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Another Future
4th 剣の雨
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入学してから3日目。俺は衝撃の事実に気づいてしまった。俺の斜め前の席にいる、入学した日からずっとアイドルか何かだろうかと思っていたあの可愛い子。名前はわからないが、あの子はたぶん男だ。俺のクラスの席順は男子の斜め前は必ず男子になるはずなので、位置的にもそうだとしか考えられない。男の友達が陽星しかいない俺としては、是非友達になりたい。だが、自己紹介をろくに聞いていなかったので、話しかけようにも名前がわからない。仕方がないので、陽星に聞いてみようか。
「陽星、あそこの席の子の名前分かるか?」
そう言ってあの子の席を指さすと。
「由季、あいつ狙ってんのか?悪い事は言わない。あいつはやめとけ」
そのセリフ、お前が笑星狙ってるときにそっくりそのまま言いたいんだが…
「違う、多分あの子男だろ?」
「なんだ、分かってるのかよ。あいつは剣崎 玲。れっきとした男の子だ」
話しかけてみたいが、まだほぼ初対面に等しいので、なかなか一歩を踏み出せない。こういう時は陽星の出番だ。しかし陽星は、俺が頼むより先に、あの男の子に話しかけていた。
「おはよう剣崎!今日の放課後、時間ある?」
このコミュ力は素直に尊敬する。俺にはとても真似できない。
「おはよう、浜村くん。今日はちょっと用事があるから無理なんだ、ごめんね…。あっ、でも、明日なら空いてるよ!」
「じゃあ明日、9時に甘城駅前集合な!遅れんなよ!」
ちょっと待て、すごい速さで約束が進んでないか?俺の都合も聞かずに…まぁ遊ぶ相手も他にいないし、暇なのだが。すると、陽星がニヤニヤしながらこっちへ戻ってきた。
「由季、今日の放課後俺にスタンバ奢りな」
放課後俺が真っ先に帰宅したのは言うまでもない。
土曜日。俺は駅前に来ていた。9時5分を回るが2人はまだ来ていない。まぁ駅前とはいっても広いからな、ちょっと探してみよう。
10分後。まだ2人は見つからない。流石におかしいと思ったので、陽星に電話をかけてみた。しかし圏外の表示が出ただけで、電話が繋がることはなかった。陽星は電車通学なので、学校に通うのに必然的に駅を使う。迷ったとは考えにくい。と思考を巡らせていると、聞いたことのある声がした。
「お待たせしました!!ごめんなさいボク、この駅あんま来ないんで迷っちゃって…」
剣崎さん、いや剣崎くんか。私服がとても女の子らしい…というかスカートじゃないか。
「大丈夫だけど、何でスカート履いてるんだ?」
「えっと…ボクが男の子の格好してるの見られると、一緒に歩いてるキミが変な目で見られちゃうんだよね…」
そうか。確かに、剣崎くんは一見女…いや、女の子にしか見えない。ならば、一緒に歩いている俺が、女の子に男装させている変質者と間違われるのは当然だ。これは彼なりの配慮ということか。
「あと、伝言なんだけど、浜村くんは熱が出て来れないみたいだよ」
ということは、俺と剣崎くん二人だけということか。相手は男子なのに、なぜかすごく緊張してきた。改めて見ると、本当に人形みたいだ。周りからも、その可愛さはわかるようで…
「うおっ、可愛い!写真撮っとこ」
「アイドルかなんかじゃね?」
「てか隣の男誰だし」
「財布じゃね?かわいそ」
散々な言われようだ。こいつらは剣崎の性別知ったら驚くだろうな。
「あの…ここいても何もないし、とりあえず行こっか!」
流石剣崎くん。フォローも完璧だ。確かにここにいても何もないので、近くにある巨大ショッピングモールに行くことにした。そのモールは『あまぎWALK』という。今日のような休日には、結構な人で溢れかえる。甘城市民なら、誰でも訪れたことがあるだろう。
「御島くんってどんな能力なの?っていうか、なんて呼べばいい?」
「由季でいいよ、陽星もそう呼んでるしな。俺の能力は【可能性の目】と言って…」
そこから俺の能力の説明が随分と続いた。
「由季の能力って難しいんだね…全く理解できそうにないよ…」
俺自身しかこの能力は理解できないと思う。複雑な能力だが、視覚的にはわかりやすいので、俺の視点で見れば1発で理解できる。
「それから、ボクのことは玲って呼んでくれるかな?せっかく友達になったことだしね。それと、ボクの能力はね」
そう言いかけたところで玲が止まった。視線の先を追うと何やら目立つ服装の人がいた。
「ふぉぉぉぉぉお!閲注戦隊ジコセキニンジャーのチノレッドだ!あっちにはチッソクブルーもいるよ!」
戦隊モノか。高校生にもなって戦隊モノなんてダサい、なんて野暮なことは俺は言わない。俺だってたまに見ることがあるからな。だがそれにしても、名前グロ過ぎないか?
「玲ちゃん、応援ありがとう!必殺モザイク・パニック!!」
「ふおおおおおお!」
レッドがイキイキしながら玲に必殺技らしきものを見せつけている。絶対下心があると思うんだが、玲が楽しんでいるのでそんな横槍はできない。そうして一通り赤青黄色ピンク白とふれあったあと、俺たちはスタンドバック・コーヒーに行った。学生やOLに大人気の店で、略称はスタンバ。昨日陽星が俺に奢らせようとしたのはおそらく新商品のグレープフルーツティーだろう。俺も今日はそれを飲もうとしていた。だがスタンバに入ると、見知った顔がいた。
「あらこんにちは御島くん。今日は彼女とデートかしら?」
瀧川さんだ。あまりしゃべったことがないので、話しかけられたのは意外だった。
「あ、違います、こいつ男ですよ」
そう普通に返したつもりだった。でも瀧川さんはそれを必死の言い訳だと思い込んだのか、「やっぱデートなのね~」とかいいながらニヤニヤして去っていった。グレープフルーツティーを受け取りながら。
「さっきの人、知り合い?」
「あぁ、部活が一緒なんだ」
もう一人変なのがいるが、そいつのことは言わなくてもいいだろう。
「うちの学校なんだ。なら、多分あの人かな?」
「何がだ?」
「いや、さっきから強い才能を感じるんだよね。ちょっと不穏な感じがしたから警戒してたんだけど、あの子だったのかなと思って」
『才能を感じる』これはいわゆる『気』みたいなもので、能力を持つ者が近づいたりすると察知できるのだ。俺も能力を使っているうちに、段々察知できるようになってきた。つまりは、俺もさっきから感じる強い才能には気づいていた。
「まぁ、あの人の能力結構すごいからな。多分あの人だろ」
その後しばらく色々なところを回って、時刻は四時をまわった。
「そろそろ帰るか?」
「そうだね、あんまり遅くなってもね。今日はもう帰ろうか!」
そうしてモールから駅まで戻ってきて、それぞれ帰途につこうとした。
だがその時、俺たちの前に人影が立ち塞がった。
「チッソクブルー…?」
立っていたのはさっきモールにいたチッソクブルーだった。だが、何か様子がおかしい。
「助け…て…ァ」
咄嗟に異変に気づいた俺は、チッソクブルーに駆け寄った。しかしもう遅かった。ブルーの体は砕け散り、血や肉塊が周囲に飛び散った。
当然ながら駅前は騒然となった。逃げ惑う人々、写真を撮る人々。だがそれに紛れることなく、俺の視界にはそいつがしっかりと映っている。
「チノレッド、お前何をした!!」
人混みから出てきたチノレッドが微笑を浮かべていることは、仮面の上からでもわかる。
「いやこの青がさァ、ピンクちゃんといい感じになってたんだよね~。だ、か、ら、俺が主役だってわからせてあげました♡」
ダメだ、こいつは話が通じないタイプだ。実力行使で行くしかない。でも、ひとつ問題なのは、俺には能力による攻撃手段がないということだ。相手はさっきのを見る限り攻撃系の能力の持ち主だ。まともに戦っても勝ち目はないか…
「まぁ君は殺されちゃうんだけどねぇ♡」
と、素早い動きで距離を詰められる。繰り出される拳を間一髪のところでかわす。
最近分かったことだが、【可能性の目】は相手の攻撃を避けるのにも使える。見えたところと逆側に動けばいいのだから。
「上手く避けられてる…なんて思ってない?残念、君はもう終わりだよ♡」
そして次にくる拳を避けようとすると、右腕から大量の血が噴出した。
「ガッ…」
よく目を凝らしてみると、細い鋼の糸が俺の全身の周りに張り巡らされている。少しでも動けば即腕切断のような状態なので、まともに身動きが取れない。
「俺の能力はknitting【編み物】。俺の編んだ鋼糸でお前はブルーみたいに切り刻まれるのさ♡」
そして段々鋼の糸が俺にくっついてきた。しかし俺は全く動じなかった。なぜなら、俺には地面に転がる俺の肉片が見えたからだ。よく考えればわかることだ。俺が死ぬ可能性。それと逆の可能性が起こるということは…
「Sword rain【剣の雨】!!!!!」
こういうことだ。きっと玲が助けてくれると信じていた。玲の飛ばした剣状のものが俺の鋼糸を切ってくれた。どうやら、【剣の雨】は、威力が低めの剣を無数にとばす能力みたいだ。あまり相手が怯んだ様子はないが、確実にダメージは加えられている。
「1000発が限度なんだ!打ち終わったら2分はリロードにかかる!それまでに何か策を!」
あと30秒ほど。それさえあればこいつを倒せる。おそらくあと5百発は残っている。心配は要らないだろう。
玲が剣を射出している間に、俺は【可能性の目】を使って相手の気づかない方向から背後に回る。そして玲が1000発打ち終わると同時に。
「うおああああああああああ!!!」
玲の打ち出した剣の一つを赤い腹部に突き刺した。威力が低いとはいえ、それは射出する力が弱いだけで、人力をもってすれば十分に破壊力を生み出せる。
チノレッドはその場に倒れ込んだ。血は少ししか出ていないため、致命傷になる傷はついていないようだ。仮面を剥ぐと、お世辞にもかっこいいとは言えないような顔が出てきた。どうやらうちの学校の生徒ではないが、倒れながらもまだ微笑んでいるところに少し恐怖を覚えた。
チノレッドは警察に運ばれ、もう一度さよならを言ってそれぞれ帰途についた。
そして次の日、俺と玲は校長室に呼び出され、表彰された。今回は玲も一緒ということで、クラスでざわつきは起こらなかった。表彰のあと、校長からはこう言われた。
「使い方を段々把握しているようだな。今後も期待している」
とりあえず一歩前進できただろうか。
ー浜村家ー
夜十二時をまわった浜村家の一室で、一人の男の子がうずくまっていた。
「ついに今日か…」
男の子こと浜村 陽星はとても憂鬱な顔をしていた。
「もう始まったのか」
そうつぶやく彼の手は、徐々に黒くなっていった。
「陽星、あそこの席の子の名前分かるか?」
そう言ってあの子の席を指さすと。
「由季、あいつ狙ってんのか?悪い事は言わない。あいつはやめとけ」
そのセリフ、お前が笑星狙ってるときにそっくりそのまま言いたいんだが…
「違う、多分あの子男だろ?」
「なんだ、分かってるのかよ。あいつは剣崎 玲。れっきとした男の子だ」
話しかけてみたいが、まだほぼ初対面に等しいので、なかなか一歩を踏み出せない。こういう時は陽星の出番だ。しかし陽星は、俺が頼むより先に、あの男の子に話しかけていた。
「おはよう剣崎!今日の放課後、時間ある?」
このコミュ力は素直に尊敬する。俺にはとても真似できない。
「おはよう、浜村くん。今日はちょっと用事があるから無理なんだ、ごめんね…。あっ、でも、明日なら空いてるよ!」
「じゃあ明日、9時に甘城駅前集合な!遅れんなよ!」
ちょっと待て、すごい速さで約束が進んでないか?俺の都合も聞かずに…まぁ遊ぶ相手も他にいないし、暇なのだが。すると、陽星がニヤニヤしながらこっちへ戻ってきた。
「由季、今日の放課後俺にスタンバ奢りな」
放課後俺が真っ先に帰宅したのは言うまでもない。
土曜日。俺は駅前に来ていた。9時5分を回るが2人はまだ来ていない。まぁ駅前とはいっても広いからな、ちょっと探してみよう。
10分後。まだ2人は見つからない。流石におかしいと思ったので、陽星に電話をかけてみた。しかし圏外の表示が出ただけで、電話が繋がることはなかった。陽星は電車通学なので、学校に通うのに必然的に駅を使う。迷ったとは考えにくい。と思考を巡らせていると、聞いたことのある声がした。
「お待たせしました!!ごめんなさいボク、この駅あんま来ないんで迷っちゃって…」
剣崎さん、いや剣崎くんか。私服がとても女の子らしい…というかスカートじゃないか。
「大丈夫だけど、何でスカート履いてるんだ?」
「えっと…ボクが男の子の格好してるの見られると、一緒に歩いてるキミが変な目で見られちゃうんだよね…」
そうか。確かに、剣崎くんは一見女…いや、女の子にしか見えない。ならば、一緒に歩いている俺が、女の子に男装させている変質者と間違われるのは当然だ。これは彼なりの配慮ということか。
「あと、伝言なんだけど、浜村くんは熱が出て来れないみたいだよ」
ということは、俺と剣崎くん二人だけということか。相手は男子なのに、なぜかすごく緊張してきた。改めて見ると、本当に人形みたいだ。周りからも、その可愛さはわかるようで…
「うおっ、可愛い!写真撮っとこ」
「アイドルかなんかじゃね?」
「てか隣の男誰だし」
「財布じゃね?かわいそ」
散々な言われようだ。こいつらは剣崎の性別知ったら驚くだろうな。
「あの…ここいても何もないし、とりあえず行こっか!」
流石剣崎くん。フォローも完璧だ。確かにここにいても何もないので、近くにある巨大ショッピングモールに行くことにした。そのモールは『あまぎWALK』という。今日のような休日には、結構な人で溢れかえる。甘城市民なら、誰でも訪れたことがあるだろう。
「御島くんってどんな能力なの?っていうか、なんて呼べばいい?」
「由季でいいよ、陽星もそう呼んでるしな。俺の能力は【可能性の目】と言って…」
そこから俺の能力の説明が随分と続いた。
「由季の能力って難しいんだね…全く理解できそうにないよ…」
俺自身しかこの能力は理解できないと思う。複雑な能力だが、視覚的にはわかりやすいので、俺の視点で見れば1発で理解できる。
「それから、ボクのことは玲って呼んでくれるかな?せっかく友達になったことだしね。それと、ボクの能力はね」
そう言いかけたところで玲が止まった。視線の先を追うと何やら目立つ服装の人がいた。
「ふぉぉぉぉぉお!閲注戦隊ジコセキニンジャーのチノレッドだ!あっちにはチッソクブルーもいるよ!」
戦隊モノか。高校生にもなって戦隊モノなんてダサい、なんて野暮なことは俺は言わない。俺だってたまに見ることがあるからな。だがそれにしても、名前グロ過ぎないか?
「玲ちゃん、応援ありがとう!必殺モザイク・パニック!!」
「ふおおおおおお!」
レッドがイキイキしながら玲に必殺技らしきものを見せつけている。絶対下心があると思うんだが、玲が楽しんでいるのでそんな横槍はできない。そうして一通り赤青黄色ピンク白とふれあったあと、俺たちはスタンドバック・コーヒーに行った。学生やOLに大人気の店で、略称はスタンバ。昨日陽星が俺に奢らせようとしたのはおそらく新商品のグレープフルーツティーだろう。俺も今日はそれを飲もうとしていた。だがスタンバに入ると、見知った顔がいた。
「あらこんにちは御島くん。今日は彼女とデートかしら?」
瀧川さんだ。あまりしゃべったことがないので、話しかけられたのは意外だった。
「あ、違います、こいつ男ですよ」
そう普通に返したつもりだった。でも瀧川さんはそれを必死の言い訳だと思い込んだのか、「やっぱデートなのね~」とかいいながらニヤニヤして去っていった。グレープフルーツティーを受け取りながら。
「さっきの人、知り合い?」
「あぁ、部活が一緒なんだ」
もう一人変なのがいるが、そいつのことは言わなくてもいいだろう。
「うちの学校なんだ。なら、多分あの人かな?」
「何がだ?」
「いや、さっきから強い才能を感じるんだよね。ちょっと不穏な感じがしたから警戒してたんだけど、あの子だったのかなと思って」
『才能を感じる』これはいわゆる『気』みたいなもので、能力を持つ者が近づいたりすると察知できるのだ。俺も能力を使っているうちに、段々察知できるようになってきた。つまりは、俺もさっきから感じる強い才能には気づいていた。
「まぁ、あの人の能力結構すごいからな。多分あの人だろ」
その後しばらく色々なところを回って、時刻は四時をまわった。
「そろそろ帰るか?」
「そうだね、あんまり遅くなってもね。今日はもう帰ろうか!」
そうしてモールから駅まで戻ってきて、それぞれ帰途につこうとした。
だがその時、俺たちの前に人影が立ち塞がった。
「チッソクブルー…?」
立っていたのはさっきモールにいたチッソクブルーだった。だが、何か様子がおかしい。
「助け…て…ァ」
咄嗟に異変に気づいた俺は、チッソクブルーに駆け寄った。しかしもう遅かった。ブルーの体は砕け散り、血や肉塊が周囲に飛び散った。
当然ながら駅前は騒然となった。逃げ惑う人々、写真を撮る人々。だがそれに紛れることなく、俺の視界にはそいつがしっかりと映っている。
「チノレッド、お前何をした!!」
人混みから出てきたチノレッドが微笑を浮かべていることは、仮面の上からでもわかる。
「いやこの青がさァ、ピンクちゃんといい感じになってたんだよね~。だ、か、ら、俺が主役だってわからせてあげました♡」
ダメだ、こいつは話が通じないタイプだ。実力行使で行くしかない。でも、ひとつ問題なのは、俺には能力による攻撃手段がないということだ。相手はさっきのを見る限り攻撃系の能力の持ち主だ。まともに戦っても勝ち目はないか…
「まぁ君は殺されちゃうんだけどねぇ♡」
と、素早い動きで距離を詰められる。繰り出される拳を間一髪のところでかわす。
最近分かったことだが、【可能性の目】は相手の攻撃を避けるのにも使える。見えたところと逆側に動けばいいのだから。
「上手く避けられてる…なんて思ってない?残念、君はもう終わりだよ♡」
そして次にくる拳を避けようとすると、右腕から大量の血が噴出した。
「ガッ…」
よく目を凝らしてみると、細い鋼の糸が俺の全身の周りに張り巡らされている。少しでも動けば即腕切断のような状態なので、まともに身動きが取れない。
「俺の能力はknitting【編み物】。俺の編んだ鋼糸でお前はブルーみたいに切り刻まれるのさ♡」
そして段々鋼の糸が俺にくっついてきた。しかし俺は全く動じなかった。なぜなら、俺には地面に転がる俺の肉片が見えたからだ。よく考えればわかることだ。俺が死ぬ可能性。それと逆の可能性が起こるということは…
「Sword rain【剣の雨】!!!!!」
こういうことだ。きっと玲が助けてくれると信じていた。玲の飛ばした剣状のものが俺の鋼糸を切ってくれた。どうやら、【剣の雨】は、威力が低めの剣を無数にとばす能力みたいだ。あまり相手が怯んだ様子はないが、確実にダメージは加えられている。
「1000発が限度なんだ!打ち終わったら2分はリロードにかかる!それまでに何か策を!」
あと30秒ほど。それさえあればこいつを倒せる。おそらくあと5百発は残っている。心配は要らないだろう。
玲が剣を射出している間に、俺は【可能性の目】を使って相手の気づかない方向から背後に回る。そして玲が1000発打ち終わると同時に。
「うおああああああああああ!!!」
玲の打ち出した剣の一つを赤い腹部に突き刺した。威力が低いとはいえ、それは射出する力が弱いだけで、人力をもってすれば十分に破壊力を生み出せる。
チノレッドはその場に倒れ込んだ。血は少ししか出ていないため、致命傷になる傷はついていないようだ。仮面を剥ぐと、お世辞にもかっこいいとは言えないような顔が出てきた。どうやらうちの学校の生徒ではないが、倒れながらもまだ微笑んでいるところに少し恐怖を覚えた。
チノレッドは警察に運ばれ、もう一度さよならを言ってそれぞれ帰途についた。
そして次の日、俺と玲は校長室に呼び出され、表彰された。今回は玲も一緒ということで、クラスでざわつきは起こらなかった。表彰のあと、校長からはこう言われた。
「使い方を段々把握しているようだな。今後も期待している」
とりあえず一歩前進できただろうか。
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夜十二時をまわった浜村家の一室で、一人の男の子がうずくまっていた。
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