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Another Future
7th 忍び寄る
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鬼神。それは、常人より元々のスペックがかなり高く、能力者の中でも極めて優れている者のことである。能力者の中ではかなり有名であり、この男は容姿や性格もあってか、生徒にもかなり人気が高い。そんな人が目の前にいることに何故だか優越感のようなものを感じた。だが、その鬼神は戦おうとはしなかった。
「いや、やめておこうか。大事な生徒に変なことをするわけには行かないからね」
先生の目の光が消えた瞬間雨が止み、空に星空が広がった。俺は安堵すると共に、このまま先生が剣を振ったらどうなっていただろうと考えた。途端に鳥肌が立った。睨まれるならまだしも、この男は笑顔のまま恐ろしいほどの殺気を放っている。少しでも怒らせてはいけない相手だということは容易にわかった。
「君の能力はとても珍しいからね。少し見てみたかった気もするけど…うん。今日はもう遅いから、気をつけて帰りなさい」
ようやく教師らしいことを言って、先生は帰っていった。何を考えているかわからない、俺が一番苦手とするタイプだ。さらに鬼のように強いときた。迂闊に近づけない。
その日の晩は、軽めに夕食をとって風呂に入った。幸い明日は祝日だ。ゆっくりと体を休めよう。と思ったのも束の間。俺の携帯が安眠を許さなかった。1回目のバイブ音は無視したが、2回目3回目と続き流石にうるさいので、一応電話に出た。
「もしもし、御島です」
「もしもしゆきくん?あたしだけど、明日の放課後って時間ある?」
電話の主は早霧さんだった。さっきのこともあってか、この声を聞くと少し安心する。
「え、明日…部活は?」
「あー、瀧川さんが明日部活ないっていってたよ!」
明日の部活はない、ねぇ…。とりあえずその電話には曖昧な返事を返しておいた。放課後に東研究棟の第一生物室集合ということだった。しっかりと準備をしていった方がいいな。
次の日、何事もなく学校は終わり、放課後になった。よく考えたら東研究棟なんて行ったことがないので、職員室前の学校案内図を見に行くことにした。そして職員棟に入った時、見覚えのある顔があった。
「先生、こんにちは」
「あぁ、御島か。どうした、また呼び出しか?」
真島先生だ。この人なら研究棟のことも知って…いるのだろうか。いや、一応聞いてみよう。
「東研究棟ってどこだかわかります?」
まぁ知らなくてもいい。この人に聞くこと自体が間違っていたかもしれない。そう思っていたが、予想外の答えが返ってきた。
「勿論知ってるぞ」
「え!?」
びっくりした。勿論、というからには何か有名なものでもあるのだろうか。
「二年前にあんなことがあったんだ、この学校で場所知らないのは新任の教師か1年のごく少数だけだよ」
あんなことってどんなことだろう。ちなみに俺はそのごく少数に入っているらしい。
「何があったか教えてもらえますか?」
「知らないのか?まぁ教えてやる。あまり人に話すような事じゃないんだけどな…」
二年前、東研究棟で心霊研究部の研究発表会があったらしい。当時2年生だったある一人の生徒は、ドッペルゲンガーについての発表を行ったのだが、観客の反応は今ひとつだった。そこでその生徒は、今ここでドッペルゲンガー現象を作り出してみせると言って何やら不思議な言葉を唱え始めた。すると、徐々に生徒の隣に人型の塊ができ始めた。初めはみんな興味津々に見ていたが、完成したそれは酷いものだった。人と呼ぶに値しない…最早生物の原型を留めていなかった。怒った観客は口々にその生徒を罵倒し始め、発表会は中断となった。
「ここまではまだ小さないざこざ、で済んだんだがな。これからだよ、事件が起こったのは」
その後5分くらい真島先生は話を続けた。俺は吐き気がするくらいその話に嫌悪感を抱いた。行くのを躊躇うほどに。だが聞いてしまった以上、その場所に行ってみたくなるのが人の性だ。ダメだダメだとわかりつつも、俺は東研究棟に来ていた。
「早霧さん、いるんですか?」
第一生物室に着いた俺は、真っ先に早霧さんを呼んだ。返事は返ってこない。しかし代わりに足音が聞こえてきた。
ペタッ、ペタッ。
ペタッ、ペタッ。
流石に怖くなってきたので、携帯のライトをつけた。いや、付けようとしたと言った方がいいだろうか。俺の携帯は何故か明かりをつけてくれなかった。圏外ではないはずだし、そもそもライトをつけるのに圏内外は関係ない。そんなことをしている間にも足音は近づいてくる。
ペタッ。
足音が止まった。間違いない、この教室の前にいる。そして、ゆっくりと扉が開いた。
「お待たせゆきくん!ごめんね呼び出しちゃって」
確かに外見は早霧さんだった。しかし俺にはこの化け物が早霧さんには到底見えなかった。
「お前…誰だ」
「え?私?急になんでそんなこと」
言うまでもない。
「本物の早霧さんは瀧川さんのことをさん付けなんてしない。ましてや上履きを履いているのにそんな足音を立てるような化け物でもない」
そう言い放った瞬間に早霧さんの首から上が落ちた。地面に当たった頭部は泥になって地面に散らばった。そして段々早霧さんの体の色々な部分が落ちて泥になっていく。
「…やっぱりな」
姿を変えたその土塊は、さっき真島先生から聞いたドッペルゲンガーの特徴と完全に一致していた。そして次の瞬間、視界が閉ざされ、眠りに落ちていくように俺は意識を失った。
ー部室にてー
「遅いね~ゆきくん」
「どうせ呼び出しでもくらっているんでしょう」
部室には、資料を整理しているあたしと蓮花ちゃんの2人しかいなかった。今日は部活がある日なのに、ゆきくんが来ない。何か嫌な予感がする。でも、ゆきくんの携帯に電話をかけても繋がらなかった。変なことに巻き込まれてなければいいんだけど…。
「ちょっとあたし探してくる!」
「ちょっと待って、私も行くわ」
そう言って2人で部室を出た。その時あたしの頭に冷たいものが当たった。
「あら?…雨ね」
黒くなった空から、暗い雨がポツポツと降り始めていた。
「いや、やめておこうか。大事な生徒に変なことをするわけには行かないからね」
先生の目の光が消えた瞬間雨が止み、空に星空が広がった。俺は安堵すると共に、このまま先生が剣を振ったらどうなっていただろうと考えた。途端に鳥肌が立った。睨まれるならまだしも、この男は笑顔のまま恐ろしいほどの殺気を放っている。少しでも怒らせてはいけない相手だということは容易にわかった。
「君の能力はとても珍しいからね。少し見てみたかった気もするけど…うん。今日はもう遅いから、気をつけて帰りなさい」
ようやく教師らしいことを言って、先生は帰っていった。何を考えているかわからない、俺が一番苦手とするタイプだ。さらに鬼のように強いときた。迂闊に近づけない。
その日の晩は、軽めに夕食をとって風呂に入った。幸い明日は祝日だ。ゆっくりと体を休めよう。と思ったのも束の間。俺の携帯が安眠を許さなかった。1回目のバイブ音は無視したが、2回目3回目と続き流石にうるさいので、一応電話に出た。
「もしもし、御島です」
「もしもしゆきくん?あたしだけど、明日の放課後って時間ある?」
電話の主は早霧さんだった。さっきのこともあってか、この声を聞くと少し安心する。
「え、明日…部活は?」
「あー、瀧川さんが明日部活ないっていってたよ!」
明日の部活はない、ねぇ…。とりあえずその電話には曖昧な返事を返しておいた。放課後に東研究棟の第一生物室集合ということだった。しっかりと準備をしていった方がいいな。
次の日、何事もなく学校は終わり、放課後になった。よく考えたら東研究棟なんて行ったことがないので、職員室前の学校案内図を見に行くことにした。そして職員棟に入った時、見覚えのある顔があった。
「先生、こんにちは」
「あぁ、御島か。どうした、また呼び出しか?」
真島先生だ。この人なら研究棟のことも知って…いるのだろうか。いや、一応聞いてみよう。
「東研究棟ってどこだかわかります?」
まぁ知らなくてもいい。この人に聞くこと自体が間違っていたかもしれない。そう思っていたが、予想外の答えが返ってきた。
「勿論知ってるぞ」
「え!?」
びっくりした。勿論、というからには何か有名なものでもあるのだろうか。
「二年前にあんなことがあったんだ、この学校で場所知らないのは新任の教師か1年のごく少数だけだよ」
あんなことってどんなことだろう。ちなみに俺はそのごく少数に入っているらしい。
「何があったか教えてもらえますか?」
「知らないのか?まぁ教えてやる。あまり人に話すような事じゃないんだけどな…」
二年前、東研究棟で心霊研究部の研究発表会があったらしい。当時2年生だったある一人の生徒は、ドッペルゲンガーについての発表を行ったのだが、観客の反応は今ひとつだった。そこでその生徒は、今ここでドッペルゲンガー現象を作り出してみせると言って何やら不思議な言葉を唱え始めた。すると、徐々に生徒の隣に人型の塊ができ始めた。初めはみんな興味津々に見ていたが、完成したそれは酷いものだった。人と呼ぶに値しない…最早生物の原型を留めていなかった。怒った観客は口々にその生徒を罵倒し始め、発表会は中断となった。
「ここまではまだ小さないざこざ、で済んだんだがな。これからだよ、事件が起こったのは」
その後5分くらい真島先生は話を続けた。俺は吐き気がするくらいその話に嫌悪感を抱いた。行くのを躊躇うほどに。だが聞いてしまった以上、その場所に行ってみたくなるのが人の性だ。ダメだダメだとわかりつつも、俺は東研究棟に来ていた。
「早霧さん、いるんですか?」
第一生物室に着いた俺は、真っ先に早霧さんを呼んだ。返事は返ってこない。しかし代わりに足音が聞こえてきた。
ペタッ、ペタッ。
ペタッ、ペタッ。
流石に怖くなってきたので、携帯のライトをつけた。いや、付けようとしたと言った方がいいだろうか。俺の携帯は何故か明かりをつけてくれなかった。圏外ではないはずだし、そもそもライトをつけるのに圏内外は関係ない。そんなことをしている間にも足音は近づいてくる。
ペタッ。
足音が止まった。間違いない、この教室の前にいる。そして、ゆっくりと扉が開いた。
「お待たせゆきくん!ごめんね呼び出しちゃって」
確かに外見は早霧さんだった。しかし俺にはこの化け物が早霧さんには到底見えなかった。
「お前…誰だ」
「え?私?急になんでそんなこと」
言うまでもない。
「本物の早霧さんは瀧川さんのことをさん付けなんてしない。ましてや上履きを履いているのにそんな足音を立てるような化け物でもない」
そう言い放った瞬間に早霧さんの首から上が落ちた。地面に当たった頭部は泥になって地面に散らばった。そして段々早霧さんの体の色々な部分が落ちて泥になっていく。
「…やっぱりな」
姿を変えたその土塊は、さっき真島先生から聞いたドッペルゲンガーの特徴と完全に一致していた。そして次の瞬間、視界が閉ざされ、眠りに落ちていくように俺は意識を失った。
ー部室にてー
「遅いね~ゆきくん」
「どうせ呼び出しでもくらっているんでしょう」
部室には、資料を整理しているあたしと蓮花ちゃんの2人しかいなかった。今日は部活がある日なのに、ゆきくんが来ない。何か嫌な予感がする。でも、ゆきくんの携帯に電話をかけても繋がらなかった。変なことに巻き込まれてなければいいんだけど…。
「ちょっとあたし探してくる!」
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黒くなった空から、暗い雨がポツポツと降り始めていた。
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