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第一章 碧玉
七話
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この前、山を下りたのは何時だっただろう?確か、二月程前だった。年老いた山羊と父さんが狩った獣と母さんが織った布を売るために父さんと一緒に来て。そのお金で、塩と小麦粉を買った。
それと綺麗な貝殻で作ったボタンを三つ、今日の…誕生日のお祝いに、そのボタンを付けた服を作ってもらったのに、袖を通すのを楽しみにしていたのに…
本当は、こんなこと考えてる場合ではないけど…
「今は、気の済むまで泣いていいよ。我慢することはない」
抱き上げられた腕のなかで考えていたら、また涙が溢れてきて、食いしばって流れないようにしていたら、先生が優しく背を叩きそう言った。そしたら、さっき散々泣いたハズなのに、また、次から次へと涙が溢れてきた。
山から下りて直ぐに見える小さな赤い三角屋根の建物がこの地の教会だ。その先に三十戸あまりの小さな集落。この島に住むのはわずか八十人程で半数が漁関係者の家族で、後は、海から採れる貝や珊瑚、亀の甲羅なんかで装飾品を造る職人、家具や生活用品の職人や商人とその家族、後、冒険者と言われる何でも屋、依頼を受けてこの島の特産品の買い出しや固有種の動物や植物を採りに地元人でない者も数名滞在している。
教会の横にある先生が暮らす小屋に入ると甘い匂いが満ちていて、薪オーブンで、何か焼いていたらしい女性が振り向いた。
「あらあら、フーちゃんどうしたの?怪我でもしたの?」
先生よりちょっと黒っぽい栗色の髪に碧の眼で母さんより背が低くてちょっとふっくらしてる年配の女性…確か、マーヤさんと呼ばれていた。旦那さんは、腕のよい船乗りで、マーヤさんは、教会で先生の手伝いをしている。
そのマーヤさんが、先生にしがみついてるワタシを見て声をあげた。
ちょっと、ビクッとしたワタシの背を、先生が、大丈夫と言うように二回軽く叩いた。
「ちょっとね。マーヤさん悪いけど、フーが食べられそうな物があるかな?」
「ちょうど良かった。先生と子供達のオヤツにとキャロットケーキを焼いたところなんですよ。沢山あるから遠慮しないで食べなよ」
そう言って、大きなテーブルについたワタシの前で焼けたばかりの大きなケーキを二つ取り出して、その一つを型から外して小さく切りわけて、ホカホカと湯気が立つケーキと、ちょっと酸味のあるローズヒップのお茶を出してくれた。
そして、更に煮出したローズヒップの液を外の湧き水で冷して布に染み込ませた。
手をつけずにいるワタシを見て…
「まだ、食べる気分じゃないのかい?ケーキも少し冷めた方が美味しいからねぇ。じゃあ、先に腫れた目を治そうね」
と、言って冷たい布を当ててくれた。
冷たくて気持ちが良いし…いい香り…
「…マーヤさん、ありがとっ…」
「ん、大丈夫だから、無理して話さなくていいよ」
それと綺麗な貝殻で作ったボタンを三つ、今日の…誕生日のお祝いに、そのボタンを付けた服を作ってもらったのに、袖を通すのを楽しみにしていたのに…
本当は、こんなこと考えてる場合ではないけど…
「今は、気の済むまで泣いていいよ。我慢することはない」
抱き上げられた腕のなかで考えていたら、また涙が溢れてきて、食いしばって流れないようにしていたら、先生が優しく背を叩きそう言った。そしたら、さっき散々泣いたハズなのに、また、次から次へと涙が溢れてきた。
山から下りて直ぐに見える小さな赤い三角屋根の建物がこの地の教会だ。その先に三十戸あまりの小さな集落。この島に住むのはわずか八十人程で半数が漁関係者の家族で、後は、海から採れる貝や珊瑚、亀の甲羅なんかで装飾品を造る職人、家具や生活用品の職人や商人とその家族、後、冒険者と言われる何でも屋、依頼を受けてこの島の特産品の買い出しや固有種の動物や植物を採りに地元人でない者も数名滞在している。
教会の横にある先生が暮らす小屋に入ると甘い匂いが満ちていて、薪オーブンで、何か焼いていたらしい女性が振り向いた。
「あらあら、フーちゃんどうしたの?怪我でもしたの?」
先生よりちょっと黒っぽい栗色の髪に碧の眼で母さんより背が低くてちょっとふっくらしてる年配の女性…確か、マーヤさんと呼ばれていた。旦那さんは、腕のよい船乗りで、マーヤさんは、教会で先生の手伝いをしている。
そのマーヤさんが、先生にしがみついてるワタシを見て声をあげた。
ちょっと、ビクッとしたワタシの背を、先生が、大丈夫と言うように二回軽く叩いた。
「ちょっとね。マーヤさん悪いけど、フーが食べられそうな物があるかな?」
「ちょうど良かった。先生と子供達のオヤツにとキャロットケーキを焼いたところなんですよ。沢山あるから遠慮しないで食べなよ」
そう言って、大きなテーブルについたワタシの前で焼けたばかりの大きなケーキを二つ取り出して、その一つを型から外して小さく切りわけて、ホカホカと湯気が立つケーキと、ちょっと酸味のあるローズヒップのお茶を出してくれた。
そして、更に煮出したローズヒップの液を外の湧き水で冷して布に染み込ませた。
手をつけずにいるワタシを見て…
「まだ、食べる気分じゃないのかい?ケーキも少し冷めた方が美味しいからねぇ。じゃあ、先に腫れた目を治そうね」
と、言って冷たい布を当ててくれた。
冷たくて気持ちが良いし…いい香り…
「…マーヤさん、ありがとっ…」
「ん、大丈夫だから、無理して話さなくていいよ」
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