エレメント

第一章 黒猫の夢？

十二話

「それは、コイツらが、起きてから教えてもらおう。その前に、夕飯の用意するか、お前は、どうする？」

[俺はいいや、何でか腹減らないんだよなぁ]

「そうなのか？少しぐらい食べた方が良くないか？」

[どうなんだろ？まぁ、出来たの見て、食べたいと思ったら、ちょっと、貰うかも]

「なんだかなぁ、まぁ、いいか、そいつらのこと見ててくれよ」

[おう、気がついたら呼ぶよ]

 このマンション部屋は、三LDK―

 玄関を入って直ぐ左に物置き的な小部屋その横に、トイレ、洗面所やお風呂場がある。そして、廊下をはさんで反対側に、十二畳が一部屋、六畳が二部屋あり、その奥に、二十畳のLDKと、ちょっと、広めなベランダがある。
 
 俺は、ダイニング部分を抜け、キッチン部分に入り、何を作るか考える。腹は、減っているんだが、それより気になることがあって、あまり、作る気がしない。
 朝の事を思いだし、米を研ぎ炊飯器にセットしてしまう。で、今日は…冷蔵庫から、使いかけの野菜や、ベーコン、チーズをだし、賽の目切りにして、全体に、軽く塩コショウしておき、オーブンを温める。ボールに、小麦粉、ベーキングパウダー、砂糖、塩、サラダ油を入れ、少し硬めの生地を作り、切って置いたものと合わせて、型に流し込んで、オーブンに入れた。
 
 ケークサレ…野菜も肉も炭水化物も、一気に取れる優れもので、瑞樹の好物だ。
 ばあちゃんが、畑仕事の合間のお茶の時に、よく作ってくれた。と、言っても、ばあちゃんのは、ベーキングパウダーは、入ってなくて、フライパンで焼くおせんべいだった。そこから、俺が、ベーキングパウダーを加えてオーブンで焼いてみたら、好評で、家での定番おやつになった。
 その後に、レシピサイトで「ケーク-サレ」と、名前がついてる事を知った。いや、もっと、近いのはソーダブレッドと言うクイックブレッドの方に近いらしいが、言いやすさから、家では、ケークサレと、言ってる
 作り方も簡単だし、オーブンに入れてしまえばほっとけるからな、そうしておいて、さっさっと、道具を洗い。リビングに戻る。

「どうだ？」

[まだ、起きないよ。もう、出来たのか？]

「ケークサレにした、今、焼いてるとこだ」

[えっ、ケークサレなら、食べようかなぁ]

「ああ、皆で…」

 と、そこで、ケータイが鳴った。
 正兄からだ。
しかも、その音に反応して、妖精達が目を覚ましてしまった。
 妖精達は、瑞樹に任せ、俺は、電話に出る。

「もしもし、早かったね」

「おう、何とか仕事の区切りつけたから、明日、日本に帰る。ただ、遅い便しか空きがなくて、長野に、帰るのは明後日になるけど、大丈夫か？」

「えっ、そんな早く帰ってこれるの？正兄こそ、大丈夫？」

「だって、瑞樹が、大変なんだろ？電話じゃ言えないなんて言うし、とにかく、明後日には帰るから」

「分かった。ありがとね」

「おう、何があったか分からんが、ちゃんと、休めよ。おやすみ」

「うん、おやすみ」

 [正兄、何だって？]

「明後日には、帰って来られるって」

[そっか、良かったぁ～]

 正兄が帰ってきたら、直ぐに、解決するような事じゃないのは、分かっているけれど、やはり、頼りになる人にいてほしい。