無双不可能な能力だって、世界を救うことくらいできますよ?

宇治を愛する抹茶

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Another Future

2nd 監視カメラ(前)

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入学式当日。
俺は正直舐めていた。自分のコミュ力の無さを。

普通の学生なら聞き流すはずの校長の話も、今日はちゃんと聞いている。自分の周りにいる人達全員が世界を滅ぼせるかもしれない能力を持っていると思うと鳥肌が立つ。せめて同じ中学の奴でも一人、いればいいんだが…。いや、正確に言うと一人いる。だが、俺としては絶対に近づきたくない類の輩なんだけどな。
笑星 小春。元々顔もよく、運動能力も高い、それでいてみんなに分け隔てなく接するところが好印象で、中学ではエボシちゃんなんて呼ばれていた。笑顔が眩しく、まさに苗字の通り、笑う星だ。だが俺はこいつのことを一生好きになれないだろう。実は笑星とは小学校から一緒なのだが…。

「以上を持ちまして、平成〇〇年度入学式及び始業式を閉会致します。ご連絡のある先生方は」

おっと、式が終わったようだ。これから新クラスの発表となるわけだ。同じクラスになりたいやつもいない、というかむしろ知り合いが一人もいないのでそんなことは関係ないのだが。

「おい由季」 

でも、違うクラスになりたい奴は一人いたな。

「わかってると思うけど、あたしの小学校時代の事言ったら殺すから」

「…はいよ」

あまり関わりたくないので、基本会話を発展させない方がいい。

「4組の生徒を呼ぶぞ。朝霧、君島、笑星…」

小春は4組か。俺は6組辺りかな…

「御島、頼城、寄香、亘理。以上!」

嘘だろ…。まさか同じクラスになるとは。6分の5の確率で他クラスになるはずだったのだが。こいつと少なくとも一年は一緒のクラスということか。

最悪のクラス分けが決まったあと、俺達は教室へ移動した。
しばらくホームルームなどをし、先生方が出ていった。生徒は30分ほど教室で待機するようにとアナウンスが流れた。途端にクラスの中で友達作りが始まる…と思っていた。中学の時だったら間違いなく始まっていただろう。それがこの部屋では、誰も動かない。すると、後ろの席の男子が話しかけてきた。

「なぁ、なんでこんな重い空気なん?」

こういう奴はどのクラスにも一人はいる。たいてい最初のうちは人気者なんだが、後々になるにつれてウザがられる感じのやつだ。

「この学校自体、周りと競い合うものなんじゃないか?」

だが、俺には好都合だ。一人でも話せる友達を作っておけば、色々な人間と関わることができる。この学校において、情報を得ておくことはとても大切なことだ。何かあった時のためにも、友達は作っておきたい。

「そんなもんかね。あ、俺は浜村 陽星な。陽星って呼んでくれていいから。そっちは?」

良かった。相手から聞いてきてくれれば思ったより早く事が進む。

「俺は御島 由季。由季って呼んでくれ。よろしくな」

これでとりあえずは安心だ。

「よろしく!由季は中学のときの友達とかおらんの?」

いるけどあまり関わりたくない奴だ。紹介するのはやめておこう。友達になった以上、陽星にも嫌な思いはさせたくないからな。

「一人もいないよ」

だが、案の定うまくは行かなかった。俺の視線を感じ取ったのだろう。笑星がこっちへ来た。

「由季くん、お友達できたんだね。あ、私は笑星 小春って言います!由季くんとは小学校から一緒の付き合いなの!」

よくもまぁこんなに作り笑いができるな。もはや清々しいほどに裏との違いがすごい。

「なんだよ由季、めちゃくちゃ可愛い子がいるじゃんか!俺は浜村 陽星、陽星って呼んでくれ!」

陽星も陽星で、勢いがすごい。表情は笑ってはいるが、笑星の中ではかなり苦手なタイプのはずだ。内心ドン引きしているところだろう。

「ははは…よろしくね~」

苦手どころじゃなかったようで、苦笑いしながら去っていった。笑星が自分から去っていくなんて滅多にないことだ。笑星撃退要員として、陽星と常に行動を共にすることを決めた。

「なぁなぁ、小春ちゃんって彼氏いんの?」

嘘だろ…。






先生が戻ってきて、諸説明などを受けた。そして、下校時刻になったわけだが。

『生徒の呼び出しをします。1年1組瀧川さん。1年2組早霧さん。1年4組御島君。至急校長室まで来てください。』

クラス全員の目が俺に向けられたのが分かった。教室がざわつき始めた。

「校長室呼び出しとかマジかよ…」
「初日から目つけられるとか最悪じゃん」
「あの人か…かわいそ」

俺はいたたまれなくなって、早急に帰り支度をして教室を飛び出した。

校長室前まで来ると、先ほど呼び出された俺以外の人達だろうか、2人の女の子が立っていた。
一人はとても綺麗で真っ直ぐな黒髪の女の子。背は俺より高いだろうか。まるでモデルのようだった。
もう一人は背が小さく、俺の妹と同じくらいの歳に見えた。どちらも顔はよく見えなかったが、きっとそれなりの美人だということがうかがえた。

「失礼します。1年1組瀧川です。」

透き通るような声で黒髪の女の子が入っていった。俺ともう一人の女の子も続けて入った。

「久しぶりだな、御島君。それと瀧川君と早霧君も。」

正直言うと早く帰りたいので、単刀直入に素早く終わらせて欲しい。

「突然だが、君達がここに呼び出された理由はわかるかね?」

わかるはずもない。それは隣の女の子二人も同じだと思っていたが…

「私達の能力には共通性があり、それを生かす必要がある。ということですね」

1組の瀧川さんが答えた。

「その通り」

おそらく人の心を読むことができる、といった類の能力だろう。俺の能力と共通性があるかどうかはわからないが。

「君達の能力にはある共通点がある。瀧川君から一人ずつ自分の能力を言ってみろ」

「私は"私が信じている人の考えていることがわかる"能力を持っています。ただ、能力を使えるのは一人につき1日1回です。」

「俺は"人が選択した方と逆の選択肢を選んだ未来が見える"能力です。」

「あたしは"人が1日に動いた場所をすべて知ることができる"能力だったかな?」

俺より普通に実用性のある能力じゃないか。これだと俺一人が明らかに頭ひとつ沈んでいる気がするんだが…

「分かったか?君達の能力はどれも"知る"ことができるんだ。とても有益な情報をね」

有益…なのか?瀧川さんと早霧さんの能力はまだしも、俺の能力ではとても有益な情報を得ることは難しいと思うんだが。

「さて話を戻そう。君達は特待生として入学してきたね?あれが何の特待かわかるか?」

思わず瀧川さんの方を見るが、能力はもう使えないらしく、首を横に振った。

「単刀直入に言う。君達には部活に入ってもらう」

部活動での特待ということか?俺は運動神経こそいいものの、本格的にスポーツに打ち込んだことは一回もない。特待がつくほど秀でることはまずない。

「この部活はとてもハードでな。学園内で能力を不適切に使う者や、能力を暴走させた者を取り締まる役目を担うのだ。」

これには、心を読む能力がない俺でもピンと来た。

「風紀委員みたいなものですか?」

「その通りだ。名前は少し違うがな。まぁやっていくうちに要領もわかるだろう。最初のうちは厳しいと思うが、特待生として立派にやり切ってくれることを期待しているよ」

成程。学園の風紀を保つために俺達は特待生として入学できた、ということか。

「この学校には生徒会というものもあるが、あいつらは学園の風紀を守るどころか、乱すことしかしない。できることならもっと早くこの部活を導入したかったんだがな。ようやく今年発足できた」

そう言いながら校長は俺達に腕章のようなものを手渡した。そこに書いてあった文字を思わず読み上げてしまった。

「学園運営部…」

不覚にも笑ってしまった。何が面白いのか自分でもわからなかったが。

「いい名前だろう?君達はこれから学園運営部として生活していくのだ。そうなると、簡単に自己紹介をしておいたほうがいいな。瀧川から」

「1年1組瀧川 蓮花です。さっきも説明しましたが改めて、私の能力は【心透see through】といいます。これからよろしくお願いします。」

「1年2組早霧 叶芽です!あたしは全然役に立たないかもしれないけど、頑張るのでよろしくです!」

「1年4組御島 由季です。よろしく」

自分でも思ったが、少し無愛想すぎる挨拶だったか。

「では、とりあえず今日のところはここまで。後は自由に帰宅していいぞ」

「失礼しましたっ!」

真っ先に瀧川さんが帰っていった。いや待て。俺も早く帰りたいという気持ちはあったが、さすがに早すぎる。

「じゃあ俺も帰ろうかなっと」

と帰ろうとしたところを、校長が耳打ちしてきた。

「前に言っただろう?君の力は使い方次第では役に立つ、と。場所は用意してやったよ。あとは君がどうするかだ。」

「頑張ります」
期待に応えられるかどうかわからないが、やれるだけやってみようと思う。

「期待しているよ」

そう言って校長は部屋を出ていった。
取り残されたのは俺と早霧さんだけなのだが。

「じゃあ由季くん、帰ろっか!」
「そうだな」

方面は一緒らしく、電車が一緒だった。SNSを交換したり、部活の話をしたりで適当に時間を潰した。一駅早く早霧さんは降りてしまい、俺は一人になった。電車を降りたあと、歩いて家まで帰った。
ゴロゴロしたあと、寝ようとして携帯のアラームをセットしていた時、早霧さんからメッセージが来た。

『おやすみ~!窓は閉めてね!!』

確認すると、案の定窓は開いている。夜風で風邪をひくところだった。助かった。
『おやすみ』と返信して、電気を消して寝た。
早霧さんが窓の閉め忘れを知っていたのは、きっと彼女の能力のおかげなんだろう。そう思って眠りについた。しかし、俺は気づいていなかった。俺の部屋のクローゼットから、誰かの吐息が聞こえることに。
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