僕が女子バスケットボール部のマネージャーに!?~親友の身代わりとして何でもするって言ったけど、その彼女まで迫ってくるのはなぜ?

まよな柑

文字の大きさ
65 / 112
6本目 女子バスケットボール部員の告白

香織さんの秘密 64-10

しおりを挟む

「す、好き? とか、そんな……」

 動揺して、洗い物をする手が止まってしまった。

 あれ? でも、よく考えると、好きでもない相手と取っ替え引っ替えしている方が変なのだろうか……?

 あたふたしている僕に香織さんは小さく笑って、更に質問してくる。
「誰が好みのタイプだ、とか?」

「ええと、僕は……」

 好みのタイプは、あなたです――なんて言えない。だって僕は、成美さんの下着を盗もうとして捕まった変態で、部員たちに次々と体を許すような男子として認識されているはずだから。

「僕は……子供の頃に初めてドキドキしたのは、背が高くて大人っぽい女の子に、でした」

 一緒にお風呂に入れられた時のことだ。

「中学の頃に好きになった人もそうだったので、そういうタイプの人に、弱いかもしれません……」

 背が高くて大人っぽいのは、うちの部員たちの何人もに共通した特徴だから、ここまでは言ってもいいだろう。香織さんへの本心は態度に表さないように、僕は注意を払った。

「背ですか……でも成美ちゃんとは仲がいいですよね。その……お風呂でも、とっても」

 やっぱり浴室の音は聞こえているのか……。

「成美さんは、全体として小さいだけでスタイルは綺麗ですし。それに、メイクやおしゃれや、人にとても気を遣うところとか……魅力的な自分になるために頑張っている姿が、尊敬できるというか……好みとかいう以前にステキだと思います」

「私も、そう思います」
 香織さんは満面の笑みで何度も頷いてくれた。

 あと、成美さんは顔がいいし、小柄なわりにお尻に存在感があって色っぽいし、色々と気持ちいいことをしてくれるし……という辺りは黙っておこう。

「でも、そもそも健一の彼女ですから。今は成美さんにも彼女なりの価値観や考えがあって、こんな関係になっていますけど……」

 それがどういう価値観や考えなのかは、僕には今のところ理解できないのだけど。

「好きとか、そういう気持ちになることは、ないと思います」

 そこは、ちゃんと言っておかなくてはならない。さもなければ香織さんにとって僕は「親友を、その体目当てで、“彼女を長年ずっと想ってきた幼馴染でもある無二の彼氏”から奪おうとしている迷惑なやつ」になってしまう。

 先程、成美さんを手放しで褒めることができたのも、彼女については変に誤解されることはないだろうという安心感からでもあるのだ。

「ああ……そうでしたね……」
 香織さんは、そんなふうに言ってからしばらく黙って食器を拭き、それから唐突に言った。
「私、成美ちゃんのことが好きなんです」

「ええ、仲いいですもんね」

「希さんが思っているような意味では多分なくて……」

 僕は、再開しかけていた洗い物の手をまた止めて、香織さんを見上げた。

「成美ちゃんが水登みと健一……さんと付き合うことになって。それで、セックスをしたって聞いた時……」

 ああ、やっぱりそういう話はしているよね。僕が健一から聞いたように。

「それから、希さんを相手に成美ちゃんがこういうことを始めてからも」

 そこで僕が出てくるのか?

「私が成美ちゃんと、そういうことをしてみたいと思ってしまうんです」

 僕の手から、洗剤の泡の付いた皿が流し台の中に滑り落ちた。幸い、割れたりはしなかった。

「成美ちゃんの裸を私が見て、大事な所を私が触って、どんな表情をするのか見てみたくて。そんな私を成美ちゃんに受け容れてほしい。男の人よりも私を選んでほしいと……そんなことばかり考えてしまうんです。成美ちゃんが希さんとお風呂でしている間も、私がしたい、私じゃダメなの? って、すごく切ないんです」

 香織さんも自分でしているって成美さんが言っていたけど……そういう気持ちでだったのか。

 泣きそうな顔を、香織さんは僕の方に向けた。
「……変だと思いますか?」

 僕は手元に視線を戻して、皿をまた手に取った。
「ほら、僕って叔母と暮らしてるじゃないですか」

 そのことは、もう話してあった。それ以前に、香織さんは知っていた。保健室の小暮伶果先生が僕の保護者だということは、知っている生徒は知っている程度のことで、わざわざ言って回ることはないけれど秘密でもない。

「だから小さい頃から、学校とかで当たり前のように『お父さん・お母さん』とか『両親』とかいう言葉が保護者の意味で使われる度、そうじゃない家だってあるのになって、思ってたんです」

「私も母しかいなかったので、少し分かります」

「はい。血の繋がった父母に育てられるケースは多数派かもしれませんが、それ以外が間違いというわけじゃありません。僕の家庭はべつに変じゃありませんし、少数派であることは変であることではないんです」

 僕の事情を知って「大変なんだな」「かわいそう」と言う人もいたけど、大きなお世話だ。仮に保護者を選べるとしたら、何度だって伶果さんを選びたい。

 だから僕は自信を持って、香織さんをもう一度見上げて、言い切った。
「香織さんと成美さんの関係は、とてもステキだと思います」

 安心したように香織さんは表情を緩めた。
「ありがとうございます。……他の人には、言わないでおいてくれますか? 女子同士では、着替えたりお風呂に入ったり、同じ部屋で寝たりもしますから。私にそういう目で見られていると分かったら、きっと気持ち悪いと思うので」

 僕は、それには何とも答えられなかった。男性同士だったら、どうだろう。また、男女では違うのだろうか。

「特に成美ちゃんには、いえ成美ちゃんにこそ絶対に、言わないでください」
 香織さんは続けた。

「成美ちゃんも普通に男の人を好きになることは、よく分かっています。私は恋人とかにはなれません。けれど、お互いが必要とする限りずっと同性の親友でいられれば、それでいいですから」

「それで、いいんですか……?」

 どうしてか、頭の中に浮かんだのは、中学の時に好きだった先輩のことだった。「恋人ができたから、好きでいられるのは迷惑」と言われたことだった。

 しかし迷わずに香織さんは頷いた。そして僕を見下ろして言った。
「だから私も、信頼できる男の人が成美ちゃんと一緒にいてくれるのは嬉しいんですよ。嫉妬してしまうばかりじゃなくて」

 そうだよなぁ、と僕も思う。

 健一なら成美さんの幼馴染だから、ミニバスから一緒だという香織さんとの仲の良さもよく分かっているだろう。この先も成美さんが香織さんと友人として付き合っていくことを、きっと理解してくれるはずだ。香織さんにとっても、最も信頼して成美さんを任せられる男といえるだろう。

 やっぱりあの時、更衣室に忍び込むことになった日に、健一の信用を守れて良かった。僕にとっての親友である彼の面子を守るだけではなく、香織さんにとっても大切な関係を守る結果になったのだから。

 健一、もう二度とあんな過ちはせず、香織さんの信頼にも応えていってくれよ。

 そこまで考えた時、不意に僕の心に悪魔が囁いた。

「あの、香織さん……これは今の話を聞いて、あくまで選択肢の一つとして思い付いてしまったんですが」

 その提案を聞いた香織さんは、赤くなった顔の半ばをお皿で隠しながら、僕につぶやいた。
「希さんって……やっぱりエッチなんですね」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」 「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」 「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」 県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。 頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。 その名も『古羊姉妹』 本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。 ――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。 そして『その日』は突然やってきた。 ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。 助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。 何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった! ――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。 そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ! 意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。 士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。 こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。 が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。 彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。 ※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。 イラスト担当:さんさん

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...