〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音

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13 消えない雪 Hidden-track

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 カレンとローランが離縁してから一年。
 今年もまた、冬が訪れていた。

 北の騎士詰め所の食堂は、昼時の喧騒に包まれていた。訓練を終えた騎士たちが思い思いに席につき、温かい食事を頬張りながら、くだらない話に花を咲かせている。

「あの話、聞いたか? 閣下の噂」

 一人の騎士が、スープを啜りながら隣に声をかけた。

「とんでもねぇ美女を連れてたって話か?」

「それそれ、今、あちらこちらで噂になってるって」

「その美女、見た奴いるのか?」

「結構いるぞ。街で見かけたって話だ。金髪で、すっげぇ別嬪だったらしい」

「嘘だろ、あの堅物な閣下だぞ?」

「俺だって信じられねぇよ」

「どこの令嬢だ?」

「さぁな。でも相当な身分だろ、あの閣下が連れ歩くくらいだから」

「へえ、美男と美女かぁ。閣下にもとうとう春が来たか」

「春っていうか、もう冬だけどな」

「うまいこと言うなよ」

「そういえば、来年の春に挙式するとかなんとか、聞いた気がする」

「本当かよ! うへぇ……こりゃ王都の女どもが泣くぞ」

「北の女どももな」

「違いねぇ」

 笑い声が上がった。

 その会話が聞こえる席に、ローランは座っていた。

(……金髪で、別嬪)

 その言葉が、耳の奥にこびりついて離れなかった。
 
 あの頃は、大人になり切れておらず、未熟だったと思い返す。
 くだらない意地を張っていたのか、それとも。

 ローランは手元のボルシチにパンを浸したまま、動きを止めていた。赤いスープの中で、パンがゆっくりと色を染めていく。

 窓の外では、曇天から雪が降り続いている。
 その雪の白が、やけに目の中に入ってくるようだった。
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