僕が女子バスケットボール部のマネージャーに!?~親友の身代わりとして何でもするって言ったけど、その彼女まで迫ってくるのはなぜ?

まよな柑

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6本目 女子バスケットボール部員の告白

まるで夢だったかのように 70-11

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 さっきまで娘と話していたのとは別人のような、高くて甘い声色。

「……の前よりおっき……まだひとづまじゃ……中からヌルヌルに……らませたいの? そりゃあ、もうひとり……気持ちい……」

 喘ぎ声の間に交わされる言葉は、はっきりとは聴き取れないけど、お互いの興奮を煽っている内容であることは分かる。

 多分、香織さんの口から飛び出すことはあまり想像できない言葉たちだ。一度は裸になって快感を分け合った今であっても、その印象は変わらない。

 あのお母さんは、わりと言葉を口に出すことによって高まりたいタイプなのだろうか。それとも相手の意向によるのだろうか。

 部員たちでいうと、翠さんにもそういうことを口にして楽しむ趣向がある。自分の体や行為をいやらしいものだと確認することで興奮するらしい。トイレでした時なんて特にすごかった。

 スミレ子さんは逆に、僕に「どこがどう気持ちいいのか」を具体的に言わせようとするし。女性といっても人それぞれだ。

 ともかく、僕は声の響いてくる方へ視線を巡らすわけにもいかず、香織さんの顔を見ることもできず……床に目を向けたまま固まっているしかなかった。

「……はぁ、あちらは元気そうですね」
 やがて香織さんは呆れたように肩をすくめた。それは失笑混じりではあったものの、もう先程までのような追いつめられた声色ではなくなっていた。

「結婚する相手って、あの男の人じゃないですよ。だからホテル代わりにこの家に連れてきたんだと思います。結婚の話をしたのは、そのついででしょうね」

 僕は差しのべ損ねた手を、そっと元の位置に戻していた。

「私たちは、もう休みましょう。朝、できるだけ早い時間に家を出たいですから。希さんも一旦、おうちに帰らなくちゃいけませんもんね」

 香織さんのジャージ類を寝間着代わりに貸してもらった。

 あちらの2人はお母さんの部屋に入っているので、洗面所なども使わせてもらい、寝る支度を整える。

 そうしてしばらくの間、どちらがどこに寝るかで議論になった。

「こちらがお願いして泊まっていただくのに、ゆかになんて寝せられません」

「香織さんをゆかに寝させておいて、僕がベッドで眠れるわけないじゃないですか。大会を控えた大切な時期でもあります。部のためにもちゃんと休んでくれないと。マネージャーとしてもそう要求します」

 やがて香織さんはため息を吐いて、ベッドに入ってくれた。

 でも、枕の隣に折りたたんで置いたタオルは何だろう。そしてどうして掛布団を半分、めくったままのだろう。

「希さんの方がお客さんですけど……ごめんなさい、そっちの入り口側に寝るのは正直ちょっと怖いんです。でも、ここにいてくれたら、きっと安心して寝られます」

 ここって、そこはベッドの上の香織さんの隣なんですが……。

「いいですから。一緒に寝ましょう」

 僕は躊躇ためらいながらも、慎重に身を横たえた。シーツは、3人で使った昨日の状態からは取り替えられている。

 香織さんは上半身を起こして手を伸ばし、照明をオレンジ色の常夜灯にした。

「成美ちゃんには内緒ですからね」

 泊まったこと自体、黙っておいた方がいいだろう。香織さんは成美さんのことが好きなのに、その相手に「香織さんは僕と一緒に寝た」なんて言うわけにはいかない。

 掛布団が体の上にかけられる。

 香織さんの匂いに包まれているような気がした。体に触れたばかりの布団は、まだ温もりなんて持っていないはずなのに、その中に熱を感じるように思ってしまう。

「端に寄ったら、寝ている間に落ちてしまいますよ。もっとこっちに」

「は、はい……」

 壁越しに漏れ聞こえてくる声は続いている。何かがきしむような振動も。

 香織さんのお母さんの歳は、おそらく千華子先生あたりとそう変わらない。見た目にはオバサンっぽさなどなく、むしろあんなに小さくて幼い感じの人でも大人としてセックスをするんだと意外に思えるくらいだった。

 興奮をかき立てられないと言えば嘘になるけれど、僕だけ発情しているわけにもいかない。

 香織さんにしてみれば、自分を産んだ母親が知らない男と抱き合っているわけで。その心境は、実の母親と暮らした記憶のない僕には想像もつかなかった。こんな状況が幼い頃から繰り返されてきたのだろうか。

「希さん、今日もありがとう」

 仰向けの状態から首を傾けると、香織さんはこちらを向いていた。僕も横向きに体勢を変える。

「いえ……結局、何もできなくて……」

「いいえ」

 オレンジ色の薄暗い世界の中で間近に向き合った香織さんの目は優しくて、見ているととても落ち着くような気がした。

「とても心強いです。いつもだったら母に対して私、あんなふうに言えません。母の側も聴いてくれませんし」

 そうなのか……。しっかりした娘と奔放な母親という印象だけど。いつもそうというわけではなかったのか。

「男の人が家にいたら……こうやって灯りを消して横になることもきっとできません」

 相変わらず僕は男性としてカウントされていないようで安心だ。下着泥棒の弱みという安全装置が付いているから。

 もちろん、そんなものなくたって怖がらせるようなことはしない。それに香織さんは成美さんのことが好きなのだから、その気持ちを僕が傷付けるなんてことは絶対にしたくない。

「希さんに出会えて本当に良かったです。……ありがとう、助けてくれて」

 ああ、良かった。不意に僕の胸の中に、そんな気持ちが湧き上がってきた。

 母は僕を産んだために亡くなったのかもしれない。伶果さんの犠牲の上に僕は育ったのかもしれない。父からは家族として選ばれず、恋をした相手からも「好きでいられるのは迷惑だ」と言われた、そんな僕。

 そんな僕でも、誰かにとって「いてもいい」存在になれたんだ。

 香織さんは顔の前に手を差し出してきた。
「手を、握ってていいですか」

 僕も手を差し出すと、それを長い指が包み込んでくれた。

 安心したように息を吐いた香織さんは、そっとまぶたを閉じる。

 時間が止まればいいのに――とはよく聞く表現だけど、本当にその通りだと思った。少なくとも朝が来るまでは、この姿を僕だけがずっと観ていられる。そんな幸せは、他にはなかった。


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