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平和だねえ
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二時間ちょっとで到着した山頂には快い風が流れていて、汗ばんだ顔にも心地良かった。
「うわー、良い景色ですね!」
山頂は元々王国でキャンプなどが出来るように平地にならしてあり、旅行者がテントを張ったりすることもあるようだ。丸太を輪切りにしたようなテーブルと椅子もある。
たまたまカップルのような男女がいたが、食事を終えてちょうど下って行くところだったようで、通り過ぎる際に会釈して行った。今日は他に人もいないようだ。
遠くに水平線が見えて私は少し興奮する。
「ケヴィンさん、向こうに海がありますよね。行くと遠いですか?」
プニプニした猫を地面に下ろしていたケヴィンが「ん?」と言う顔をして、私の指差す方向を見る。
「ああ、そんなに時間は掛からないが……いや、馬車で二時間ぐらいは掛かるかも知れないな。海が好きなのかトウコは?」
「いや、ええと、まあ」
実はそんなに好きではない。だって自分が死んだのも海だから。
でも海は自分が日本で最期に過ごしていた場所だし、何の根拠もないけれど、細い糸で日本と繋がっているような気がしてしまう。望郷の念、と言う言葉を小説で読んだ時には今一つピンと来なかったけれど、この国で暮らすようになってから少し分かるような気がする。
戻りたいけれど、もう戻れない場所。
……いけない、しんみりするところだったわ。
「それじゃ、お昼にしましょうか」
「そうだな。──おいお前たち、昼飯の準備だ」
ケヴィンが部下たちに指示をすると、彼らは運んでいた猫を下ろして、テキパキと丸太テーブルの上にシートを広げ準備を始めた。
「ジュリアン様、ナイトを下ろして手を拭いて下さいね。ニーナ様も」
私はジュリアンとニーナにおしぼりを渡す。
『おいトウコ、俺らの飯くれー腹減ったぁー』
ナイトが私の足元に近寄って来る。
「はいはい、ちょっと待ってねお水も入れるから。水は大皿に入れるからみんなで飲んでね」
鞄から大き目の皿を取り出すと水筒から水を注ぐ。食事はリクエストがあったスモークチキンだ。猫たちの数だけ使い捨ての紙皿を出して細かく裂いたチキンを置いて行く。
「お待たせ。沢山食べてね」
みんなに声を掛けると、ナイトが偉そうに皆に告げる。
『ほら、みんな大好きなチキンだぞ。ちゃんとトウコに礼を言ってから食えよ』
ニャー、ナオー、などと私に向かって鳴きながらガツガツと食べ始める子たちを見て、彼らとも話が出来れば良かったのになあ、と少し残念になる。
おっと、ぼんやりしている場合ではない。
シートや飲み物の準備をしている騎士団の人たちの準備も終わりそうなので、私も大きめの籠をケヴィンから受け取り、テーブルに並べ始めた。
本日は白身魚の唐揚げとジャガイモとチーズのオムレツにソーセージ、野菜サラダと焼きベーコンのサンドイッチだ。品数は少ないが、人数が人数だけにかなり時間が掛かってしまったので許して欲しい部分である。
「……美味そうだな」
ジュリアンがサンドイッチを包んでいた紙をはがして頬張る。
「美味い。期待通りだ」
「あはは、大したものではないのですが。……さあニーナ様もどうぞ」
「ありがとう! でも太っちゃわないかしら、こんなにカロリー高そうなの食べて」
彼女は笑顔で受け取ると、そう言いながらもサンドイッチを頬張り、ピックで唐揚げを食べたりと食欲旺盛だ。
「美味しいわあ。屋外で食べるといつもより美味しく感じるのは何故なのかしらねえ」
「解放感、でしょうかねえ?」
私はそんな返事を返しつつ、騎士団の皆さんやケヴィンにもランチを配る。
「おお、美味そうだ」
「俺も匂いだけで腹が鳴りそうで困ったよ」
騎士団の人たちはどのぐらい食べるのか分からないので、大きなバスケットに山盛りで各おかずを詰め込んで、サンドイッチだけは個別に渡して後はピックでお好きな物を、という形でお願いした。
沢山作り過ぎたかも、と見ていたが、物凄い勢いで無くなって行くのでホッとした。どうやら味も気に入って貰えたらしい。
私もジュリアンとニーナのテーブルに腰掛けて、自分もサンドイッチを頬張る。
うん、美味しい。
天気も良いし、ご飯は美味しい。ナイトたちも喜んでがっついている。
ジュリアンも表情こそあれだけど楽しんでいる雰囲気は伝わるし、ニーナは見るからにご機嫌だ。
これでジュリアンが「外に出るのもいいものだ」などと考えて、これからも表に出るのを嫌がらないようになってくれればいいのになあ……。
──平和でいいなあ。
そう、思っていたのだ。帰り道までは。
「うわー、良い景色ですね!」
山頂は元々王国でキャンプなどが出来るように平地にならしてあり、旅行者がテントを張ったりすることもあるようだ。丸太を輪切りにしたようなテーブルと椅子もある。
たまたまカップルのような男女がいたが、食事を終えてちょうど下って行くところだったようで、通り過ぎる際に会釈して行った。今日は他に人もいないようだ。
遠くに水平線が見えて私は少し興奮する。
「ケヴィンさん、向こうに海がありますよね。行くと遠いですか?」
プニプニした猫を地面に下ろしていたケヴィンが「ん?」と言う顔をして、私の指差す方向を見る。
「ああ、そんなに時間は掛からないが……いや、馬車で二時間ぐらいは掛かるかも知れないな。海が好きなのかトウコは?」
「いや、ええと、まあ」
実はそんなに好きではない。だって自分が死んだのも海だから。
でも海は自分が日本で最期に過ごしていた場所だし、何の根拠もないけれど、細い糸で日本と繋がっているような気がしてしまう。望郷の念、と言う言葉を小説で読んだ時には今一つピンと来なかったけれど、この国で暮らすようになってから少し分かるような気がする。
戻りたいけれど、もう戻れない場所。
……いけない、しんみりするところだったわ。
「それじゃ、お昼にしましょうか」
「そうだな。──おいお前たち、昼飯の準備だ」
ケヴィンが部下たちに指示をすると、彼らは運んでいた猫を下ろして、テキパキと丸太テーブルの上にシートを広げ準備を始めた。
「ジュリアン様、ナイトを下ろして手を拭いて下さいね。ニーナ様も」
私はジュリアンとニーナにおしぼりを渡す。
『おいトウコ、俺らの飯くれー腹減ったぁー』
ナイトが私の足元に近寄って来る。
「はいはい、ちょっと待ってねお水も入れるから。水は大皿に入れるからみんなで飲んでね」
鞄から大き目の皿を取り出すと水筒から水を注ぐ。食事はリクエストがあったスモークチキンだ。猫たちの数だけ使い捨ての紙皿を出して細かく裂いたチキンを置いて行く。
「お待たせ。沢山食べてね」
みんなに声を掛けると、ナイトが偉そうに皆に告げる。
『ほら、みんな大好きなチキンだぞ。ちゃんとトウコに礼を言ってから食えよ』
ニャー、ナオー、などと私に向かって鳴きながらガツガツと食べ始める子たちを見て、彼らとも話が出来れば良かったのになあ、と少し残念になる。
おっと、ぼんやりしている場合ではない。
シートや飲み物の準備をしている騎士団の人たちの準備も終わりそうなので、私も大きめの籠をケヴィンから受け取り、テーブルに並べ始めた。
本日は白身魚の唐揚げとジャガイモとチーズのオムレツにソーセージ、野菜サラダと焼きベーコンのサンドイッチだ。品数は少ないが、人数が人数だけにかなり時間が掛かってしまったので許して欲しい部分である。
「……美味そうだな」
ジュリアンがサンドイッチを包んでいた紙をはがして頬張る。
「美味い。期待通りだ」
「あはは、大したものではないのですが。……さあニーナ様もどうぞ」
「ありがとう! でも太っちゃわないかしら、こんなにカロリー高そうなの食べて」
彼女は笑顔で受け取ると、そう言いながらもサンドイッチを頬張り、ピックで唐揚げを食べたりと食欲旺盛だ。
「美味しいわあ。屋外で食べるといつもより美味しく感じるのは何故なのかしらねえ」
「解放感、でしょうかねえ?」
私はそんな返事を返しつつ、騎士団の皆さんやケヴィンにもランチを配る。
「おお、美味そうだ」
「俺も匂いだけで腹が鳴りそうで困ったよ」
騎士団の人たちはどのぐらい食べるのか分からないので、大きなバスケットに山盛りで各おかずを詰め込んで、サンドイッチだけは個別に渡して後はピックでお好きな物を、という形でお願いした。
沢山作り過ぎたかも、と見ていたが、物凄い勢いで無くなって行くのでホッとした。どうやら味も気に入って貰えたらしい。
私もジュリアンとニーナのテーブルに腰掛けて、自分もサンドイッチを頬張る。
うん、美味しい。
天気も良いし、ご飯は美味しい。ナイトたちも喜んでがっついている。
ジュリアンも表情こそあれだけど楽しんでいる雰囲気は伝わるし、ニーナは見るからにご機嫌だ。
これでジュリアンが「外に出るのもいいものだ」などと考えて、これからも表に出るのを嫌がらないようになってくれればいいのになあ……。
──平和でいいなあ。
そう、思っていたのだ。帰り道までは。
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