123 / 219
37
..
しおりを挟む「すみません、お邪魔しました」
「いえいえ、手伝ってくれてありがとう。また来てね」
「透さん、俺蓮のこと送ってくる」
辺りはすっかり暗くなってしまった。
お土産を持たせた蓮君を送るという咲夜君を送り出し、床掃除を始めようと2階へ上がった。
引越しってホコリもゴミもたくさん出るからなぁ、なんて思いながら部屋を見るとすっかり綺麗になっていた。
…出る幕なし。
まとめてあったダンボールだけでも運び出しておこうと紐を取りに下へ降りていったところに、丁度潤也さんと湧が帰ってくる。
今日は水族館に行ってきたとの事だ。駆け寄ってきた湧を抱き上げて潤也さんともおかえりなさいのハグをする。
「たぁいまー!」
「おかえり、楽しかった?。…潤也さん、お疲れ様です」
「あぁ、俺も楽しかったから。…甥とその友達の面倒まで見てもらってすまないな」
「いえ、2人ともしっかりしてて僕の出る幕なしでした。一緒に暮らすのが楽しみです」
ご飯の作りがいがある。
2人が手を洗っている間に2階のダンボールを縛ってよいしょよいしょと玄関へ運んでいく。
階段がキツい。
「透、大丈夫か?」
「はい、大丈夫…っ!」
気を取られて足がもつれてしまった。
階段を踏み外して体が宙に浮く。
「っと、危ない。…気をつけてくれ、お前が怪我をしたら悲しい」
痛さを覚悟していたが潤也さんが受け止めてくれたらしい。
息がかかるほど近い彼に今更ながら照れながら「ありがとうございます」と降ろしてもらう。
「俺が運んでおくよ」
「ありがとうございます。…夕飯の支度しますね」
近くでイルカのぬいぐるみを振り回していた湧を連れてリビングへと戻り夕食の用意を始める。
用意と言っても料理自体はほとんど完成なのであとひとつ工程を加えるくらいだ。
「ただいま…です」
「おかえり。敬語じゃなくていいよ」
「おかぁい!」
そうこうしていると咲夜君も帰宅してきて湧と遊んでくれている。
今日は泊まっていくらしい。
ほとんどこちらに荷物を持ってきてしまったから仕方がないといえば仕方がない。
「手伝います」
「ありがとう、えっとね…湧のこと見ててくれると助かるかな、今テンションMAXで何するか分からないから」
「わかりました」
湧はご機嫌で、相変わらずぬいぐるみを握りしめてぴょんぴょん飛び跳ねたり歌ったり踊ったり、テンションは最高潮だ。
「湧君、俺と遊ぼう」とお兄さんのように湧に付き合ってくれる。
自分の兄さんも自分が小さい頃はあんなのだったのかなぁ、なんて。
過保護で少し鬱陶しい…という記憶しかない。
優しくて面白い、いい人なんだけどそれがたまに傷だ。
「はい、ご飯出来たよ。席についてくださーい」
潤也さんもやってきて、4人揃って食卓に並んだ。
16
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる