運命とは強く儚くて

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Ⅱ -8

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「居心地はどうだ?」

「静かで良いところです。…王宮からそう離れてはいないのにゆっくりできて」

ベッドの上で、皇帝の胸の中にすっぽり入って一緒に書物を読んでいる。
せっかく2人でいられるのだからと皇帝直々にこの国の内情や外交などを教えてもらっているが、初めて知ることが沢山だ。

それにしても…

「…陛下がとてもいい匂いです」

「そうか?…俺から言わせればお前の方がずっと甘い香りがする。ずっと嗅いでいたら酔ってしまいそうだ」

「離れます?」

「いや、酔わせてくれ」

擽るように腹を抱いてくる彼に笑いを漏らす。
大事を取って早めに離れに来たが、まだ発情は始まらない。
予定ではあと2日かかるが、これ程陽者の皇帝と一緒にいて早まらないものだろうか。

「発情期が終わったら行きたいところがあるんです」

「ほう?…言ってみろ」

「僕の祖国に…デニスを連れて兄さんと姉さんのお墓に行きたくて」

「なるほど。…それは俺も行きたい、手配をしておこう」

デニスとあの国を出た時、デニスはまだ赤ん坊だった。バタバタとしていたし、もう一度お墓に行きたい、デニスに祖国を見せたい。

「ありがとうございます」

「お前の兄も姉も、俺の義理の姉と兄だ。…それにデニスに祖国を見せたいだろう」

「…僕も思ってました。一緒ですね」

二人だからか、少し甘えるように言ってしまう。
優しく微笑んだ皇帝と軽いキスを交わし、再度本に目を落とす。

「…もう戦はしないんですか」

「そうだな…もう目的はある程度果たした」

「目的?」

「…まず、お前を見つけること。…それと、近隣で情勢が悪かったり何かしら問題がある国を属国にして正す。…それが目的だ」

「だが、決してそれが良いこととは一概に思わない。人が死んだのは事実、俺を恨む者も多かろう」と自嘲するように付け足した皇帝の手を握る。

確かに1度は恨み、恐れたかもしれない。

皇帝が国に攻め込まなければ兄さんも、もしかしたら姉さんも死ななくて、4人で暮らしていたかもしれない。

けれど国の貧富の差はとても激しくて、今は貧困層も暮らして行けるように整えられていると聞いている。他の国も同じだ。
皇帝に助けられた者もいる。

「…本当なら陛下は僕の仇かもしれません。けど僕はあなたを愛してます、陛下が成してきたことを今一番近くで見て、陛下の苦労を一番見ているつもりです」

「陛下は立派です」と頭を撫でてみると皇帝の顔が少年のように綻びる。

「お前にこうして頭を撫でられるのは好きだ。…もうずっと昔、まだ幼子の頃母にされた時のようだ」

もっと、と言わんばかりに頭を擦り寄せる陛下の頭を優しく撫で続ける。
確か彼は幼い頃に両親を無くしている。叔父が皇帝を引き継いだとかで随分寂しい思いをされただろう。
兄弟も近しい親戚もそれ程いなかったのだろうから尚更。

「甘やかさせてください。…僕がうんと陛下を甘やかしますから」

そう言って彼をデニスにするように抱きしめた。
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