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第三章 節約生活
六十四話
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「ただいまぁって、メチャいい匂い、パン屋でも開くの?」
「…正兄にも言われたよ。みんなで作っていたら、ついね…」
「ついって…」
二人揃って同じ反応…血の繋がりってスゴいね。
「それより、ダリルくんは?何か用事?」
「あっ、いや、いるよ…」
今日も、大量の野菜を貰って来たので、それを受け取りながら、瑞樹に姿の見えないダリルくんの事を聞いてみる。
困り顔になった瑞樹が胸のポケットを指差す。見ると少し膨らんでいて、覗きこむと、ダリルくんは、膝を抱えて丸まっていて、なにやら落ち込んでいるようだった。
「え?どうしたんだ?何があった?」
俺の声に驚いたのか、ビクッとして、姿が消えたけど、ポケットは膨らんだままだから、そこにいるのだろう。
「それが、ダリルくんだと、瞬間移動出来ないらしいんだよ」
「そうなのか?」
「なんか、進化がどうとか、もっと、人間について勉強しておけば良かったとか言ってた…」
「進化?人間は、二足歩行になって、火や道具を使うようになってから、そんなに変わらないんじゃないのか?」
「正兄、そうはいっても、千五百年以上?だっけ?それだけ長い年月経っていれば、変わっているでしょう」
「ん?そうか、基本的な部分は変わらないと思うけど…」
「多分、脳細胞の再構築が出来ないのだと思います」
「え?キルさん―うわっと」
瞬間移動が、出来ない理由だと思う事を、口にしたキルさんの頭に、ポケットから飛び出したダリルくんが、抱きついたんだけど、勢いよすぎでキルさんがそのまま倒れてしまった。しかも、後ろのカウンターに、もろにぶつかってしまって…ダリルくん、強すぎ…
「だっ、大丈夫?怪我は?」
「光輝様、お忘れですか?私達に物理的攻撃は、通用しません」
「攻撃って…あっ、あれ?でも、ダリルくんが抱きついて、倒おれたのは、なんで?」
「視覚情報上、倒れた方が不自然ではない状況だと、判断したので」
「「………」」
「んん?なに?どういう事?」
「慣れるしかない!」
そう言いきった正兄に頷き、瑞樹には、簡単な説明をして、汗を流して来るように言って、夕飯の準備をする。
ピザ生地に、サルサソース、ソーセージやベーコン、唐辛子を効かせたピクルスものせ、チーズをたっぷりかけてオーブンに入れる。これは、正兄好み。
瑞樹好みのは、同じくサルサソースに、更に、スライスした玉葱をたっぷりのせて、ツナをまぶして、チーズをのせる。こちらは、キルさんに任せて。
変わり種で、ピザ生地だけ焼いたものを一口サイズに切り、その上に、茄子の味噌炒めをのせたものと、マヨネーズをぬりベビーリーフをのせ、粉チーズをかけたものも並べる。
「おお、今日は、ピザパーティーか、いいね」
正兄は、瑞樹が貰ってきた野菜の中に、青唐辛子があったので、それを数本取り出して、ビール片手に、グリルで焼いている。
ちなみに、妖精さん達もビールに興味をもったようだけど、正兄が、お猪口で味見をさせたら、一斉に顔をしかめて、元気がなくなってしまった。どうやら苦味が苦手みたいだ。ももんぐさんは『そんなものより、果実酒が旨いぞ』と、力説していた。そして、俺に向かって『もちろん、作れるじゃろ?』なんて聞いてきた。
俺、まだ未成年なんだけど……
「…正兄にも言われたよ。みんなで作っていたら、ついね…」
「ついって…」
二人揃って同じ反応…血の繋がりってスゴいね。
「それより、ダリルくんは?何か用事?」
「あっ、いや、いるよ…」
今日も、大量の野菜を貰って来たので、それを受け取りながら、瑞樹に姿の見えないダリルくんの事を聞いてみる。
困り顔になった瑞樹が胸のポケットを指差す。見ると少し膨らんでいて、覗きこむと、ダリルくんは、膝を抱えて丸まっていて、なにやら落ち込んでいるようだった。
「え?どうしたんだ?何があった?」
俺の声に驚いたのか、ビクッとして、姿が消えたけど、ポケットは膨らんだままだから、そこにいるのだろう。
「それが、ダリルくんだと、瞬間移動出来ないらしいんだよ」
「そうなのか?」
「なんか、進化がどうとか、もっと、人間について勉強しておけば良かったとか言ってた…」
「進化?人間は、二足歩行になって、火や道具を使うようになってから、そんなに変わらないんじゃないのか?」
「正兄、そうはいっても、千五百年以上?だっけ?それだけ長い年月経っていれば、変わっているでしょう」
「ん?そうか、基本的な部分は変わらないと思うけど…」
「多分、脳細胞の再構築が出来ないのだと思います」
「え?キルさん―うわっと」
瞬間移動が、出来ない理由だと思う事を、口にしたキルさんの頭に、ポケットから飛び出したダリルくんが、抱きついたんだけど、勢いよすぎでキルさんがそのまま倒れてしまった。しかも、後ろのカウンターに、もろにぶつかってしまって…ダリルくん、強すぎ…
「だっ、大丈夫?怪我は?」
「光輝様、お忘れですか?私達に物理的攻撃は、通用しません」
「攻撃って…あっ、あれ?でも、ダリルくんが抱きついて、倒おれたのは、なんで?」
「視覚情報上、倒れた方が不自然ではない状況だと、判断したので」
「「………」」
「んん?なに?どういう事?」
「慣れるしかない!」
そう言いきった正兄に頷き、瑞樹には、簡単な説明をして、汗を流して来るように言って、夕飯の準備をする。
ピザ生地に、サルサソース、ソーセージやベーコン、唐辛子を効かせたピクルスものせ、チーズをたっぷりかけてオーブンに入れる。これは、正兄好み。
瑞樹好みのは、同じくサルサソースに、更に、スライスした玉葱をたっぷりのせて、ツナをまぶして、チーズをのせる。こちらは、キルさんに任せて。
変わり種で、ピザ生地だけ焼いたものを一口サイズに切り、その上に、茄子の味噌炒めをのせたものと、マヨネーズをぬりベビーリーフをのせ、粉チーズをかけたものも並べる。
「おお、今日は、ピザパーティーか、いいね」
正兄は、瑞樹が貰ってきた野菜の中に、青唐辛子があったので、それを数本取り出して、ビール片手に、グリルで焼いている。
ちなみに、妖精さん達もビールに興味をもったようだけど、正兄が、お猪口で味見をさせたら、一斉に顔をしかめて、元気がなくなってしまった。どうやら苦味が苦手みたいだ。ももんぐさんは『そんなものより、果実酒が旨いぞ』と、力説していた。そして、俺に向かって『もちろん、作れるじゃろ?』なんて聞いてきた。
俺、まだ未成年なんだけど……
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