呑気なことも言ってられないのだろう。
どんなお嬢様なのかしら。
未来のお義姉様になる人である。
大いに気になる。
「………どこの方なの?」
「カレイド伯爵のお嬢様なのよ。レベッカ嬢。リーシャも会った事あるんじゃない?同い年だそうよ」
………うーん、記憶にない。
私にとって社交はダークを落とすためだけの儀式みたいなものだったからなー。
「覚えてないわ申し訳ないけど。どんな方なの?」
「評判は悪くないんだ。美人だそうだし」
家格も同レベルで美人で年頃もばっちりと。文句なしじゃないか。
「ただ顔に拘ると、リーシャの時のルイ君みたいなのもいたし、ちょっと躊躇してしまうんだよ」
あー、コケシのルイルイね。
前にフランが話していたが、少し女性恐怖症気味らしい。見合いをする毎に相手に、
「君はいきなり自分の顔とか切りつけたりしないよね?」
とか言って不気味がられているらしい。
私の言動が大分トラウマになったようで申し訳ないが、後悔はしていない。
「お茶会に彼女が来るのね?」
「そうなんだ。リーシャは人妻にはなったが、未だに社交界でもびいせんの女神とか神の愛し子とか言われてるらしくて、お茶会にもホイホイ入れてくれたよ」
「私の返事を聞く前にひどいじゃないの」
まだ消えてないのかびいせんの女神。
「でも、私達が行ったら明らかに見定めに来てるみたいじゃないの。世代も違うし」
ママンの言うことも尤もだけどもね。
既に生活が子持ちの母親目線なのに、そんな若々しい集まりに行くのはどうなのかしら。話が合う自信がない。
「とりあえずほら、レベッカ嬢が良さそうな子かどうかだけでも見極めてきて!お願いよリーシャ」
「………分かったわよ」
兄様の為だ。仕方ない、一肌脱ぎますか。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
1,389
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる