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連載
ハルカとミリアンの誘拐【6】
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「………おおおおおおっ………」
「………初めて見る………上からの景色………」
軽ガラスに張り付くようにして外を眺めている横のケルヴィンとテンを見やり、プルが、
「あー、そうか、ガルバン帝国ん時には留守番頼んでたしなぁ。クロノス船は初乗りか」
とクラインにやれやれお子様だなこいつら、といった風情で笑った。
「あの暴風の時には景色を見る余裕はなかったが、今回は軽ガラスのお陰で風は防げるし快適だな」
「僕の開発の賜物ですからね、感謝してもらいませんと」
ケルヴィンがフフッ、とクラインに笑いかけた。
クロノスがレストランで体力補給し、一度家に戻った。
今回も子供がいるシャイナさんと、太郎次郎花子はお留守番である。
ラウールも今回行きたかったようだが、か弱い女子供だけだと物騒な事があると困るとクロノスが強く抗議したため、ボディーガード代わりに残ることになった。
[くれぐれも、くれっぐれもシャイナさんにちょっかい出さないようになラウール。本当は俺が守りてえってのに俺以外に飛べないときた]
《これクロノス、ワシはいくら美人でも友達の想い竜に手を出すほど落ちぶれてはおらんぞ》
[恋はな、するもんじゃねえ。堕ちるもんなんだよ。シャイナさんの周りにはそんな報われない流れ星が一杯あんだよ]
《ほう、じゃあお前も流れ星にならんとええのう》
[………ぜってえ殺す。帰ってきたら432回目のバトルな]
《ほー、確か400回以上はワシの勝ちじゃったがまだ懲りないのかのう》
「アホか、397回だよっ。計算の出来ないボケ老人が!」
《……誰がボケ老人だと?………良かろう。帰ってきたらワシにボコボコにされるがよい。398回目の勝利は決まっとるがの》
大人気ない口喧嘩を二人がしてるうちにピーターさんから軽ガラス装備の移動籠が届き、荷物を運び込んでの出発である。
「ローリーの町の方向から抜けてくだろうから、30分か40分くらいで追いつくかな」
クラインは景色を見るのを止め、トラに話しかけた。
『距離的にそんなものではないでしょうか。まあパラッツォに着く前には片をつけたいですね』
ナイフを研いでいるトラに、どう片をつけるのかは敢えて聞かないでおいた。
まああのハルカの事だから簡単にはやられないし、精霊もついてるから慌てなくてもいい事は分かってるが、訳の分からん男が側にいるのはとても気に入らないのだ。
「へいお兄さん、何眉間にシワが寄ってるんだ~い?」
プルが景色を見るのも飽きたのか、フワフワと飛んできてからかった。
「大丈夫だって。ハルカは転生者なんだから、そう簡単にはどうこうならんって」
「そうは言うがな、ハルカは転生者の割りに色んな厄介事に巻き込まれ過ぎじゃないか」
「しょうがないじゃんか。そういう性質なんだし。大体な、国の王子が転生して初っぱなから絡んで来てるのも厄介事と言わないか。まあ誰とは言わないけど」
「………ぐっ………」
「なに今気がついた、みたいな顔してんだよ。あーお前も王子だったなー」
「………………」
「はい、エアー矢を胸から抜く振りするの止めれ。傷ついたアピールは要らんぞ同情しないし。どうせ厄介事だろうと何だろうと諦めるつもりなんか無いんだろう?」
「………………(コクリ)」
「もう面倒くさいからとっととコクれ。鬱陶しい顔を始終されてもかなわないぞ俺様は」
「そうはいってもだなお義父さん」
「だからお義父さんじゃねえ!!告白1つ出来ないヘタレがっ!」
ぺちぺちっ、と頬を叩かれクラインは俯いた。簡単に出来れば苦労はないのだ。
[おーい、下見てくれー。2台の馬車が結構なスピードで走ってるんだけど、アレかねー?]
クロノスの念話が届き、クラインとプルも慌てて軽ガラスに張り付く。
森の細い道をかなりの速度で走ってる馬車が確かに見える。
「アレだな。ハルカの精霊の気配もあるし」
プルがそう言うと、クロノスに進行を邪魔するように降りるよう指示をした。
「ま、とりあえずハルカとミリアン迎えに行くか。皆さーん、準備はいいですかー」
プルがケルヴィン達に呼び掛けると、
「当然でしょう」
「………殲滅………」
『さっさと終わらせましょう。店も忙しいんですし。キャッチ&デストローイ』
若干物騒な言葉が返ってきた。
「ほら、クラインも情けねえ面してないで行くぞ」
「ああ」
クロノスが急降下する。
ハルカ、ミリアン奪還作戦は、幕を上げたのだった。
「………初めて見る………上からの景色………」
軽ガラスに張り付くようにして外を眺めている横のケルヴィンとテンを見やり、プルが、
「あー、そうか、ガルバン帝国ん時には留守番頼んでたしなぁ。クロノス船は初乗りか」
とクラインにやれやれお子様だなこいつら、といった風情で笑った。
「あの暴風の時には景色を見る余裕はなかったが、今回は軽ガラスのお陰で風は防げるし快適だな」
「僕の開発の賜物ですからね、感謝してもらいませんと」
ケルヴィンがフフッ、とクラインに笑いかけた。
クロノスがレストランで体力補給し、一度家に戻った。
今回も子供がいるシャイナさんと、太郎次郎花子はお留守番である。
ラウールも今回行きたかったようだが、か弱い女子供だけだと物騒な事があると困るとクロノスが強く抗議したため、ボディーガード代わりに残ることになった。
[くれぐれも、くれっぐれもシャイナさんにちょっかい出さないようになラウール。本当は俺が守りてえってのに俺以外に飛べないときた]
《これクロノス、ワシはいくら美人でも友達の想い竜に手を出すほど落ちぶれてはおらんぞ》
[恋はな、するもんじゃねえ。堕ちるもんなんだよ。シャイナさんの周りにはそんな報われない流れ星が一杯あんだよ]
《ほう、じゃあお前も流れ星にならんとええのう》
[………ぜってえ殺す。帰ってきたら432回目のバトルな]
《ほー、確か400回以上はワシの勝ちじゃったがまだ懲りないのかのう》
「アホか、397回だよっ。計算の出来ないボケ老人が!」
《……誰がボケ老人だと?………良かろう。帰ってきたらワシにボコボコにされるがよい。398回目の勝利は決まっとるがの》
大人気ない口喧嘩を二人がしてるうちにピーターさんから軽ガラス装備の移動籠が届き、荷物を運び込んでの出発である。
「ローリーの町の方向から抜けてくだろうから、30分か40分くらいで追いつくかな」
クラインは景色を見るのを止め、トラに話しかけた。
『距離的にそんなものではないでしょうか。まあパラッツォに着く前には片をつけたいですね』
ナイフを研いでいるトラに、どう片をつけるのかは敢えて聞かないでおいた。
まああのハルカの事だから簡単にはやられないし、精霊もついてるから慌てなくてもいい事は分かってるが、訳の分からん男が側にいるのはとても気に入らないのだ。
「へいお兄さん、何眉間にシワが寄ってるんだ~い?」
プルが景色を見るのも飽きたのか、フワフワと飛んできてからかった。
「大丈夫だって。ハルカは転生者なんだから、そう簡単にはどうこうならんって」
「そうは言うがな、ハルカは転生者の割りに色んな厄介事に巻き込まれ過ぎじゃないか」
「しょうがないじゃんか。そういう性質なんだし。大体な、国の王子が転生して初っぱなから絡んで来てるのも厄介事と言わないか。まあ誰とは言わないけど」
「………ぐっ………」
「なに今気がついた、みたいな顔してんだよ。あーお前も王子だったなー」
「………………」
「はい、エアー矢を胸から抜く振りするの止めれ。傷ついたアピールは要らんぞ同情しないし。どうせ厄介事だろうと何だろうと諦めるつもりなんか無いんだろう?」
「………………(コクリ)」
「もう面倒くさいからとっととコクれ。鬱陶しい顔を始終されてもかなわないぞ俺様は」
「そうはいってもだなお義父さん」
「だからお義父さんじゃねえ!!告白1つ出来ないヘタレがっ!」
ぺちぺちっ、と頬を叩かれクラインは俯いた。簡単に出来れば苦労はないのだ。
[おーい、下見てくれー。2台の馬車が結構なスピードで走ってるんだけど、アレかねー?]
クロノスの念話が届き、クラインとプルも慌てて軽ガラスに張り付く。
森の細い道をかなりの速度で走ってる馬車が確かに見える。
「アレだな。ハルカの精霊の気配もあるし」
プルがそう言うと、クロノスに進行を邪魔するように降りるよう指示をした。
「ま、とりあえずハルカとミリアン迎えに行くか。皆さーん、準備はいいですかー」
プルがケルヴィン達に呼び掛けると、
「当然でしょう」
「………殲滅………」
『さっさと終わらせましょう。店も忙しいんですし。キャッチ&デストローイ』
若干物騒な言葉が返ってきた。
「ほら、クラインも情けねえ面してないで行くぞ」
「ああ」
クロノスが急降下する。
ハルカ、ミリアン奪還作戦は、幕を上げたのだった。
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