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平和じゃなかったねえ
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私たちがのんびりと景色を楽しみながら食事をし、雑談していると、空がどんよりと曇って来た。
「──雨になりそうだ。特に山は天候も変わりやすいしな。……ジュリアン様、ニーナ様、そろそろ戻られた方が良いかも知れません」
ケヴィンがしばらく空を見上げた後で、食後の猫たちを撫でていたジュリアンとニーナに声を掛けた。
「……そうだな。また来ればいい」
「そうね。雨具は天気良かったから持って来てなかったし」
ジュリアンたちが頷くと、騎士団の人たちも手早く後片付けをし荷物を背負う。
今度は疲れたのではなく、ただ眠たくて歩きたくない猫たちを一匹ずつ抱えて山を下りることになった。私は相変わらずノーキャットである。ちょっと寂しい。
『なあ王子様よお、帰りはトウコの方でいいよ俺』
「……とナイトが申しておりますがジュリアン様」
しっかりとまたナイトを抱えたジュリアンが首を横に振る。
「トウコも荷物などを運んで疲れているのだ。ワガママを言ってはダメだぞナイト」
『あーそっかあ。そんじゃ仕方ないな』
いや、私そんなこと言ってませんよ。当事者抜きで話を進めないで下さいよ。
とは言え、私も早起きしてランチを作った上に、険しいとまでは言えないが慣れない山登りで疲れているのは確かだ。荷物はとても軽くなったが少々眠いし。まあジュリアンも気遣ってくれているのだから、ここはお言葉に甘えておこうかな。
皆で歩いていると、空からゴロゴロと音がした。
「やだ、雷ですかね」
雷雨は一時でも物凄い大雨になることもあるので、皆は少し早足になったが、それから短時間でぼたぼたっとした雨が降って来て、すぐに土砂降りになった。
「少し木の下で雨宿りしましょう」
ケヴィンがそう言い、近くの大きな木の下に誘導した。
「……すごい降り方だな」
雷がピカッと光ったと思うと、どーんと少し離れたところで雷が落ちる音がする。
雨は木の葉でしのげはするが、確か大木に雷が落ちたニュースを以前見たことがある。
「あまり木の幹の近くにはいない方が良いと思います。背の高い木だと落雷することもあるので」
私は皆にそう言って少し荷物を幹から離す。近くにいたジュリアンがいったんナイトを地面に下ろして一緒に手伝ってくれた。
「ありがとうございます」
「いや」
「天候はどうにも出来ないですけど、今日は少々災難でしたね。でも、これに懲りずにまた外出しましょうね。たまには王宮の外に出るも良いものだと思います」
「……そうだな。楽しかった」
穏やかな顔のジュリアンを見て一安心した私だったが、彼の背後の枝を見てぎょっとした。
大きなミツバチの巣があったからだ。ハチも外側に何匹も止まっている。
「……ジュリアン様、あまり大きな動きをしないでゆっくりこちらの方へ」
「──どうした?」
「ミツバチの巣が近くにありますので、下手に興奮させると刺されるかも知れません」
「うわっっ! ハチは、ハチはダメだ! 以前刺されて熱を出して数日寝込んだことがある!」
パニックになったジュリアンが腕を振り回して大声を上げるとしゃがみ込んだ。
まずい。ハチの羽音が活発になって、数十匹が巣穴から出て来た。
ジュリアンの声に驚いたケヴィンが、濡れてしまった装備を拭いていた手を止めこちらに走って来る。
「ケヴィンさん、ジュリアン様をお願いします! ハチの巣があるのでシート出してジュリアン様が刺されないように覆って下さい! ハチのアレルギーを持っておられるかも知れませんので」
「分かった!」
恐怖で頭を抱え、腰が抜けたようになっているジュリアンを抱えたケヴィンが、引きずるようにして彼を連れて行った。以前アナフィラキシー症状を出したのであれば、今回刺されたら命に関わるかも知れない。そりゃ恐怖だろう。
(……ただ、私もハチが得意って訳じゃないんだけどね)
飛び回っているハチをジュリアンの方へ近寄らせないように、籠から出したタオルを振り回していたが、二、三カ所刺されてしまった。あんたたち乙女になんてことすんのよもう! 恨んでやるわ。
「おいトウコ! お前も危ないから離れろ! 俺たちが巣を落として燃やすから!」
「はい!」
ケヴィンの声で私も巣のある場所から離れようとしたが、近くの石に足を取られてコケた。
……だけなら良かったが、コケた先が斜面になっており、雨のせいで濡れてしまった地面でバランスを崩した。
「んぎゃっ」
と斜面を転がり落ちて行く途中でナイトとケヴィンの声が聞こえたが、木の根っこに頭をぶつけた私は、あまりの痛みに気が遠くなって、その後の記憶はない。
目が覚めると、そこは寮の自分の部屋ではなく、王宮の立派なゲストルームのベッドの上であった。
「──雨になりそうだ。特に山は天候も変わりやすいしな。……ジュリアン様、ニーナ様、そろそろ戻られた方が良いかも知れません」
ケヴィンがしばらく空を見上げた後で、食後の猫たちを撫でていたジュリアンとニーナに声を掛けた。
「……そうだな。また来ればいい」
「そうね。雨具は天気良かったから持って来てなかったし」
ジュリアンたちが頷くと、騎士団の人たちも手早く後片付けをし荷物を背負う。
今度は疲れたのではなく、ただ眠たくて歩きたくない猫たちを一匹ずつ抱えて山を下りることになった。私は相変わらずノーキャットである。ちょっと寂しい。
『なあ王子様よお、帰りはトウコの方でいいよ俺』
「……とナイトが申しておりますがジュリアン様」
しっかりとまたナイトを抱えたジュリアンが首を横に振る。
「トウコも荷物などを運んで疲れているのだ。ワガママを言ってはダメだぞナイト」
『あーそっかあ。そんじゃ仕方ないな』
いや、私そんなこと言ってませんよ。当事者抜きで話を進めないで下さいよ。
とは言え、私も早起きしてランチを作った上に、険しいとまでは言えないが慣れない山登りで疲れているのは確かだ。荷物はとても軽くなったが少々眠いし。まあジュリアンも気遣ってくれているのだから、ここはお言葉に甘えておこうかな。
皆で歩いていると、空からゴロゴロと音がした。
「やだ、雷ですかね」
雷雨は一時でも物凄い大雨になることもあるので、皆は少し早足になったが、それから短時間でぼたぼたっとした雨が降って来て、すぐに土砂降りになった。
「少し木の下で雨宿りしましょう」
ケヴィンがそう言い、近くの大きな木の下に誘導した。
「……すごい降り方だな」
雷がピカッと光ったと思うと、どーんと少し離れたところで雷が落ちる音がする。
雨は木の葉でしのげはするが、確か大木に雷が落ちたニュースを以前見たことがある。
「あまり木の幹の近くにはいない方が良いと思います。背の高い木だと落雷することもあるので」
私は皆にそう言って少し荷物を幹から離す。近くにいたジュリアンがいったんナイトを地面に下ろして一緒に手伝ってくれた。
「ありがとうございます」
「いや」
「天候はどうにも出来ないですけど、今日は少々災難でしたね。でも、これに懲りずにまた外出しましょうね。たまには王宮の外に出るも良いものだと思います」
「……そうだな。楽しかった」
穏やかな顔のジュリアンを見て一安心した私だったが、彼の背後の枝を見てぎょっとした。
大きなミツバチの巣があったからだ。ハチも外側に何匹も止まっている。
「……ジュリアン様、あまり大きな動きをしないでゆっくりこちらの方へ」
「──どうした?」
「ミツバチの巣が近くにありますので、下手に興奮させると刺されるかも知れません」
「うわっっ! ハチは、ハチはダメだ! 以前刺されて熱を出して数日寝込んだことがある!」
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まずい。ハチの羽音が活発になって、数十匹が巣穴から出て来た。
ジュリアンの声に驚いたケヴィンが、濡れてしまった装備を拭いていた手を止めこちらに走って来る。
「ケヴィンさん、ジュリアン様をお願いします! ハチの巣があるのでシート出してジュリアン様が刺されないように覆って下さい! ハチのアレルギーを持っておられるかも知れませんので」
「分かった!」
恐怖で頭を抱え、腰が抜けたようになっているジュリアンを抱えたケヴィンが、引きずるようにして彼を連れて行った。以前アナフィラキシー症状を出したのであれば、今回刺されたら命に関わるかも知れない。そりゃ恐怖だろう。
(……ただ、私もハチが得意って訳じゃないんだけどね)
飛び回っているハチをジュリアンの方へ近寄らせないように、籠から出したタオルを振り回していたが、二、三カ所刺されてしまった。あんたたち乙女になんてことすんのよもう! 恨んでやるわ。
「おいトウコ! お前も危ないから離れろ! 俺たちが巣を落として燃やすから!」
「はい!」
ケヴィンの声で私も巣のある場所から離れようとしたが、近くの石に足を取られてコケた。
……だけなら良かったが、コケた先が斜面になっており、雨のせいで濡れてしまった地面でバランスを崩した。
「んぎゃっ」
と斜面を転がり落ちて行く途中でナイトとケヴィンの声が聞こえたが、木の根っこに頭をぶつけた私は、あまりの痛みに気が遠くなって、その後の記憶はない。
目が覚めると、そこは寮の自分の部屋ではなく、王宮の立派なゲストルームのベッドの上であった。
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