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6本目 女子バスケットボール部員の告白
香織さんの夢 66-11
しおりを挟む「え、おね……小暮先生にも?」
急に保護者の名前が出てきたので驚いたが、香織さんにとって伶果さんは学校の保健室の先生。性の悩みを相談する相手としては最適だろう。
「先生は、おかしなことでも何でもないと言ってくれました。それぞれが持つ個性の内の一つですし、周りに打ち明けていないだけでクラスにも、学校にも、先生方の中にだって、同じように悩んだりそういう自分と向き合って生きている人は何人もいると考える方が自然だと教えてくれました。人を好きになる気持ちに関することだから、信頼できる人にだけ話せばいいということも」
伶果さんらしいな、と僕は思った。そんなふうに僕にも、たくさんのことを教えてくれたから。
「それまで、インターネットで自分なりに調べたりしたこともありましたが、理解されない悲しいケースや、病気だとか社会を壊してしまう存在とかいう意見なんかも目に入ってきて……怖かったんです」
幼い頃、僕の家庭のことを知り「おかしい」と言ってきかなかった子がいた。「お前の家が幸せだっていうなら、うちの父さんや母さんは何のために頑張ってるんだ」と。彼はその意見を曲げなかった。
「先生は、ちゃんと知らなかった知識は教えてくれた上で、自分で考えていいんだよと導いてくれて……私は、とても楽になりました。ほんとうにすごい人です」
「はい……」
なんだか照れくさい気持ちもあるけれど、僕は頷いた。
先程の子供にさんざんに言われ、家に帰って号泣した僕。そこに伶果さんがかけてくれた言葉は「幸せは幾つあってもいいんだよ」というものだった。
「そのことでお世話になった小暮先生、それからバスケ部を変わらせてくれた千華子先生を見ていて、私も……先生を目指したいと思うようになったんです」
「香織さんが先生に……」
合宿の時に成美さんから「県外へ進学すると思う」と聞いてはいたけれど、直接に進路のことを聞くのは、これが初めてだった。
「きっと子供たちの初恋の相手になっちゃいますよ」
「できれば女子校か、小学校くらいまでがいいですけどね……」
と苦笑する香織さん。
「小暮先生のような養護教諭になるのが第一希望なんですけど、専門の大学がここから通える範囲にはないので……通える大学にして小学校の教員を目指すことにするか、まだ悩んでいるんです」
第一希望の夢を叶えてほしいとは思うけど、経済的な難しさについては僕も他人事ではないのでよく分かる。
と、香織さんのスマートフォンが震えた。先程から何度目かの通知音だ。片付けも一段落したところだったので、香織さんは手を拭いてからそれを手に取った。そして慌てたように表情を変えた。
「お母さんが、これから帰ってくるって……!」
「え!? じゃあ僕、すぐに失礼しますから」
僕も急いで荷物を手に取ろうとした。いや、置きっ放しにしている僕用の食器類なんかも、引き揚げた方がいいのだろうか。
「いえ! あの、むしろ……もちろん、それが許されるなら、なんですが……」
香織さんは困った顔でスマートフォンから僕へと視線を移し、おそるおそるといった感じで、言った。
「泊まっていってもらうことは、できませんか?」
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