無双不可能な能力だって、世界を救うことくらいできますよ?

宇治を愛する抹茶

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Another Future

8th ドッペルゲンガー

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発表会の次の日のことだった。昨日発表会に来ていた全員が亡くなったという話を聞いた。昨日の帰り道に突然現れた土塊に襲われて皆死んだということだった。そしてその全ての死体には、目玉がついていなかったそうだ。

私、真島 真希は今その現場に来ている。二年前の出来事と同じだ。足元にはびちゃびちゃの泥が散らばっている。二度と見たくない光景だったが、こうも早く2度目が起こるとは思わなかった。まだ教師達には連絡していないが、たった今瀧川達が伝えに行ったので大丈夫だろう。

「それにしてもこんな真似事が大好きな奴は一体誰なんだか…」

二年前の事件とは違い、恐らく能力を使ったものだと思うが…御島に命の危機が迫っていることに変わりはない。私がこんなことを言える立場ではないのはわかっているが、あえて言わせてもらう。

「能力は…こんな風に使うものじゃない」







さっきまで寝ていたせいだろうか。俺の瞼がまだ状況を把握しようとしない。周りを見渡してとりあえず分かったのは、自力で脱出するのは不可能ということだ。決して手足が拘束されているのでも、体の自由が奪われているわけでもない。ただ、暗いのである。どこを見渡しても黒が延々と続くだけだ。夜に知らない場所に一人きり、しかも周りが見えないときた。これがいわゆる「詰み」というやつかもしれないな。

「起きたか」

しばらく脳内で助けを呼ぶ方法を考えていたが、男の声で現実に戻された。聞いたことのない声だった。音で察するに、恐らくかなり近い場所にいる。監禁などという面倒くさいことをわざわざしてくる辺り、殺す気はないのだろう。未だに攻撃してくる気配はない。

「待ってろ、あと少しでこの学園は真の平和を手に入れる…」

電話でもしているのだろうか。男は明らかに俺ではないものに話しかけている。

「俺を選ばなかったから…だからこうなるんだ…」

男は何かを酷く憎んでいるようだ。とても正気だとは思えない。さっきまで命の危険はないと思っていたが、この様子だと危ない気がしてきた。俺の能力を使っても現時点では意味がないし…。

「おいお前、立て」

言われるがまま無理やり立たされた。ずっと硬い床に寝続けていたので体中が痛い。男がどこにいるのか分からないが、これでもまだ攻撃は来ない。

「さぁ…7聖もこれで最期だ…」






「私からは以上だ!生徒が安全であることを望むなら真っ先に7聖を殺せ!」

その放送は、誰がどこから発信しているのか全く分からなかった。最初補習などを受けていた生徒達は驚いたであろう。各教室の液晶から流れたその映像は、この学校に代々受け継がれる「7聖制度」を廃止しろという内容のものだった。画面には目隠しをされた生徒1人と、仮面を被った男が映っていた。生徒は見覚えがある。恐らく学園運営部の御島由季だろう。そして仮面の方…こちらも見覚えがある。二年前のあの土塊を模したものであることは容易に想像ができる。

「能力を悪用する阿呆は許さん」

御島が失踪したと考えられるのは第一生物室。放送のセッティングは自ら行ったことが読み取れるので、相手は複数ではない。そして自分から御島を捕まえに行くことはしなかった…つまり、犯人は移動系の能力者ではない可能性が高い。
人間一人の手で、なおかつこの短時間で男子を担いで行ける、発信のできる場所…。
あそこしかない。

「ぶち抜くか」

校舎を破壊するのはこれで何度目だろうか。しかし生徒を守るのが教師の役目である以上、やらなければいけないこともある。覚悟を決めた私は、外に出て東研究棟の方に目を向けた。

螺旋helix

途端に校舎の一部が歪み、バラバラになった。元々夜目なのもあって、暗闇の中でもバッチリ狙いを定められる。

螺旋helix!螺旋helix!!」

どんどん校舎が破壊されていく。そして遂に最後の教室になった。

螺旋helix

私の声と共に、教室の壁が歪んで割れた。そして案の定仮面を被った男と御島はそこにいた。騒ぎを聞きつけて出てきた教師達が、咄嗟に御島を保護する。人質を失った男は呻き声を上げた。

「また俺の邪魔をするのか真島ァ!!お前だけは絶対に殺す!絶対にだ!土塊人形Golem!!」

地面から次々に土塊が湧いてきたが、降ってきた雨と混ざりあってもはや原型を留めていない。

私は能力を使って幾つもの土塊を破壊した。残っていた教師陣もひたすら攻撃を続けていたが、土塊は一向に減らない。そして遂には私の能力の限界を超えて来た。

「やめろ!離せっ!!」

無数の土塊が私の体の上に乗っていく。内蔵が喉のすぐそこまで出かかっている。涙と唾液で顔はぐちゃぐちゃになった。もうすぐ死ぬのだろう。

「あぁ…ェ…助けて…」

強奪deprive

その言葉が放たれた瞬間、土塊はすべて消えた。あまりにも一瞬の出来事で、恐れをなして逃げたかのように見えた。しかし彼の君臨を恐れたのは土塊だけではない。私も自分の目を疑った。

かの有名な知将は言った。
「敵を目の前にして泣く者は戦の能がない。だが、敵を目の前にして笑っている者は戦しか脳がない」と。仮面の男に近づく彼を見た私達は、本能で感じた。




修羅が来た。
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