エレメント

kaoru

文字の大きさ
86 / 125
第三章 節約生活

六十七話

しおりを挟む
 「うわっと、ちょ、ファラム?」

 俺の言葉に、キルさんとダリルくんが反応して、ファラムに視線を向けたら、ファラムが驚いて、姿を消した。それと、同時に後ろの髪を引っ張られ、ちょっと、ふらつきながら頭の後ろに手を回すと、小さいファラムが、ヒシッと抱きついてきた。

「ちょっと、二人とも目がヤバイよ。ファラムが、怖がってる」

「申し訳ありません。しかし、ダリルが干渉出来なかったのに、ファラムが出来るとは…」

「水と油なんだから、僕より相性良くないハズなのに…なんで?」

「そういえば、そうだ。ファラム、わかる?」

  右手の親指にしがみついてるファラムは、ブンブンと音がしそうなほど、激しく首を左右にふる。

「石油使ってないんじゃないか?なんかあっただろ、天然素材だかなんだかの袋」

「あー、なんかあったね。植木鉢も、土に埋めれば分解してくれるとかいう、プラスチックみたいなの」

 正兄と瑞樹が、何やらヒントをくれる。

「えっと、確か、ファラムが持ってきたのは、これだよな」

 キッチンの引き出しから、今朝、レモンが入っていた袋を出してきて、ダリルくんに渡す。

「あっ、本当に、石油系ではないようです。これなら、僕も、干渉可能です。こういうものなら、普通に持って移動出来ますね」

「そういうことか、しかし、人間の創造力は凄いですね」

「うん、凄いね。僕達も造ることは好きだけど、ここまで、複雑ではないかならぁ…後は、アルフの能力だけど、アルフは、肉体に対して、干渉可能だと思う?」

「どうだろう。確かに、この中では、アルフが一番適応力があるが、物質に関してはお前が一番だろう」

「だよねー、僕が出来ないのに、アルフが出来るとは思えない。でも、瑞樹様が言うように、同化の術も肉体に作用するものだから…っ!」

 キルさんとダリルくんが話していると、なにかに気づいて、ダリルくんが、瑞樹に走りより、膝をついて、瑞樹の身体を触り何かを確認し出した。

「瑞樹様!トルト王と同化してから、頭痛とか、身体に異変はありませんか?記憶障害とかもございませんか?」

「えっ、べっ、別になんともないけど?」

「本当に?」

「うん。特に変わったりもしてないと、思うよ」

「良かった~」

「いや、ダリル、安心はできないぞ。ももんぐさんが、交通事故の時、時間が経ってから出る症状の方が厄介だと仰っていたし、本にも、徐々に進行する病気が書かれていた。油断しない方がいい」

「ももんぐさん、本当ですか?」

『んぁ?』

 正兄の晩酌に付き合っていたももんぐさんが、急に話をふられて戸惑っている。

『い、いや、ワシはよう知らんぞ。ただ、人間どもが、事故というものは、後から出る症状の方が厄介だと言っていたのじゃ。正也さんや、そうなのかい?』

「えっ、ああ、まぁ、そう言いますね。頭とか打った時、内出血とかしてると、時間が経ってから症状が出る場合があるから、一週間位は、注意して見てるように言われますね。それに、脳細胞は他の細胞と違って再生出来ないとも聞いてますし…でも…」

『でも、なんじゃ?』

「いえ、精霊達の力ではないとすると、瑞樹の身体に干渉したのは、トルト王って事になりますよね?今まで、トルト王の話を聞いてないけど、一度、トルト王と話をした方が良いのかなと思ったんですが、どう思います?」

『他国の妖怪は、ようわからんでなぁ…ワシの知り合いの猫又は、話が通じるが、他の奴等は、悪さをする者もおるでなぁ、お主らは、どう思う?』

「そうですねぇ、猫族は人間と仲の良い者達が多かったですが、中には、人間から迫害を受けたせいで、恨んでいる者達もいますから、余りおすすめは出来ません」

「黒猫だから迫害を受けた可能性があるか…」

『でも、アヤツ、尾があったぞ』

「「「?」」」

「ももんぐさん、それどういう意味です?」

『ん?知らんのか?この国じゃ、昔、尾があると妖力がつくと言って、仔猫のうちに尾を切っておったのじゃぞ。そんなこと、関係ないのにのう。痛い思いをしたから、さんざ、愚痴っておったぞ』

「そんな事してたんだ…」

「なんか、可愛そうだね」

「確かに。でも、狐なんかも、妖力が高い方がしっぽの数が多いと言うしな」

『ああ、九尾か、しかし、アヤツらは、歳を重ねるごとに妖力が貯まるから、尾が増えるだけじゃぞ。まぁ、溜まり具合で、早い遅いがあるがの』

「えっ、そうなんですか?九尾の狐は凄い妖術が使えるとかありましたけど?」

「そりゃぁ、中には勉強熱心な者がおるでな。そういう者は、妖術を学び…まぁ、覚えたら、使いたくなるのじゃろ、人間どもは、面白い反応をしてくれるからのう。人間だって、同じ環境で育っても、個性というものが出るでわないか、一匹だけ見て判断するのはどうかと思うぞ」

「そういうことなのか?」

 正兄がなんか腑に落ちないという感じで、考えこんでしまった。
 話が脱線したけど、人間が猫になるなんて異常事態があったんだから…

「後遺症か、ちょっと、心配だなぁ」

「うん、なんか、不安になってきた…トルト王に、話、聞いた方がよくない?」

「出来れば、聞きたいな」

「まぁ、私達がいるので、悪さをすることはないでしょうし、一度話をしてみますか?」

「そうだね。お願いできる?」

「はい、でも、アルフが封印したので、アルフの帰りを待たないと…」

 あっ、そうでした。








 



 



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完】お兄ちゃんは私を甘く戴く

Bu-cha
恋愛
親同士の再婚予定により、社宅の隣の部屋でほぼ一緒に暮らしていた。 血が繋がっていないから、結婚出来る。 私はお兄ちゃんと妹で結婚がしたい。 お兄ちゃん、私を戴いて・・・? ※妹が暴走しておりますので、ラブシーン多めになりそうです。 苦手な方はご注意くださいませ。 関連物語 『可愛くて美味しい真理姉』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高13位 『拳に愛を込めて』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高29位 『秋の夜長に見る恋の夢』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高17位 『交際0日で結婚!指輪ゲットを目指しラスボスを攻略してゲームをクリア』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位 『幼馴染みの小太郎君が、今日も私の眼鏡を外す』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高8位 『女社長紅葉(32)の雷は稲妻を光らせる』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 44位 『女神達が愛した弟』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高66位 『ムラムラムラムラモヤモヤモヤモヤ今日も秘書は止まらない』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高32位 私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。 伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。 物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...